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84 イベント~秋の大収穫祭~②

 宝箱を見つける度に僕達は順番でそれを開けることにした。

 僕が開けた時は、ヴォルクさんの剣の一振りで何十匹もまとめて倒し、狩りこぼしを僕とファントムが仕留める。

 逆の時は、ほぼ僕が。


 稀に宝箱の中に白金貨が入っていて、それは開けた人の物とした。


 その結果、僕の手元には大量の金貨と銀貨、そして三枚の白金貨がある。



「単調なイベントだけど、これはこれで面白いな」


 徐々に下っていく坑道を歩きながらヴォルクさんが笑顔を見せる。

 結構歩いたけれど、坑道の果ては見えない。


「他の人は居ないんでしょうか?」


 僕は、ふと浮かんだ疑問を口にする。


「俺達だけかもな。

 他人と取り合いになると揉めるだろうから隔離しているのかも知れない」

「そういうものですか」


 でも、そんな事は無かった。

 その直後に他のプレイヤーに遭遇したからだ。


 三叉路になっていて、曲がり角でばったり顔を合わせたのはエアルさんだった。

 咄嗟に、ヴォルクさんが後ずさりながら剣を構える。

 今まで見たことのない鋭い目つきでエアルさんを睨みながら。


 対するエアルさんは笑顔を浮かべ、僅かに腰を落とす。

 武器は手にしていないが、その両手は不自然な位置に置かれていて、何かの事前動作なのは明白だ。


「よう。久しぶり」


 ヴォルクさんが、構えを解き再び笑顔に戻る。


「また群れてるんだって?」


 謎の構えを解き、メガネのブリッジを指で押し上げながらエアルさんが答える。


「ワイワイやってるよ」

「じゃ、今度遊びに行こうかしら」

「五体満足で帰れるかな?」

「怖い怖い。平和なゲームの筈なのに」


 互いに笑みを浮かべながら言い合い、そして僕の方に近寄ってくるエアルさん。


「やっぱり、君もここに居たのか。

 コンセプトはアナウサギ?

 それとも、おむすびころりん?」


 僕の頭に乗ったウサギの耳を見ながらそう言うエアルさん。


「音が良く聞こえて便利なんです。

 それ以外の意味はありません」

「おむすびころりんはネズミの国の話だろ?」

「途中でたぬきとウサギが出てくるじゃないか」

「そうだったか?」

「で、お二人さん、首尾はどう?」

「まあまあだな。そっちは?」

「こっちも、まあまあね。

 ……休憩がてら、情報交換と行かない?

 過去は水に流して、腹の探り合いは無しで。

 美味しいお茶を、淹れるわよ」


 エアルさんが、口元にそっと手を当てながら僕らに提案する。

 嘘、では無いけれど本音でもない。

 嘘になるかどうかはこの後の話次第という感じかな。

 彼女の仕草から僕はそう感じ取った。


「おう。良いぞ!」


 ヴォルクさんは二つ返事でそれに答える。

 白い歯を見せ、笑いながら。



 ◆



 洞窟の中、やや開けた場所でエアルさんがセーフティエリアを展開。

 そこで、お湯を沸かし始める。

 そう言えば。


「お弁当あるんですけど、食べませんか?」


 そう、提案する。


「おお、良いね。誰が作ったの?」

「親方です」

「ノーラさんか。

 あの人、なんかお母さんみたいだよね」


 そうエアルさんが笑いながら言う。


「僕も、同じことを言ったことがあります」

「へえ。それで?」

「そんな年では無いと怒られました」

「確かに!

 設定上は、多分私より若いと思うのよね。

 そうすると、流石にちびっ子くらいの子供は居ないよね」


 エアルさんがお茶を淹れる横でお弁当を取り出す。


「これ何?」

「多分、ウサギ肉のハンバーガーです」

「ちびっ子、共食いじゃん!

 いただきます」

「ヴォルクさんもどうぞ」

「……おう。いただきます」


 一人二つ食べても、まだ余りそう。


「うん。美味しいね。

 開拓組連中の中途半端な屋台よりよっぽど」

「ああ……美味い……」


 エアルさんの横で、ヴォルクさんが噛みしめるようにしみじみと言う。


「……母親」


 そう呟きながら、手の中のハンバーグを見つめる。


「好きなだけ食べてください」

「ん、お、おう」

「しかし、ちびっ子はともかくとして団長さんまで居るとは。

 クラン運営は何かと物入りって事?」

「いや、その辺は副団長達がしっかりしてるからな。

 任せっきりだ」

「ああ……二人共お元気?」


 エアルさんがやや顔をしかめながら問う。


「おう。昔から、何も変わって無い」

「そう」

「そっちこそ意外だな。金なんて」

「私は未だかつて無いほどに金欠なのよ!

 時間が無いから銭湯を管理する為に雇ったNPCの給料を稼がないといけない訳!

 ただでさえ赤字ギリギリだったのに」

「それ、おかしく無いか?」

「でもタダ働きはさせられ無いでしょう。

 企業として」

「そう言うもんか?」


 そう言いつつエアルさんは少し楽しそうだ。


「そう。

 だから、ランキング二の次で稼がないといけない訳」

「ランキングかぁ。

 どうなってるんだ?」

「若干、経験値フィールドが有利みたいよ。

 ここは、多分過疎地」

「ほう」

「ヴォルクさんは、ランキング狙いだったんですか?」

「いや。まあ狙えるならーぐらいだ。

 気にすんな」


 そうか。

 ならば、交渉は可能だろう。


「さて、そろそろ行きましょうか。

 困った事にしばらく行き先は同じみたいだから、共闘ね」


 先程三叉路で出会ったのだ。

 エアルさんが来た方向に行っても得るものは無いだろう。

 それは、向こうも同じ。

 つまりお互い進む道は残りの一つしか無いのだ。


「まあ、そうなるな。

 後悔するぞ」


 ヴォルクさんがニヤリと笑いながら言った。

 エアルさんでも、ヴォルクさんでも獲物を渡すつもりなんて無い。

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