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73 フェンリルの面々

 相変わらず空の見えるあばら家。

 そこに僕を入れ、十八人のプレイヤーが集っている。


 その面々をゆっくりと見渡して、ヴォルクさんが口を開く。


「知った顔も、そうでない顔もあるが、今日から俺たちは仲間だ。

 誰も何も阻まない。

 俺達の名を脳裏に記憶に刻み込もう。

 俺達は、フェンリルだ」


 ゆっくりと、力強く言ったその言葉に、半数ほどのメンバーが「オオ!」と声を上げる。

 それにヴォルクさんは満足そうな笑みを浮かべ小さく頷く。


「タルタロス、ノルン、ミキ、ベルヒ、エイラ、ショータ。

 こっちへ来い」


 ハヤトさんが何人かのプレイヤーを部屋の隅へと呼ぶ。


「まあ、アレだ。

 お前らとはこのゲームで初めて一緒に戦う事になる訳だが……」

「憧れのフェンリルの一員になれて光栄です」


 ハヤトさんが喋り始めたのを遮る様に、金髪で褐色の肌をした長身の男性が拳を握り締めながら叫ぶ。


「……ベルヒ。

 手前、俺が喋ってんだろ?

 殺すぞ?」

「うす。すいません」


 ハヤトさんはベルヒさんと言うその人を睨みながら静かな口調で凄む。

 しかし、睨まれたベルヒさんは少し嬉しそうな笑みを浮かべる。


「……凄ぇ。俺、今、鬼畜の副団長に睨まれてる」


 そう呟いた彼をもう一度睨み、舌打ちを一つしてハヤトさんは続ける。


「でだ、まあ、それなりに、お前らの事は聞いてる。

 この中で、バロメッツを倒した奴は居るか?」


 その問いにベルヒさんだけが高々と右手を上げる。


 僕はそもそもバロメッツが分からない。


「一人か」


 再びハヤトさんの舌打ち。


「まあ、良いや。

 お前ら五人、今から行って倒して来い」

「えぇ!?」


 一人、驚きの声を上げたのは白い毛皮で出来た服を着て頭に犬の様な耳を乗せた女の人。

 あれ、流行ってるのかな。


「バロメッツってエリアボスよね? 一丁前に入団テスト?」


 そう言いながら、僕を後ろから抱きかかえる様に肩から両手を回すアマリさん。


「お姉しゃま!」


 突然、僕の横に居た、僕と同じくらいの背丈の女の子が嬉しそうな声を上げる。


「ん?」

「何でお前が出てくんだよ」

「お前、お姉しゃまから離れろ!」


 ハヤトさんが僕のやや上、多分僕の頭の上に顎を乗せて居るアマリさんを睨み、そして、横の女の子が僕を睨む。

 この子がアマリさんを姉と呼んで居ると言う事は、リゼさんの妹でもある訳か。


「えっと……誰?」


 しかし、アマリさんはそんな事を言う。


「まあ良いや。後でね。

 それより入団テストがあるなんて聞いてないけど?」

「テストじゃねーよ」

「因みに私も倒して無い」

「クソが!

 お前ェも、そいつらと行って来いや!

 倒すまでここの敷居は跨げると思うな」


 そう言い残し、ハヤトさんは立ち去った。


「偉そうに! この家、敷居なんか無いじゃん!」


 アマリさんが僕の上で憤る。

 頭、どかしてくれないかな。


 はあ、と小さく息を吐いてから、アマリさんは続ける。


「取り敢えず自己紹介しようか。

 アマリ! 十四歳! 回復が得意な魔法少女です! キラン!」

「出た! サバ読み参謀アマリ!」


 ベルヒさんが嬉しそうな声を上げる。


「お前、死刑な?」

「うす。すいません!」


 更に嬉しそうに謝るベルヒさん。


「ミキ! 十三歳! 攻撃が得意な魔法少女です! アマリ姉しゃまとは前前前前世からのソウルメイトです! キラン!」


 前にアマリさんがやっていた様に右手をチョキにして目の横に添える。

 流行ってるのかな。


「……そうなの?」

「そうなんです! お姉しゃま!

