88 草原エリア・ボス
クランホームで十八人が顔を揃える。
初日以来かな。
全員が一同に会すのは。
「でわ、作戦お」
十八人の中心に置かれたテーブルの前に立つチーコさんという女性。
彼女が、以前からフェンリルの作戦立案を担っていたらしい。
「今回の敵は二体。
マヤさん、エイラさん。
二手に別れ、初撃を受け止める」
マヤさんと言う全身鎧の人が黙って頷き、エイラさんが「ウス」と短く答える。
「その後、ショータくん、状態異常を」
「はい」
僕は返事をした後に、横に浮かぶファントムを見る。
「その後はアタッカー陣、総攻撃。
団長、螢、タルタロス、ベルヒ組とハヤト、鹿之介、くまこ組の二手に分ける。
カウンターにだけ気をつけて。
慎重に削れば行ける」
名を呼ばれた面々が各々返事を返す。
「とは言え、絶対被弾するマヌケはいるからパールさん、アマリは常に回復スタンバイ」
「はーい」
「りょ」
二人が手を上げながら答える。
「黒さん、朝景、ノルンちゃん、ショータクンは後衛のカバー。
灰、ミキ、大技は禁止」
「十五分ぐらいは我慢するよ」
「灰、もう一回言うよ? 大技は禁止」
「わかってるよー。十五分ぐらいは我慢するって」
そう灰さんはにこやかに答える。
「お前ら、十分で終わらせないとコイツが戦場を滅茶苦茶にするから気合い入れていけ」
苦虫を噛み潰したような顔をするチーコさんの脇でハヤトさんがアタッカー陣に向け言い放つ。
「問題ないね!」
そう蛍さんが満面の笑みで答え、ハヤトさんはよりいっそう眉間の皺を深くする。
◆
「よし、じゃ、行こうか」
ヴォルクさんがそう言って、横一列に並んだ僕らを順に見渡した後に背を向ける。
そして、ゆっくりと一歩踏み出す。
<ポーン>
システム音。
<イベントフィールドに侵入しました>
その音声と共に、吹き付ける風が一層強く。
一拍遅れ、右と左、それぞれから獣の叫び声の様な雄叫びが上がる。
「じゃ、作戦通りに」
そうヴォルクさんが言うと同時に全員が動き出す。
もちろん、僕も。
「ファントム、よろしく」
僕の声に応え、ファントムが霊障のスキルを発動。
武技<呪い(カース)>。
各種ステータスを低下させ、微量のダメージを与え続ける魔法。
多分、効いたと思うけど。
「しっかし、あれだね。
相変わらず全然見えない。
この草全部燃やしちゃえば良いのに」
灰さんがぼやくように言う。
「同感」
「三人ユニゾンなら行けるんじゃないでしょーか?」
アマリさんとミキさんがそれに続く。
「やるなら前衛が全滅してからにしろよな」
そう、朝景さんが釘を刺す。
僕はファントムに足場を固定してもらい、草の上から戦況を眺める事にする。
左右両方から現れた、二本足で立つ人型のライオン。
BOSSモンスター【ムボヨ】Lv:???
人を喰らう獅子の悪霊
その力は強力
性質
陰
BOSSモンスター【ワレンガ 】Lv:???
人を喰らう獅子の悪霊
その力は強大
性質
陰
それが、草原エリアのボス。
それぞれが三メートル近い巨体でその腕を振るい爪で攻撃して居る。
マヤさんとエイラさんがその攻撃を受け止める隙に、他の面々が攻撃を入れているのだろう。
草が深くて、良くわからないけれど。
「あら、一人死んだわ」
「え? 早っ」
「私わ、カウンターに気をつけろって言った」
「チーコ、作戦ちゃんと立てなきゃ駄目だったんじゃない?」
「立てたわよん。
本当の切り札はここに居る面々」
「アイツラ全員囮かい?」
「前座であり露払い。
でもその前にちゃんと片付けてくれる。期待値五割。計算出来る値」
なるほど。
ちゃんと捨て駒を計算してるのか。
彼女の作戦は信用できそうだと、僕はそう思った。
自分の生死はさておき。
あ、また誰か死んだかな?
