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関羽3 曹公が恩に報ゆ 

ところで曹操そうそう関羽かんうの人となりを

めっちゃカッケーと思っていた。

とは言え自分のもとに留まるつもりが

まるでないことも察していたので、

白馬津はくばしんくつわを並べた張遼ちょうりょうに依頼する。


「なぁなぁ、同期のよしみってことで

 関羽のこと引き止めてみてくれよ」


あっはい、らじゃっす。

のちのち曹操の忠実な刃として

名を馳せる張遼さん、

ここでも任務に忠実。

慰留トークを試みた。


すると関羽、嘆息する。


「曹公がそれがしに懇意なるは、

 待遇よりも察せられ候。


 然るれどりゅう将軍より給いたる恩の厚き、

 共に死すべくを誓いたるレベルなれば、

 背かるにあたわざりて候。


 留むるはついにもあらねど、

 いざ発ちたるにては、大功を挙げ、

 公よりの待遇に答えたる後に

 去らんと期したく候」


固い!

決意もそうだが、考え方が!


成果ダメです、張遼が報告。

いっぽうの曹操、めっちゃ感動した。

ちょ、関羽カッケエ!


そんなこんなで関羽、顔良がんりょうを殺した。

これで関羽が「厚遇に報いた」わけだ。

このままでは関羽に去られてしまう。


そうはさせまいぞ、と曹操、

関羽に贈り物した。

めっちゃした。


ところで曹操が注釈を入れた

「孫子」行軍編にはこんな一節がある。


「ちょくちょく褒美を

 出さなきゃいけないのは、

 人心を得られていない証拠です」


関羽の反応もまさしくこれだった。

もらったものは全て厳重に封印。

さらに「献帝けんていに向けて」書をしたため、

劉備りゅうびのもとに帰ります、と告げた。


そうして袁紹えんしょう軍の世話になっている

劉備のもとへ出立。


曹公からの恩をないがしろにするなんて!

追って連れ戻しましょうか!

部下たちは言い募ったが、

曹操は首を振った。


「やつの主は初めから決まっていたのだ。

 もういいのだ、追ってくれるな」



初,曹公壯羽為人,而察其心神無久留之意,謂張遼曰:「卿試以情問之。」既而遼以問羽,羽歎曰:「吾極知曹公待我厚,然吾受劉將軍厚恩,誓以共死,不可背之。吾終不留,吾要當立效以報曹公乃去。」遼以羽言報曹公,曹公義之。

及羽殺顏良,曹公知其必去,重加賞賜。羽盡封其所賜,拜書告辭,而奔先主於袁軍。左右欲追之,曹公曰:「彼各為其主,勿追也。」


初にして、曹公は羽が人と為りを壯とし、而して其の心神に久しく留むるの意の無きを察し、張遼に謂いて曰く:「卿は情を以て之に問うを試みたるべし」と。既にして遼の以て羽に問うるに、羽は歎じて曰く:「吾れ曹公が我を厚く待せるを極めて知る、然れど吾れ劉將軍より厚恩を受け、以て共に死せるを誓わば、之に背かるるべからず。吾は終には留まらず、吾の要うるに當に效を立て、以て曹公に報い、乃ち去らん」と。遼の羽が言を以て曹公に報せるに、曹公は之を義とす。

羽の顏良を殺したる、に及び、曹公は其の必ずや去りたるを知り、重ねて賞賜を加う。羽は盡く其の賜りたる所を封じ、拜して書にて辭せるを告げ、袁軍の先主に奔る。左右は之を追いたるを欲せど、曹公は曰く:「彼にては各おの其の主と為す、追いたる勿りきなり」と。




地味にこの文字の扱い次第でめっちゃ面白くなる。ここではあえてすべて「上表」、つまり献帝に向けての発言に固定した。

れによって「個人的なラブコールをかけまくった」曹操に対して、「あくまで同じ皇帝に仕える」もの同士、という立場からつれなく袖にする関羽、という図式が成り立つ。


これは界隈ではちょっとしたご褒美ですよ…


いや実際のとこ、この「表」には大々的に表明しました、位の意味しかないので、間違いなく誤訳なんですけどね……いいじゃん、ハァンタジー三國志を楽しもうよ……




勿追也

也がエロい。訓読するとどうしても「なり」と言いたくなるが、当時の読みなら「ヤ」「ヤァ」である。割とため息判定ができる字である。

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