運命
僕はやっぱり君が好きだよ。
でも今は、もう一度君を悲しませる。
僕も悲しい。
終わったら、もう一度君を好きだと言うよ。
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機械鳥の動きは以前となんら変わりなかった、ただ僕の操縦を除いては。
痛みに邪魔され集中できない。
けど、もう目の前には十二羽の『雀』が存在していた。
手負いの『鷹』と十二羽の『雀』どちらが強いか。
最初の接触際に機関銃の中の弾を半数消費する。
十二羽から同時に弾が発射されるんだから、それくらいは使わないと相手にならない。
腕が鈍っているとは言え、『牙』でもないただの『雀』の何の考えも無い弾に当たる気はしなかった。
けど、『鷹』の弾は的確に『雀』を落としていく。
今の接触で五羽の『雀』が地に落ちた。
僕はまた、またこんな事をしている。
突如ノイズが走った。
「……この…くそ…が!!…ん……くせに調子のんなよ!」
どうやら『雀』からの全チャンネル送信のようだった。
僕に対する罵声らしい、更にこのノイズ加減から推測するに今落ちていった『雀』のどれか。
「おい、聞こえたか。お前はまた人を殺すんだな」
ライアンからの通信だ。
僕の機械鳥の通信用周波数は変えていないから、それを使ってと言うことなのだろう。
僕は今『鷹』だ。
ライアンの言葉は普段なら胸に突き刺さっただろう、でも、今はなんとも思わなかった。
同じように『雀』を落としていく。
後ろを取り、機関銃で羽を奪う。
六羽目、七羽目、八羽目。
まだライアンの声が途絶えない。
つまり残りの四羽の中にライアンはいるということ。
でも、まったく関係ない。
むしろ、ライアンを殺さなければまた世界は戦火に包まれる。
九羽目、十羽目、十一羽目。
まだライアンの声は途絶えなかった。
「お前は、何が面白いんだ!俺はただ……世界を救おうと!」
ライアンの言葉が続けられる。
「違う!あなたは……ただ世界を混乱させようとしているだけ!
僕があなたを止めてあげる、ここで終わらせてあげる、だから……だから……」
ライアンの機械鳥の背後をとる。
いつでも放てる機関銃。
しかし、トリガーが引けなかった。
「……殺せよ。俺は生きていればこのまま戦争を始めてしまう。お前の望まない世界にしてしまう」
ライアンの言うとおりだったし、今まで僕もそう考えていた。
それでいいのか、本当に。
「お前が殺してくれないなら、俺がお前を殺すだけだ」
ライアンの機械鳥が宙を舞う、明らかに動きが今までのライアンではなかった。
そう……まるで『牙』のような動き。
僕の機械鳥に機関銃を放つがそれは全て逸れていく。
僕の機械鳥の動きはもはやただの『雀』のはずなのに。
『牙』なら用意に噛み殺せるはずなのに。
機関銃を放ちながら僕に迫るライアンの機械鳥。
僕は『鷹』だ。
『雀』なんかじゃない。
機関銃をライアンの機械鳥に向け、放つ。
弾は機械鳥の羽を貫き、胴体を貫いた。
落下していく機械鳥。
未だ放たれたままだった機関銃の弾が、僕の機械鳥の翼に当たる。
機械鳥はデリケートな機械だ。
昔誰かが言っていた、少しでも傷が付くと落ちてしまう。
僕の機械鳥も浮遊する力を失ったらしい。
ただ、地面が迫っていた。
地面に落ちる中
一瞬見えたエルクサブルの景色は
普段と何も変わらなかった