74 エリアボス・バロメッツ
森の中を僕ら六人が足早に進む。
先頭に大きな盾を手にしたエイラさん。
その斜め後ろにタルタロスさん。
それから僕とアマリさん。
後ろから二頭の狼、ハティとスコル。
その背に召喚主のノルンさんとミキさんをそれぞれ背に乗せている。
「ほ、本当に倒せるんでしょうか?」
「んー検討中」
ノルンさんの質問に答えるのアマリさんは、仮想ウインドウを操作しながら走る。
「ショタ君。急な話だけど弾に余裕ある?」
「ええ」
「ショタ君は、タマタマに余裕あり、と」
そう言い直したアマリさんに何故かファントムが怒った様に震える。
「火の属性弾、ある?」
「はい」
「良し。
ミキ、フレイムピラー、使える?」
「もちろんです!」
「なら、行けそうね」
そう言って仮想ウインドウを閉じる。
「じゃ、このまま突っ込むわよ。
先頭、スピード上げて。
しばらく敵は居ない」
「了解」
エイラさんが振り返らずに答え、走る速度を上げる。
何度かモンスターに遭遇しながらも、歩みを止めずに進んだ僕達の前に、突如として現れたのは真っ白い葉を付けた大きな木。
BOSSモンスター【バロメッツ】Lv:???
幹は硬く決して折れない
果実は羊となり全てを食らい尽くす
有利属性
火
「戦った事がある人も居るかも知れないけど、バロメッツ自体は動かないタイプのモンスター。
問題は取り巻きの羊。
数秒おきにポップするんだけれど、こいつには魔力耐性がある。
数に限りはあるらしいけれど、こっちは六人。
耐久なんてしてたらジリ貧。
だから、速攻で決める。
ショタ君。
あの木になった白い実、全部撃ち落として。
次々に生えてくるから頑張って。
タルタロス、ノルンとハティ、スコルは落ちた羊を駆除。
主な攻撃は体当たり。
一回のダメージはそれほどでも無いけれど群れで来るから油断しないように。
エイラは初撃をお願い。その後はミキをガード。
最後の一撃は、ミキ、貴女の仕事よ。
回復は任せて」
パーティメンバーを見渡しながら作戦を説明するアマリさん。
「では、行きましょう」
静かに言ったアマリさんに全員が静かに頷く。
「フィジカル・エンチャント・オール」
アマリさんの強化魔法。
ヴィヴィアンヌさんの使うそれより効果は低いが、体の敏捷さを強化するだけの彼女の術に比べ身体能力全てを強化する。なので剣などの武器による攻撃も。
銃を使う僕にその恩恵は無いのだけれど。
「参る!」
短くエイラさんが言って、地を蹴る。
そのまま、盾を構え直径一メートル近い木の幹へ体当たりを仕掛ける。
木が大きく揺れ、白い葉に見えた羊の実が雨の様に地に落ちて来る。
それに合わせ、タルタロスさんとスコルに乗ったノルンさん、そしてハティが飛び出して行く。
地に落ちた白い実は、小さく弾んだ後、弾ける様に手足と角を生やし羊の姿へと変わる。
その群れを弾き飛ばしながらエイラさんがこちらに戻る。
それと入れ違いに羊へと襲い掛かって行く二人と二匹。
僕は親方の作った意欲作、ON-4 W、ON-L4 Wを両手に、木に残った白い実と枝を繋ぐ細い果柄へと狙いを付ける。
木の周囲を走り回りながら続け様に火の属性弾を撃ち込んで行く。
百発百中とは行かないけれど、ほぼ同時に吐き出される四発の銃弾は確実に木に実る羊の実を落下させる。
十分に熟れた物は、地に落ちると同時に羊へと変わり、そうで無い物はそのまま砕け散る。
どんどん増えて行く羊は、タルタロスさんの剣か、ノンルさんの槍、あるいはハティとスコルの牙の餌食となって行く。
時折僕に向かい来る物も居る様だけれど、ファントムがそれを許さない。
実が落ちた枝からは、僅かな時間を置いて再び羊の実が実るのだけれど、火の属性弾が焼き切った果柄はそれを遅らせる効果があるらしい。
「終わりました」
そう、アマリさんにメッセージを入れながら僕は銃口を地の上を埋め尽くす羊へと向ける。
ちらりとアマリさんの方へ視線を巡らせると、僕に向け小さく頷くのが見えた。
「ファントム!
上に」
相棒にそう声をかける。
「「フレイムピラー!」」
僕が鉄板に飛び乗ったそのタイミングで、アマリさんとミキさんの魔法を唱える言葉が重なる。
それは、まるで歌の様に美しく重なり合って。
以前、灰さんが出現させたそれよりもはるかに強く赤い光を放つ火柱が一気に枝だけになったバロメッツを飲み込む。
<ポーン>
<エリアボス・バロメッツ討伐を退治しました>
その声と同時に、巨木が、そして地を埋め尽くしていた羊達が粒子へと変わり消えて行った。
<新たな世界への扉が開きます>
<戦士たちに祝福あれ>




