83 イベント~秋の大収穫祭~①
「ショータ。他の弟子達が言っていたが今日から祭りみたいな物があるらしいな」
「そうですね。僕も行くつもりです。
何が起きるのか全然わからないですけど」
「そうか。
実は昨日夕飯にしようと思っていた食材が結構余ってしまっていてな、弁当にするから持っていかないか?
あの子達と一緒に食べると良い」
「わかりました」
あの子達とは、リゼさんやひよりさん達の事だろう。
昨日、親方と一緒に街に出で居る屋台を回ったから。
開拓組の面々が、我先にと森の町の広場で商売をしていたのだ。
今日はみんな経験値のイベントフィールドに行くと言っていたので別行動だけれど、いざとなったらクランで食べよう。
◆
「おはようございます」
と言ってももう昼。
しかし、クランホームにはヴォルクさんの姿しか無かった。
「おう。今みんなイベントに行ったぞ」
「そうですか」
時間は僅かに正午を過ぎて居た。
親方のお弁当が大作でギリギリまで時間がかかって結局開始までに間に合わなかったか。
まあ、別に急ぐ必要も無いのだけれど。
「ヴォルクさんは行かないんですか?」
まさか、僕を待って居たのか?
でも、ここに来ると言う連絡は入れていないし。
「どこに行こうかと思ってな」
「どこに行くんですか?」
「経験値は要らないし、スキルも別に困ってない。
となると、金かな。
家具ももう少し揃えたいしな」
「経験値、要らないんですか?」
「ああ。レベルはカンストしてる」
「カンスト?」
「上限一杯の50。今のところこれ以上は上がらない」
「凄いですね」
僕の倍以上だ。
「つーわけで、ショータも金のイベントって言ってたよな?
一緒に行くか」
「はい」
良かった。
一人で食べきれない量の弁当を分ける相手が見つかったかもしれない。
「向こうでは、パーティは組めないらしい。
それくらいしか、情報はまだ無い」
「わかりました」
ヴォルクさんが仮想ウインドウを開く。
僕もそれに続く。
そう言えば、この人と一緒に戦うのは初めてだな。
◆
転移した先は薄暗い洞窟だった。
ヴォルクさんが周囲を見渡す。
敵!
索敵スキルが捉えた反応に咄嗟に銃を向け引き金を引く。
飛びゆく銃弾が、小さな鼠を一瞬にして粒子に変えた。
『Get!』と言う小さなスタンプがポップして、直ぐに消える。
「早いな」
感心したようにヴォルクさんが言う。
僕は仮想ウインドウを開き、何が手に入ったのかを確認。
・亡国の古銀貨×5
・イクスストーン(欠片)×1
「銀貨が五枚」
僕はその一枚を手に取り確かめる。
剣を持つ女性の模様が彫り込まれた銀色の硬貨。
通常弾一発でこれならお釣りが来るかな。
などと考えながらそれを仕舞い込み、そして感じ取った気配の先へ素早く銃口を向け引き金を引く。
「おいおい、俺の分も残してくよ」
剣を手にしたヴォルクさんが、ぼやくように言うけれどそんなつもりは無い。
「剣で銃に勝てるわけ無いじゃないですか」
「ほう? 言うな」
こうして、僕とヴォルクさんとのハンティング対決が始まる。
フィールドは障害物の少ない廃坑の様な洞窟。
前後の延びるその先に敵は出現する。
感知、索敵そして風水。そう言ったスキルのお陰で敵の出現を察知するのは容易い。
幸いと言うべきか敵もそれ程強くない。
現れるのは鼠ばかりで全て、一発で仕留められる。
「相性良すぎだろう……」
僕の横でヴォルクさんがぼやくように言う。
剣の間合いに入る前に僕が次々と敵を消していくので、彼は諦めて地面に落ちている石を投げつけ攻撃することを選んだ。
それも、スキルなのだろう。
投げられた石は一直線に敵へと飛んでいった。
でも、その速さは銃弾の比では無い。
結果、僕が百近い鼠を狩っているのに対してヴォルクさんはまだ一桁だろう。
手元にイベントアイテムの銀貨が六百枚程。
「楽しいですね」
「俺は全然だがな」
そう言って苦笑するヴォルクさん。
狩りは全然だけれど、それでもどこか楽しそうに見える。
こう言う人だから、人が集まるのかもしれない。
「お、宝箱だ」
坑道の脇に、金属で補強された木箱が置かれているのを見つけしゃがみ込むヴォルクさん。
「開けるぞ。
中から何か飛び出してくるかもしれないから気をつけろ」
そう言いながら、宝箱の蓋に手を掛けるヴォルクさんの後ろで、僕は銃を構える。
ヴォルクさんが慎重に宝箱の蓋を開けた瞬間、鳴声と共に宝箱の蓋が跳ね上がり中から大量の鼠が飛び出してくる。
いち早く反応したファントムがラップ音で動きを止めた所を両手の銃で仕留めていく。
「痛てて」
乱射に近い攻撃で、尻もちをついたヴォルクさんに流れ弾が何発か当たったかもしれない。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけながら、僕は今の成果を確認する。
古金貨が百枚近く。
宝箱の鼠は金貨になるのかな?




