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08 服飾職人ヴィヴィアンヌさん

 翌日。

 ログインした僕はベッドに横たえていた体を起こす。

 視界の中に、メッセージがあることを知らせるアイコンが飛び跳ねる。

 その向こうにファントムが居て「おはよう」と声をかけると寄って来る。


 僕はメニューを開いてメッセージを確認する。


 ◆


 緊急メンテナンスのお知らせ


 Vinculum Onlineをご利用いただきましてありがとうございます。

 ゲーム内の不具合により、不利益となる事象を確認しましたので

 緊急メンテナンス作業を実施いたします。

 メンテナンス作業中はVinculum Onlineをご利用いただけません。

 お客様にはご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。


 【作業時間】

 01:30〜03:30

 ※終了時刻は作業状況により前後する場合がございます。予めご了承ください。


 Vinculum Online運営チーム


 ◆


 緊急メンテナンス作業終了のお知らせ


 Vinculum Onlineをご利用いただきましてありがとうございます。

 ゲーム内の不具合に解消のため、緊急メンテナスを行いました。

 現在、不具合は解消されていることを確認しております。

 お客様にはご迷惑をおかけいたしたが、

 引き続きVinculum Onlineをお楽しみください。


 【作業時間】

 01:30〜04:30


 【作業内容】

 ・称号機能実装

 ・HPがゼロとなったプレイヤーのアバターを不干渉オブジェクトに変更

 ・レイド機能の人数上限の設定

 ・その他バランス調整


 【補填内容】

 ・スキルストーン(小)×5

 ・イクスストーン(小)×5


 Vinculum Online運営チーム


 ◆


 ログインしたら直ぐに連絡ください。

 ひより


 ◆


 なんだろう。

 ウインドウのトークからひよりさんを選択する。


『おはよー!』

「おはようございます」

『ごめんねー急に。今どこ? 宿屋?』

「はい。そうです」

『部屋の番号わかる?』

「305です」

『じゃ、そっち行くからちょっと待っててもらっていいかな。

 十分くらい』

「わかりました」


 そこで通信が切れる。


「ひよりさんが来るって」


 目の前のファントムに声をかける。

 何の用事だろう。


 ひよりさんを待つ間、僕は補填として送られてきたアイテムについて調べる。



 消費アイテム【スキルストーン(小)】

 スキルの熟練度を僅かに向上させる



 消費アイテム【イクスストーン(小)】

 経験値を僅かに取得する



 どちらも、成長に関係するアイテムみたいだ。

 五個ずつ手に入ったそれをファントムに全て使う。

 それでレベルが上がることは無かったけれど、ファントムは少し嬉しそうに体を紫に光らせる。


 それを横目に僕は仮想ウインドウを開いて、スキルとアビリティのリストを眺める。


 SPを何かに使ったほうが良いのだろうけれど。

 そう言えば、ひよりさんは動きが見違えるようになっていた。

 【敏捷強化】のアビリティってアマリさんは言っていたけど。



 アビリティ【敏捷強化】

 プレイヤーの敏捷値を向上させる



「どうなるかを身をもって経験する事も大事」。

 そう言っていたアマリさんの言葉を思い出した。


 考えていても、答えは無いし。


 SPを使ってアビリティを入手する。

 それをセットし終わると同時に宿の扉がノックされた。


「はい」


 ベッドから立ち上がり、扉を開ける。

 ひよりさんと、リゼさん。

 それから知らない女の人が立っていた。


「おはよー。ごめんねー急に」

「おはようございます」

「ちゃんと寝たか?」

「はい」

「はじめまして。私はヴィヴィアンヌ」

「はじめまして。ショータです」


 そう名乗った女性は、カールした紫色の髪を編み込んで居て、服は黒。

 そして厚底のロングブーツを履いていた。