 まだ……思い出さないのですね?

 大丈夫です!

 ミキが、ちゃんと思い出させて上げます!」

「……ミキ。

 前世での因縁は全て断ち切った筈よ。

 でなければ、再び深淵が蘇る。

 それを防ぐ為に、私達は姉妹を止めた。

 境界の果てでそう約束したでしょう?」

「お姉しゃま! そうでした。

 ……私とした事が」


 何の話しだろう。

 まあ、良いや。


「ショータです」

「私の嫁です!」

「違います」

「それと、召喚獣のファントムです」


 僕の服の中でじっとしていたファントムが顔を出す。


「知ってるぞ」


 ベルヒさんがそう僕に言うが、僕はベルヒさんに会った記憶は無い。


「昨日の戦い、映像で結構拡散してるから」


 頭の上でアマリさんが小声で教えてくれる。

 頭、どかしてくれないかな。


「わ、私もサモナーです。

 あ、名前はノルンです」


 そう言ったのは、頭に耳を付けた毛皮の女の人。


「召喚獣は?」

「お、狼なんですけど……いきなり家の中へ上げては失礼かなと思って、外で待たせてます」

「大丈夫でしょ。熊が居るし」


 そう言って皆が視線を向けた先には黒い熊が鎮座して居た。

 あれも召喚獣かな。

 だとすると横にいる女の人が召喚主かな。


「ねえ?」


 アマリさんが反対方向へ顔を向ける。

 その先に居たのはもう一人の副団長、黒さん。


「ええ、もちろん。

 外のワンちゃんは、ノルンさんのでしたか。

 遠慮せずに連れて入れて結構ですよ」


 笑みを浮かべながら答える黒さん。


「あ、ありがとうございます」


 嬉しそうに頭を下げるノルンさん。


「食べ物も用意しておきましょう。

 好物は何ですか?」

「え、わ、私は……ケ、ケーキが好きです」

「そうですか。

 では、美味しいケーキを用意しましょう。

 ワンちゃん達は、何が好きですか?」

「あ、わ、私……す、すいません。

 えっと、う、兎の肉が好物です」


 最初の質問が召喚獣に対してだと気付いたノルンさんは顔を真っ赤にしながら答える。


「兎……ですね。分かりました」


 黒さんの視線が一瞬僕の方を向く。

 でも、今日は兎の耳はつけていない。


「ケーキは、クリーム、チーズ、チョコ……どんなのもが好みですか?」

「な、何でも好きです!」

「分かりました」


 ノルンさんに向き直り笑顔で応対する黒さん。


「ねえ。

 バロメッツってこの面子で倒せるの?」

「まあ、大丈夫ですよ。あなた方なら力押しで行けるでしょう」

「ふーん」

「流石! 菩薩の副団長、黒さん!」


 ベルヒさんが嬉しそうな声を上げる。


 なんか、みんな色んな名前がある人達なんだな。

 殺し屋集団……って言うのは燕三さんの勘違いなのかな?


「そっちは?」

「エイラ。タンクです」


 そう答えたのは重そうな鎧を纏った大柄な男の人。


「……タルタロス」


 最後の一人。

 目深にフードを被った人が小さな声で名乗る。


「戦闘スタイルは?」


 アマリさんの問いに手に剣を取って答えの代わりにするタルタロスさん。

 その表情はピクリともしない口元しか見えない。


「近接ね?」


 アマリさんの問いに小さく顎を引いて答える。


「それじゃ、急造のパーティだけども仲良く行きましょうか」


 アマリさんがそう言って、そこでやっと彼女から解放される。

 アマリさんの表情は、声とは裏腹にやや陰りが見えた様な気がした。

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