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竜血琥珀と運命の姉弟  作者: ワタリヤ
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黒き剣

作者はファイアーエムブレムが好きなので影響を受けている要素が多々あります。新作が楽しみです。

竜血琥珀と運命の姉弟



人と竜とが集い、暮らした大地とされるフレイス。

この大地を語るうえで欠かすことのできないモノがある。


 竜石。


 竜の身体から作り出され、くすんだ透明感と中心に秘めた輝きを琥珀になぞらえて竜血の琥珀と呼ぶ者もいる。竜石は熱気、冷気、風、光など様々な力を蓄え、特殊な振動を加えることで蓄えた力を開放する性質を持つ。それを利用し、人間は竜たちが姿を潜めたあとも発展を続けていた……。


 やがてその目で竜を見た、という人がいなくなったころ、トリエント王国が勃興する。

トリエント王国は竜を祀る宗教、神竜教を興し竜石で人々の病や怪我を癒し、人心を掌握しつつ、竜石を研究。

軍事、医療において他を圧倒し、周囲の国を従え、大地フレイスの中心となった。


 その100年後、トリエント王国で、事件は起きる。


 トリエント国王であるヘイル4世が若くして急死。そのあとを神竜教の最高司祭であったカルレオが教皇を名乗り、引き継いだのだ。教皇カルレオは竜石の管理を強化し、周辺国へ取引されていた竜石を強権的に回収しトリエント王国で独占するようになった。トリエント国内外で教皇の行動に反発するものは、黒き鎧をあつらえた教皇の私軍「黒鱗隊」によって踏みつぶされていく。


 ヘイル1世の弟がトリエント王国の東部で興したストーナー家も例外ではなかった……。




序章 黒き剣




「……敵部隊の大将は、やはりあの男なのだな?」


 ストーナー家の領主、レイオン=ストーナーはつとめて冷静に尋ねた。目の前の騎士は答える。


「間違いありません。当代の『黒の魔剣』ヴォルテイル卿です」


 膝をつき、こちらを神妙な面持ちで見ながら、騎士はレイオンの次の言葉を待っている。レイオンは少し視線を落とした。ヘイル4世が倒れ、カルレオが教皇を名乗るようになってから、このような事態になることは予想できていたはずだ。打てる手は打ってきた。しかしどこかあきらめている自分がいる。……私も老いたのだろうか?

 眼を騎士に向けなおした。


「ティアーナとヴェルナントはどうしている?落ち延びる準備はできているのか?」


「それが、準備はできているのですが……」


 騎士の言葉を遮るように足音が響く。


「父上」


 軽装に細剣を帯びた少年から青年に向かう頃というくらいの男がレイオンの前に立つ。


「ヴェルナント」


 ヴェルナント=ストーナー。レイオン=ストーナーの息子である。幼少のころからレイオンが直々に剣技、礼儀を叩き込んできただけあって、剣の扱いには光るものがあるとレイオンは評価している。願わくばもう少し、その先をみていたかったものではあるが、それももう、叶わないだろう。


「父上は、どう、されるのでしょうか」


 絞り出したような声だ。もう答えはわかっているだろう。どうにもならないことも、わかっているだろう。


「私はここに残り、お前たちが逃げる時間を稼ぐ。黒鱗隊が迫っているのだ。はやくここを離れよ」


「ですが」


「カルス、連れていけ」


 騎士は立ち上がり、ヴェルナントを促そうとする。ヴェルナントは何か言いたげではあるが、言葉にならないようだ。


「お二人の落ち延びる先はいかがしましょうか」


 カルスは尋ねた。


「いまだ教皇派への反抗の姿勢を崩さないテンベルクだろう。ザクセンは知り合いは多いが、それは教皇派も知っている」


「わかりました。私の妹が修行でここを離れていなければ天馬で脱出できたのですが...」


「巻き込まなくてよかったと考えておく。2人を頼んだぞ」


 下を向いていたヴェルナントが少し勢いをつけて顔を上げた。


「父上。……ヴェルナントは、ここに、必ず、帰ってきます!」


 そういってヴェルナントは踵を返す。今生の別れとしては上出来ではないか。その背中を見ながらレイオンは軽く微笑んだ。

 民たちは先にテンベルクへ向け疎開させた。そのとき持たせた前金代わりの竜石とその研究資料、今回ティアーナが差しだす家宝の、ヘイル1世から賜った緋色の竜石で、テンベルクへの義理立ては十分だろう。時間稼ぎの当てもある。ヴォルテイル卿の性格は知っている。


「……頼んだぞ」


 レイオンは一人、つぶやいた。





 屋敷の裏手で、ティアーナは弟と信頼している騎士を待っていた。ヴェルナントと父のところに行くことも考えたが、決心が鈍ることを恐れて会いに行くことはできなかった。ペンダントを握りしめる。母より受け継いだ竜石から、ほのかに暖かみを感じる。母が生きていたのときの日々と、子守り歌を思い出す。小さい領地だったけれど、皆が家族のようで、ヴェルナントもカルスら騎士たちも民に混ざって働いていた。鍛えられていいだろうと笑う父。まかないを作る母と私、屋敷の者たち。


「どうして、こうなってしまったのでしょう」


 ティアーナがつぶやいたころ、ヴェルナントとカルスが足早にやってきた。


「姉上、出ましょう」


 ティアーナが頷いたころ、屋敷に向かう軍勢はもう少しのところに迫っていた。




 長い黒髪と外套が風になびく。ストーナー家の屋敷の前に立った黒い鎧をあつらえた男は、そばに降り立った飛竜に跨った女性の言葉に頷くと、手で後方に迫る軍勢に停まるよう指示した。男の視線の先には、屋敷の主であるレイオン=ストーナーが立っていた。