「どうぞ」


 僕は三人を部屋の中へと案内する。

 ひよりさんが白玉を抱いたまま、ファントムに手を振る。


「どうしたんですか?」


 三人が座るだけの椅子が無いので立ち話になる。


「ショータ君に私からプレゼント!」

「え?」

「ビビは、服飾職人なのです。

 なので、ショータ君の服を作ってもらいます!」

「よろしく」


 腕を組みながら、ヴィヴィアンヌさんが僕を上から下まで舐めるように見る。


「ちょっと調整必要ね。

 じゃ、着替えさせるから二人は外で待ってて」

「はーい」


 ひよりさんとリゼさんが退出する。


「あの、どう言うことでしょう?」


 二人がいなくなってからヴィヴィアンヌさんに確認する。


「言ったでしょ。ひよりからのプレゼントよ」


 仮想ウインドウを操作しながら答える。


「どうしてですか?」

「君たち、なんか不釣り合いな交換したそうね?」


 ファントムと白玉の事か。


「そんな事無いです」

「でも、ひよりは気にしているわ。

 だから、これで埋め合わせのつもりなんでしょう」


 メッセージが届いた。


 ◆


 ヴィヴィアンヌさんから試着の案内が来ています。


<試着する>

<キャンセル>


 ◆


「試着してみて」

「はい」


 僕は言われた通り、試着するに触れる。

 すると僕の着ていた服が一瞬で変わる。


 ヴィヴィアンヌさんが僕の周りをぐるりとゆっくり一周する。

 そして、「ちょっと手直しするわね」と言って仮想ウインドウを操作しながら僕の服を直し始めた。


「あの、この服ってヴィヴィアンヌさんが作ったんですか?」

「そうよ。スキルを使って、私がデザインを考えて。

 素材は昨日ひよりが手に入れてきたもの」


 なるほど。

 敵を倒して手に入った素材はこう使うのか。


「本当はね、子供の、それも男の服なんて作りたくなかったのよ」

「え」

「でもね、ひよりがどうしてもって、自分の分を後回しにして頼んできたの。

 だから、ちゃんと受け取りなさい」

「それで、ひよりさんの分は?」

「素材がないから、後回しね」

「僕も同じ素材を持ってます。それをひよりさんに」

「あげるの?」

「はい」

「駄目よ」

「どうしてですか?」

「そしたら、ひよりはまた君に負い目を感じる」

「そんな……」


 再びヴィヴィアンヌさんは僕の周りを回って、そして、仮想ウインドウを操作する。


「やっぱり、受け取れません」

「今度は君の気が収まらないわけか」

「……はい」

「そこで女性の気持ちを汲み取って黙って受け取るのがいい男。

 何も考えずにもらっちゃうのがバカな男。

 自分の為に送られた物を突き返すのは、最低な男よ」

「……」

「まあ、子供にはわかんないか。

 君の素材、私が買い取るわ。

 全部」

「え?」

「それで、ひよりは服代を自分で出す。

 そうすれば、どこにも問題が無い取引が成立するわ。

 どう?」

「お願いします」

「わかった。後で全部出して」

「はい」

「さ、これで良いわ」


 僕は室内にあった鏡で改めて自分の姿を確認する。

 白いシャツに、黒のベスト。

 膝の出た短いパンツに拍車がかかとに付いたブーツ。

 そして、真っ赤な首元の飾り。

 たしかジャボという名前のはず。


「すてきですね」

「気に入った?」

「はい」


 ヴィヴィアンヌさんに頭を下げたあと、ファントムに向き直る。


「どう?」


 ファントムは赤く燃えて縦に震えた。

 どうなんだろう。

 わからないや。


 その後、ヴィヴィアンヌさんに言われるままに手に入った素材を全て買い取ってもらう。

 所持金が最初から持っていたお金と合わせて10,000G程になり、そして、装備品が変わる。



 ◆


 防具【黒獅子革のスーツ(子供用)】体防具/ランク:2

 フォーマルに多分な遊び心を加えた一品

 製作者:ヴィヴィアンヌ


 防具【黒獅子革のブーツ(子供用)】靴/ランク:2

 拍車は飾りであり、実用性はない

 製作者:ヴィヴィアンヌ

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