78 居残り
草の中より突如として現れるモンスター。
それは、最初に倒した蛇だったり、蠍や蜘蛛、それから大きなバッタ。
そうした敵を常に警戒しながら進む。
五郎に乗っていて視界が通る僕にはそうでもなかったのだけれど、下を歩くみんなはそうではなかった。
丁度お昼になった頃に一度休憩を挟もうと黒さんが提案し、草むらの中へセーフティフィールドを展開する。
「大丈夫か?」
朝景さんが、地に伏せたハティにもたれかかるノルンさんにそう声をかける。
「は、はい」
「少し、長めに休みましょうか」
その様子を見ながら黒さんがそう提案する。
「いや。
今日はもう、これまでにしよう」
「そうね」
そう言い返した朝景さんとパールさんを黒さんは、一瞬、鋭い目つきで睨み、直ぐに笑顔を浮かべる。
「まだ、数時間じゃないですか」
「まだ、初日だ」
そう言って、黒さんと朝景さんは視線をぶつける。
「あ、あの、私は大丈夫ですから」
そうノルンさんが身を起こしながら言う。
この草原で一番元気だったのはハティだ。
はしゃいで草むらの中へと消えていくハティ。
それを止めようと追い掛けるスコルとノルンさん。
御する為に大声を上げる。
そこへ襲いかかるモンスター……。
種族によるけれど、親密度が低いと召喚主の言うことを聞かないことがある。
特に獣タイプは。
朝景さんがそう教えてくれた。
そう言えば、白玉のそんな感じだったかなと思い返す。
「いや、今日はこれまでにしようぜ」
くまこさんが、五郎に関節技を決めながら言う。
五郎がくまこさんの腕をタップする。
「いや、しかし……」
なおも黒さんは食い下がる。
「別に焦る必要は無いだろう。
召喚獣のコントロールって意外と疲れるんだぜ?
暴れ足りないってんならアタシが付き合うから」
五郎を解放して、そしてポキポキと指を鳴らしながらくまこさんが言う。
「……わかりました。今日はここまでにしましょう。
続きはまた明日に」
「アタシは付き合うって」
「ホームの照明を手配するのを忘れてました。
それに、ドアも直さないと」
「すいません。明日は、もっと頑張ります」
「いえ、こちらこそ。
もう少し、慎重になるべきでした」
笑みを浮かべながら黒さんはノルンさんに頭を下げる。
そこで一旦パーティは解散となった。
黒さんと朝景さん、そしてパールさんが次々と帰還で消えていく。
「チビ君は残んの?」
銃を取り出した僕にくまこさんが疑問の顔を向ける。
「そのつもりです」
「良いけど、五郎の上はナシだぞ。
少し運動させるから」
「はい。そのつもりです」
僕も少し、運動がしたい。
「あ、あの、私も一緒に行っていいですか?」
そう、ノルンさんがくまこさんに言う。
「良いけど、大丈夫?」
「は、はい。少し、スコルにも遊ばせてあげたいので」
「そっか。……一応パーティ、組み直す?
連携とかは考えてないけど、連絡は直ぐ取れた方がいいから。
まあ、経験値の分配が悪くなっちゃうから、無理にとは言わないけど」
「あ、か、勝手に戦っていて良ければ、お願いします」
「おーけー。チビ君も」
くまこさんから来たパーティ申請を受理。
「じゃ、適当に戦って帰ろう」
そう言って右手を上げたくまこさん。
「オー」
「お、おー」
それに僕が続く、一拍遅れノルンさんが続く。
「行くぞ! 五郎!」
くまこさんを背に乗せた五郎は、僕を乗せていた時より生き生きと大きく跳躍し草むらの中へと飛び込んで行った。
「ハティ! お座り」
ノルンさんは黒の狼を座らせその正面にしゃがむ。
「良い? ちゃんと言う事聞かないと、晩御飯抜きだからね?」
両手で顔を、ほっぺを引っ張る様に掴みながら黒の狼に声を掛ける。
ハティは少し困った様な顔をした気がした。
そして、小さな鳴き声を返す。
「よし。良い子ね。
スコル、ゴー!」
立ち上がり、草原を指差すと同時に白のスコルが弾かれた様に草むらの中へと飛び込んで行く。
「ハティは、まだだよ」
手で待ての形を作りながら、腰を上げ飛び出そうとしたハティを制止させる。
「まだよ。まだ」
スコルが草むらの中から小さく鋭く啼く。
「ゴー!」
掛け声と共にハティが弾かれた様に飛び出す。
その一歩後をノルンさんが追いかけて行く。
「さて、僕はどうしようかな」
この小さな体で草をかき分け進んでも良いのだけれど、下手に銃を撃つと仲間に当たりかねない。
「君は良いね」
上を飛ぶファントムを見上げなそう声をかける。
飛べるし、草もすり抜けられる。
まあ、考えてないいても仕方ない。
僕も両手に銃を持ち、草むらの中へと飛び込んで行く。




