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エリザベートをソファに座らせると先ほど作った重湯とスプーンを渡す、エリザベートは私から受け取るとゆっくりと重湯うを食べ始める。
私の重湯は元気が出るように作ったので数日ゆっくりと休めばいつもの調子も出て来るだろう。
「帰るならば家まで送るが?」
「いえ、色々手回しをしなければならないから私とエリーはここに居ますわ。 アナタは帰ってこのことを国王様にご報告してちょうだい」
「わ、私もエリーと居たいのだが……」
「アナタは宰相なのだから無理に決まってるでしょう、ゆっくり休ませたいから二日くらい経ったら馬車で迎えに来て頂戴。 それまでにあの王子はどうにかしてね、可愛いエリーに逆恨みしたら大変だもの」
母親には勝てないのかガックリと落ち込んだ様子の父親は道連れと言わんばかりに第一王子の腕を掴みそのまま引っ張って出て行く。
第一王子は抵抗するように何か言ってるようだったが父親の勢いに負けてそのまま一緒に出て行った。
「では、私ももう行く」
「え? アヴニール様? この国に居て下さらないのですか?」
重湯を飲んでいたエリザベートは私がずっとこの国に居ると思っていたのかびっくりした様子でいるが母親はわかったいたのか平然としている。
「ああ、私には私のやるべきことがある」
「そんな……アヴニール様」
「エリー、あまり我儘を言ってはならないわよ。 アヴニール様、娘を助けて頂き本当にありがとうございました。 貴方様が居なければ私は大事な娘を失う所でした、私は何よりも娘が大事なのです。 この子が生きているだけで私にはそれだけでいいのです」
エリザベートを叱る母親のエリザベートを見る目は愛おしそうだった、クリスもそうだったが親として子供を愛するのは当たり前だ。
世の中には自分の子供なのに酷いことをする人間も居るが、普通の人間なら子供は愛するべきだろう。
私は薬を作ると瓶に入れエリザベートに渡した。
「私は私のやるべきことをやっただけだ。 そして、これはその怪我を治す薬だ」
「え?」
「そんな薬があるのですか?」
「ああ、これは私にしか作れない薬で何でも治せるエクリサーと言う。 これを全て飲めば完全にその体の火傷の跡が消える。 ただし、全て飲まなければ火傷は消えない」
エクリサーは飲めば何でも治る、だからこそエクリサーを巡って戦争が起こる可能性もあるからどうするかは本人に決めて貰おう。
全てを私が決めてしまってはそれはいけないことだからな。
エリザベートは戸惑ったように受け取るとちらりと母親の方を見上げる、母親は私を見て頭を下げた。
「何から何までありがとうございました」
「アヴニール様、また何か困ったことがありましたらいつでもおいで下さい。 私に出来ることなら何でもお手伝い致します」
ふらりと立ち上がったえりエリザベートは母親と同じように私に頭を下げた、神様に力を与えられた私に困ることなんてないとは思うがエリザベートの気持ちは素直に嬉しい。
心に温かい物を感じながらも私は笑みを浮かべる。
「ああ、また会おう」
私は二人に挨拶をするとそのまま次の場所に転移をした。
出会いがあれば別れもあり、私が使命を終えるまでにどれだけの人と出会うのだろうな。
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