87 中ボス グレート・マンモス
「ずっと団長と金掘りしてた割には、結構動きが良くなってるよな」
「そうですか?」
相変わらず草むらに遮られながら、銃弾を打ち込む僕をくまこさんが評する。
風水のスキルの影響だろうか。
確かに索敵の精度は上がっているような気がする。
「イベントの時はこんなもんじゃなかったぞ」
イベントの後半は僕と一緒に鼠退治に行っていた朝景さん、
ただ、彼の弓よりは僕の二丁拳銃のほうが回転率は早い。
射程と威力は朝景さんに軍配が上がるのだけれど。
「アサの方は結局得るもん無しだろ?」
「言うな……」
イベントで結構なお金を稼いで居たみたいだけれど、それは全て召喚石の購入に消えたらしい。
選別、と言っていたけれど、目当ての召喚獣が手に入らなかったそうだ。
「まあ、でも一番はあの子だろうね」
そう言ったくまこさんの視線の先には、ハティに乗ったノルンさん。
その更に先にはスコルが居るだろう。
灰色だった体は黒に変わり、そしてふた回りほど大きくなったスコル。
グレイウルフから進化してブラックウルフになったらしい。
『ま、前から何か来ます!』
そのノルンさんが若干緊張を滲ませた声。
「ファントム!」
「小六!」
僕が相棒が動かす足場に乗り、草むらの上から周囲を確認する。
それと同時に朝景さんが更に上空から。
彼は召喚獣である小六が見ている視界を仮想ウインドウで見ることが出来るそうだ。
「うわ。大きいね」
草原の中に佇むモンスターを見て、思わず呑気な呟きが漏れる。
高さが10メートル程ある、巨大な象型のモンスター。
モンスター【グレート・マンモス】Lv:???
巨躯から窺い知れる以上に強靭な肉体を持つ
また、太く長い体毛は魔法や剣を弾く
主な攻撃
踏みつけ
有利属性
射/刺/雷/風
性質
土
「狩りますよ」
黒さんが落ち着いた口調で言う。
「行けるかな」
巨体目掛け、麻痺弾を。
両手の四つの銃口から放たれたそれは、巨体へと吸い込まれその動きを拘束する。
珍しく効いたね。
動きの止まった象へハティとスコルが飛びかかって行く。
僕も地に降り、走って近寄る。
◆
HPが残り半分を切り、突然行動パターンを変え暴れはじめたグレート・マンモス。
ただいたずらに、その全身を振り回し、大地を踏みつける。
丸太の様な鼻は、ハティとスコルを軽々と宙に弾き飛ばし、揺れる大地は近づく者の足を止める。
ただただ暴れる巨体に銃も矢も狙いを定められず、有効打が与えられない。
『近づけないですね』
黒さんが魔法を放ちながら呟く。
その魔法は、大したダメージにならず。
「チビ助。あの足場で上に回れないか?」
「一つしか動かせないんですよ」
つまり、草の上、三メートル程。
僕の跳躍力だとその辺が限界なのだ。
「一つは動かせるんだな。
私でも乗れるか?」
「大丈夫だと思います」
僕の横でファントムが縦に揺れる。
「じゃさ、アイツの上、そうだな。
二十メートルくらい?
その辺に固定してくれるか?」
そう言ってくまこさんがグレート・マンモスの真上を指差す。
「良いですけど、どうやってそこに乗るんですか?」
「五郎の力を借りる。
早速やろう」
「わかりました。ファントム、お願い」
素直にくまこさんの指示に従い、暴れまわるグレート・マンモスの頭上に鉄板を固定。
「行くぞ! 五郎!」
くまこさんが五郎に正対し、腕を十字にクロスさせ身を守るように構える。
「ガゥウ!」
対する五郎は右の掌を握り込みながら、身を捻る。
そして、全身のバネを伸ばしながら地面すれすれから掬い上げるようなアッパーカットをくまこさんに御見舞する。
それを受け、くまこさんの体が軽々と宙に舞う。
彼女のHPが一気に危険水域に。
「……え?」
呆気にとられる僕の視線の先で、空高く吹き飛ばされた彼女は空中で姿勢を直し鉄板に片手を掛ける。
『アサ、動きを止める』
『了解』
『ムーンサルトォ・フット・スタンプ!』
くまこさんが絶叫と共に、飛び降りてくる。
身を捻り、回転を加えた彼女の両足がグレート・マンモスの背を捉えそのまま沈み込むように巨体が崩れ落ちる。
直後、飛来した矢がグレート。マンモスの頭部を貫き止めとなった。
「五郎!」
くまこさんが叫びながら走り寄ってくる。
立ち上がり得意げな顔をした五郎に、彼女のドロップキックが炸裂する。
「良いパンチだったぞ!
この野郎!」
そう嬉しそうに言うくまこさんと対象的に、地面で大の字になり顔を歪める五郎。
大変だな。
少し、熊に同情する。
◆
「この調子なら、うん、今週中にエリアボス討伐も行けそうですね」
クランのホームに戻り、お茶を淹れながら黒さんが満足そうに言う。
「全員で行くの?」
「そのつもりです。
出来れば十八人全員で」
「行きやすい時間にしてね」
「そうですね。夕方ぐらいが良いでしょう。
調整しますよ」
「お願い。
それじゃ、私はこの辺で」
「お疲れ様でした」
ティーカップを置くと共にパールさんが手を振りながら消えて行った。
「僕も、工房へ戻ります」
「はい。明日もよろしくおねがいします」
黒さんが笑顔で手をふるのに振り返し、僕はクランホームを後にする。
「チビ助、明日もよろしくな」
「はい」
「お、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
ホームの庭で五郎を締めるくまこさん、ハティとスコルにブラシを入れるノルンさんに一礼をしてから工房へ向かう。




