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過去






一人考えてみた。


この破片が何故ここにあるのか。


これは有り得ないモノなんだ。


だって……だって僕が……









――――――――


「……以上だ。何か質問はあるか」


今回の作戦を指揮する大将の話は本当につまらない、毎回毎回毎回毎回同じような話。

戦果を期待するの一言で締めくくられるこの会議には何の意味もないように感じられた。


「うむ、無いようだな。それでは皆の戦果を期待する。以上で解散」


僕は何でここにいるんだろう。

いつの間にか軍隊に入り、機械鳥部隊に入り、そして戦果をあげ続けてきた。

他人の空を、命を奪い、自分はのうのうと空を自由に飛びまわる。

確かに空は好きだった、けど今の僕にとって空は苦痛を与え、そして与えられる場所でしかなかった。


「……おーい、大丈夫かー?」


自分の意識の深くから一気に現実に引き戻された。

目の前には笑顔で僕を見ているライアンの顔。

ライアンとは同期だ、そして僕らの代で生き残ったただ一人の親友だ。

金色の髪と青い眼、白い肌、スッと通った鼻に高身長。

一見するとも出るかとも思える姿だが、ライアン曰く祖国ではこの程度は普通らしい。

少しライアンの顔を呆けながら見た後、完全に覚醒する。


「……あぁ、悪いな。あと二時間ほどで終わるのかと思うとな、嬉しくもあり、何か複雑な気持ちだ」


素直な気持ち。

確かにこの戦争が終わって嬉しい。

しかし、戦争が終わるだけではすまないのが国と国との関係と言うものだ。

そういう意味では戦争がこのまま続けばいいとも思ってしまう。


「まぁ、『鷹』はそんなもんだよな、俺は今回で死なないことだけを祈るぜ!」


ライアンは手を合わせ片ひざを付き神に祈るようなポーズで斜め上を仰ぎ見た。


「僕は生き残るよ。やりたいこともあるし……それに僕が死ぬとは思えない」


本心だった。

僕が死ぬとは思えない。


正直に言うと、僕の目から見た他の機械鳥の動きはひどいものだった。

言い表すならば僕が『鷹』で周囲が『雀』みたいなもの。

だから僕は『鷹』と言う異名を付けられ、軍にも特別視されている。


「へぇ……お前ってナルキッソスみたいだな」


突如意味のわからない単語が出てくる。

頭の中の疑問がそのまま顔に現れ、そのまま言葉に出してしまう。


「ナルキッソスてなんだ?」


僕があまりにも阿呆な顔で聞いたからなのか、それとも知らなかったことに対してなのか、ライアンは大声で笑い始めた。


「ナ、ナルキッソスてのは……まぁ自分が好きな人ってこっちゃ。……あぁ笑った」


完全に失礼な発言だ。

僕のことを完全に変態の類だと思っている。


「わ、悪いけど僕はそんなんじゃないからな!」


怒ったふりをしてロッカールームへと向かう。

別に用事もなく向かうわけじゃなく、操縦する際に動きやすい格好に着替えるためだ。

制服と言うものが決まっているのけど、それも僕のは少し違っている。

普通は青が基調なのに僕のだけは赤が基調とされている、こんなところでも特別扱いだ。


「おいー、悪かったって。機嫌直せよ」


ライアンが笑みを浮かべながら後を着いてくる。

ライアンのおかげで出撃前に少し気持ちを落ち着かせることが出来た。

今日だけは感謝してあげてもいいかもしれない。









制服を着込み自分の愛機に乗り込むと、後は出撃の要請を待つだけだ。

それまでは気持ちを落ち着かせる。

何も考えず、ただ目の前で飛ぶ機械を機関銃で打ち抜くだけで良い。

中には何もない、入っていない、人なんていない。


…………第四…隊出…どうぞ……


ノイズ音が混じった音声が鳥の前方部分から聞こえてくる。

左右に付いているレバーを同時に引き、機械鳥を浮遊させる。

さらにそのレバーを水平の状態から垂直の状態へと変え、操縦桿へと変貌させる。


「……機械鳥No,16出撃します」


重い扉が開く音と共に目の前に青い世界が広がる。

機械鳥が高い音を鳴らしながら前方にゆっくりと進みだし、一気に加速する。

身体が後ろに思いっきり引っ張られているようなこの感覚だけは嫌いじゃない。




青い世界へと飛び出した瞬間に僕の僕としての役目は終わった。


あとは『鷹』としての役目を終わらせる、それだけだ。


また僕が僕になるために。

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