◆
「うおりゃ!」
ヴォルクさんの剣がワレンガを頭から両断し、戦闘開始から二十分足らずでの決着となった。
結局僕ら後衛組の出番はなく。
ただ、前衛で残っているのは、ヴォルクさん、蛍さん、ハヤトさん、くまこさんの四人だけ。
<ポーン>
<エリアボス討伐に成功しました>
アナウンスと同時に倒れていた仲間も起き上がる。
「お疲れ様でした。大成功です」
「いよっしゃー!!」
一人歓喜の声を上げたのは起き上がったばかりのベルヒさん。
「てめぇ、囮に使うつもりなら最初から言えよ」
そうチーコさんを睨んだのはハヤトさん。
「ん? 死ぬマヌケが悪いんだろ?」
蛍さんが嬉しそうにハヤトさんに食ってかかる。
「オメェは黙ってろよ」
「ん? やるかい?」
睨み合う二人。
一瞬、邪険な空気が流れる。
「まあまあ。
いがみ合ってもしょうが無いでしょう。
チーコさん、次はもう少し入念に作戦立てましょうか」
「はーい」
黒さんが二人の間に入り取りなす。
返事をしたチーコさんはからは全く悪びれた様子は感じられなかった。
「さってと、次のエリアへ行こうかい!」
ヴォルクさんが楽しそうな声をあげる。
いつの間にか僕らの目の前に、白い遺跡の様な物が出現して居た。
崩れた白い石柱と、石畳。
五メートル四方程の小さな遺跡。
その中心にあったのは地下へと続く階段だった。
「じゃ! 俺、先頭行きまっす!」
そうベルヒさんが明るく言って返事も待たずに下りて行く。
「アイツ、後で説教だな」
ハヤトさんがそう言いながら続く。
更に前衛の面々が続いて行く。
「じゃ、行きましょうか。
ちゃんと守ってね」
そう言いながら、パールさんが僕の左手を握る。
これでは、守り辛いのだけれど。
そう反論する前に右手も掴まれる。
灰さんだ。
「前はこれで困らせたけど、平気かな?」
「はい。もう大丈夫です。
でも、攻撃が出来ませんよ?」
「それは、他の面々に任せよう」
「君らにショタ君を任せるとは誰も言って無いのだけれど!?」
背後から怒気を孕ませたアマリさんの声。
「お姉しゃまは! 私がお守りしましゅ!」
その横からミキさんがアマリさんの腕に絡み付く。
一瞬、アマリさんが歯を剥き出しにして本当に嫌そうな顔をする。
「これは、どう言う状況なんだ?」
くまこさんがそう問うたけれど、それに答える人は誰も居なかった。
◆
地下を百メートルくらい歩き、そして再び階段を上る。
そこは先程と同じ様な、白い石で出来た遺跡。
新しいエリアの名は、光の庭。
しかしその規模は先程より大きい。
階段の先に、通路の様に崩れかけた柱が並ぶ。
一同はその先へと歩みを進める。
歩きながらアマリさんが、顎に手を当て何かを考え込んでいる。
「どうしたんですか?」
「おかしいなと思って」
「何がですか?」
「たかだか、百メートルぐらいしか地下を歩いていない筈なのに、違う大陸みたいなのよね」
「ワープゾーンだね」
灰さんがあっさりと答える。
「それは、そうなんだけどさぁ……」
「また、ショートカットでも作ろうとしてた?」
「その可能性を検討してたんです」
「そんな事ばかりしてるとBANされるよ?」
「大丈夫です。お姉しゃまは! ミキが守りましゅ!」
嬉しそうに答えるミキさん。
その横でアマリさんが小さく溜息を吐く。
「何かあるぞ」
先行して居たヴォルクさんが僕らを手招きする。
彼らの視線の先、そこには石畳の上に円形に幾何学模様が彫り込まれて居た。
「魔法陣?」
アマリさんが呟く。
「これは!」
ミキさんが目を丸くしながら驚きの声をあげる。
「知ってるの?」
「はい。これは、エントロピーを増大させる時の魔法、空間術式第六十四の紋。
秩序を崩壊させ、世界をカオスへと揺り戻すための封印。
それは、つまり、私とお姉しゃまが二万と七千年前、共に……」
「あー、はいはい。
ミキ、その歴史は、並行世界にすり替え済みよ」
なおも説明を続けようとするミキさんをアマリさんが微笑みながら制止させる。
「窪みがありますね。……四つ」
黒さんが魔法陣に触れながら入念に調べる。
「こっちには『四つの封印を開封せよ。さらば扉は開かれん』。
そう書いてあるわ」
チーコさんが柱に描かれた文字を読み上げる。
「何かしらのキーアイテムを四つ集める。
そう言う事でしょうかね」
黒さんの言葉にチーコさんが頷く。
「んじゃ、明日っからはここの攻略だな!」
ヴォルクさんが大声で嬉しそうに言った。
ブクマが1,000にとどきそうです!
ありがとうございます!
頑張って続きを執筆します!
ついでに連載中のローファンも宜しくお願いします!
「異世界で俺の中二設定が活き活きとしている」
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