「レジーナの言う通り、本当にレイオン殿しかおられないようだな」


「伏兵の気配もありません。彼はどういうつもりなのでしょうか?ヴォルテイル様」


「……さて、な。一応教皇殿からの命令は果たさなければ」


 停止させていた軍に屋敷を包囲させ、残りは周辺の捜索を命じた。これで一応命令には従ったことになる。ここからはヴォルテイル個人の目的になる。荷物の用意をさせたレジーナと司祭の男を伴い、ヴォルテイルはストーナー家の庭に入っていった。


「お久しぶりです。レイオン卿」


「……ああ」


 静かな返事だ。もはや覚悟は定まっているのだろう。かつての私の目標であったころと、目の光は変わっていない。


「一応聞いておきます。……ヘイル1世より賜った、ストーナー家の家宝である緋色の竜石を渡していただけますか」


「断る。カルレオのような者に渡せん」


「……わかっておりました」


 ヴォルテイルは手でレジーナに合図した。レジーナが荷物をほどきながら歩み寄ってくる。荷物の中身は二振りの剣であった。


「私と、決闘していただきたい。レイオン卿が勝てれば時間をだいぶ稼げるでしょう。負けるつもりはありませんがね」


 ヴォルテイルはこれは、と思う相手に決闘を挑み、打ち破ることが生きがいであった。トリエント最強の剣士の称号と剣である『黒の魔剣』を賜ったのちも、魔剣をふるうことは少なく、部下であるレジーナに決闘用の剣を用意させていた。ヴォルテイルにとっては魔剣も決闘するための舞台をつくる道具でしかなかった。そのことをレイオンは知っていたのだ。


「無論、そのつもりだ」


 やはり、あなたはすばらしい。ヴォルテイルは心のなかで歓喜した。




 10歩分ほどの間をあけて、2人の剣士は向かい合った。レジーナは間に立ち、4,5歩下がった。黙ったままの司祭の男はその後ろに手を組んだまま立っている。レジーナは手袋を外し、頭上に構えた。


「僭越ながら立会人を私、レジーナが務めさせていただきます。この手袋が落ちた瞬間を合図といたします。……では」


 レジーナは手袋を放した。軍人用の手袋は風にあおられることなく地面に落ちていく。―――甲高い金属音が響き、空気が引き裂かれた。


「……残念、でしたね」


 ヴォルテイルはつぶやく。決着は一瞬。レイオンの剣は鎧の隙間を抜くも、致命傷には程遠く、逆にレイオン自身は刺し貫かれていた。


「10年、いや、5年前のレイオン卿ならば……」


 レイオンの後方の、蹴り足によるものであろう崩れた石畳に目を向ける。


「ヴォルテイル様、気はお済ですかな?」


 司祭の男ははじめて口を開いた。レジーナは少し眉をひそめ、男を見る。


「すまない、アズカヴ司祭。感傷に浸ってしまってな。……老いとは残酷なものだ」


 血が流れすぎないよう、あえて剣は抜かず、横向きに寝かせ、ヴォルテイルは司祭の竜石による治療の奇跡を待った。


「もはや重症を治せるほどの力を蓄えている竜石はほとんどないというのに……」


 打ち合わせと違う、だのブツブツとつぶやきながらアズカヴはなんとも言い難い仮面をかぶり、どこから声を出しているのかといいたくなるような低い唸り声を絞り出した。竜石が熱を帯び、淡く光りだす。それを見たヴォルテイルはレイオンの身体を動かし、傷口に竜石を当てやすくしようとする。そのときレイオンの顎が動いた。


「――! 吐き出せ、レイオン卿!」


 しかし、レイオンの体は完全に弛緩している。もうこときれているだろう。


「毒――ですか?」


「なんということだ……。これでは使い物にならないではないか。教皇にどう申し開きをしたら良いのだ……」


 レジーナは茫然とし、アズカヴは頭を抱えている。ヴォルテイルはレイオンの身体を抱え、震えていた。

 

(あれほどの技を持ちながら、なぜ、簡単に死を選ぶのだ……! 何年もこの日のために待ったというのに!)


 かつて、一日だけ師事した相手が、決闘することを待ちわびていた相手が、千の夢の中で戦い続けた相手が、決闘で下した相手が服毒して死んだ、という事実はヴォルテイルのプライドをひどく傷つけた。怒りで全身が震える。腰に帯びた魔剣がわななく。黒い霧が外套からかすかに漏れ出た時、


「ヴォルテイル様!」


 レジーナの声にヴォルテイルは我を取り戻す。黒い霧は消えていた。


「……。何をされるか、予想はついていたのでしょうな」


 アズカヴはつぶやいた。そして思案をするように額に指を当てて、


「レイオン卿には2人の子供がいますから、できれば両方の身柄を拘束したいものです。代わりをしてもらわなければね」


「……代わり、か」


 ヴォルテイルは誰にも聞こえないくらいの声でつぶやく。そして熱を失ったレイオンの身体を静かに寝かせた。屋敷をかこっていた部隊の半分に屋敷の検分と、レイオン卿の埋葬をさせ、残りは追加の捜索部隊とするように指示した。


「……これくらいは突破してほしいものだ」


 ヴォルテイル自身もレジーナとアズカヴを伴い、屋敷に入っていった。

スマホで読むことを失念していたので随分と読みにくい文章となりました。

次があれば改善したいと思います。

問題はそれだけじゃないのですけどね...。

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