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76 遊撃部隊

「おはよう」


 ログインした僕の目に何時もと変わらぬファントムの姿が飛び込んでくる。


「おはようございます」


 そのまま、部屋から出て親方に挨拶。


「おはよう。直に朝食が出来る」

「ではその前に掃除をしてきます」


 親方に新しく弟子が増え、今まで日課だったインゴット作りは無くなったのだけれど掃除くらいは今まで通りやろう。

 そのうちに、それすら要らないと言われるかもしれないけれど、それまでは。


 ◆


「こんにちわ」

「おう!」


 あばら家の屋根の上でトンカチを振るうヴォルクさんに挨拶をして、建て付けの悪い玄関のドアを開ける。


 中には黒さんの姿があった。


「こんにちわ」

「おはよう。他のメンバーも直に来るでしょう」


 そう黒さんが答えた直後に、部屋の中が突然暗くなる。


「団長。穴を完全に塞いでしまうと暗くて困ります。

 照明を買うまで、少し待ってください」


 上を向きながら、黒さんがそう大声を上げる。


「ああ、そうかぁ」


 それに答えるヴォルクさんのややのんびりとした声と共に再び室内に明かりが差し込む。

 見上げると屋根の穴からヴォルクさんが気まずそうな笑顔を覗かせた。


「直ぐに手配するので、今日のところはその辺にしておいてください」

「ああ、分かった」


 そう言うと共にヴォルクさんが顔を引っ込め、そして屋根の上でバタバタと音を立てる。


「うす」


 室内に突然、人が現れた。

 そう言えば、クランのメンバーはそのホームへ直接<帰還>で移動できるのだった。


「なんだ、まだ屋根出来てないのか」

「照明が無いんですよ。忘れてました」

「ああ、そういやそうだな。

 ……よう」


 黒さんとひとしきり会話をした後に僕の方へと向き直り、軽く手を上げたその人は朝景さん。


「ラビットはもうやらないのか?」


 そう言いながら自分の頭に両手を当てて、ウサギの耳のポーズを取る。


「ええ」

「そうか。まあ、よろしくな。

 そういや、紹介してなかったな。

 相棒の小六ころくだ」


 そう言うと、彼の肩から10センチに満たない小さな虫が音も立てずに飛び立ち、僕の頭の上を旋回する。


「ショータです。よろしく。こっちはファントム」


 僕の目の前でゆっくりとホバリングする赤い体のスズメバチに自己紹介。

 ゆっくりと縦に輪を描くように旋回してから朝景さんの元へと戻っていく。


「蜂ですか?」

「そうだ。赤蜂あかはちと言う種類で二回進化している」

「進化?」

「そう。ビーからウェンウェンを経て今の赤蜂あかはちになった」

「そうなんですか」


 ファントムを見上げる。

 僕の相棒にもそういう事があるのだろうか。


「お、遅くなりました。ああぁ!」


 大きな音を立てて玄関のドアが開き、そのはずみでドアが外れて傾いてしまう。

 その横で泣きそうな顔をしているのはノルンさん。


「ああ、そのままで良いですよ」


 素早く黒さんが駆け寄り、手を差し伸べる。


「すいません」

「いえいえ。やっぱり本職に頼まないと駄目ですね。

 取り敢えず、中へ入ってください」

「は、はい」


 おずおずと中に入ってきたノルンさん、そして、その後を静かについて来る召喚獣のスコルとハティ。

 白と黒の狼。その体は二メートル以上になる。


 朝景さんがそんなハティとスコルに近づき「触っても?」とノルンさんに確認する。

 ノルンさんが嬉しそうに頷く。


「おお、フワフワだな」

「は、はい。毎日ブラッシングしてるので」

「そうか。お前たち可愛がってもらってるんだな。

 進化は?」

「ま、まだスコルが一回だけです。ホワイトファング……」

「一回でこんなに大きくなるのか。

 ウルフ系もアリだな」

「二体目ですか?」

「そう。なかなかに悩ましい」


 召喚士同士話に華が咲くのを眺めながら僕は椅子に腰を下ろす。


「こんにちわ」


 次いで姿を現したのはパールさん。


「今日からよろしくね」

「はい。よろしくおねがいします」


 まず、僕にそう言ってからノルンさん達の方へと向かうパールさん。


「よっ、と……あれ、最後か?」


 次いで現れたのは大きな熊と女の人。


「よう。チビ君、よろしくな」


 そう言って僕に右手を差す出す彼女。


「ショータです。よろしくおねがいします」


 右手を握り返しながら自己紹介。


「アタシはくまこ。こっちは五郎。熊だから熊五郎。わかりやすいだろ?」

「そうですね」


 彼女の言ったその理屈はよくわからなかったけれど、ひとまず話を合わせることにした。


「ファントムです。名前は本人から教えてもらうのでまだわかりません」

「そっか。そっちもよろしく」


 そう言って歯を見せながら笑うくまこさん。


「全員揃いましたね」


 黒さんが僕等を見渡しながら静かに言った。

 僕はそっと椅子から立ち上がるを


「今日から私達六人はパーティです。

 よろしくお願いします。

 一応、私がリーダー、サブを朝景にお願いします。

 それにして、サモナーが四人も居ると賑やかですね」


 そう言って黒さんは静かに笑う。


 フェンリルの十八人は、その戦闘スタイルや主な活動時間を考慮して六人ずつの三パーティーに分けられた。


 ヴォルクさん達の主攻組。

 ハヤトさん達の助攻組。

 黒さんを中心にした僕等遊撃組。


 アマリさんは、ミキさんと助攻組に入った。

 他に灰さんとエイラさんも。


 それぞれに役割がありつつ、そのチーム単独でも活動出来る。

 そんな風に人員配置をしたらしい。


「それでは、早速ですけど新しいエリアへと行きましょうか。

 最初ですのでお互いをよく見て、なるべく声をかけあって行きましょう」


 視界の端に黒さんからのパーティ申請が出現する。

 僕は視線の動きでそれを受理。


「お、行くのか?」


 ヴォルクさんが、嬉しそうに僕等へ声をかける。


「ええ」

「気をつけてな!」


 ヴォルクさんがサムズアップして笑顔を見せた直後、一瞬で景色が切り替わった。

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