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70 クラン勧誘・黄色篇

『ショタ君! ゴメン! 連絡遅れて』

「いえ、大丈夫です。何でしたか?」


 アマリさんからの通信に僕は作業の手を止める。

 ちょうど切りよくMPも尽きた。


『今どちら?』

「工房です」

『なら、ちょっと外でお茶でもしようか。

 風呂屋の並びに"ウォータームーン"ってカフェが有るのわかる?』

「はい」

『その前で待ち合わせでどう?』

「わかりました」

『じゃ、待ってるね!』


 そう言って、通信は切れた。


 僕は作業の後片付けをして、軽く工房を掃除してから待ち合わせ場所へと向かう。




「お待たせしました」


 既に店前にはアマリさんの姿。


「あれ、ウサギは?」

「いえ、必要ないので」


 僕の格好は作業着のツナギ姿。

 必要も無いのにウサギの耳をつけるほど、あの格好が気に入っている訳ではない。


「残念!」


 そう言ったアマリさんはウサギの耳をモチーフにしたベールを被っていた。


「よく似合いますよ」

「折角、おそろいにしたのに。

 まあ良いや。入ろう」


 そう言って店の中へ。

 そのまま通りに面したテラス席へと進んでいくアマリさん。


「何でも好きなの頼んで良いよ」


 そう言ってメニューを手渡される。


「じゃ、これを」


 僕が指差した品を見て、アマリさんは少し目を丸くした後にニンマリとした笑顔になる。


「可愛い。君は、ホント天然だ」


 そう言って注文を済ます。

 すると直ぐに僕の前にアイスクリームが乗ったメロンソーダが運ばれて来る。

 アマリさんの前にはコーヒーとケーキ。


「それでだ、ショタ君。

 メッセージ来てたと思うけれど、クランが実装された」

「はい。見ました」

「ショタ君、どこか入る所決めた?」

「いえ。

 クランが何かわかってません」


 そこでアマリさんはニヤリとする。


「クランと言うのはね、ショタ君。

 プレイヤー同士が協力するチームみたいなものなんだ。

 このゲームだと、互いにアイテムを融通できる共有倉庫って言うシステムがあるね。

 将来的にクランのメンバー同士で協力技を使えるなんて書いてあるけどいつになる事やら。

 他にも仲間だから情報の共有とか、一緒に狩りに行ったりとか。

 そう言うメリットの反面、ある程度周りと足並みを揃えないといけないデメリットもある」


 マフィアの『ファミリー』の様なものかな?

 いや、あれは完全にトップダウンの組織系統の筈だから少し違うか。


「そしてショタ君。

 君は私とクランを組まなければいけない」

「そうなんですか?」


 アマリさんは僕を見て、そう言い切った。

 その言葉に偽りの色は見られず。


「そうなんだ。

 クランを組むのは、最初に勧誘を受けた人と決まっている」

「断れないのですか?」

「断れない。

 どうしても嫌だと言うのなら……私がゲームから消えるしか無い」

「そんな……」


 随分と、強制力のあるシステムなんだな。

 しかし、それならば仕方ない。


 一瞬、考える為にテーブルに落とした視線を戻しアマリさんを見返す。


「オイ。

 直ぐわかる嘘ぶち込んでんじゃねーよ」


 いつの間にかアマリさんの背後に人影。

 ギョッとしながら振り返るアマリさん。


「相変わらずね」

「チョリース」

「……何しに……来た」


 アマリさんが絞り出す様に言った台詞に答えず、三人は僕達の隣の席へと腰を下ろす。


「偶然ねー」


 そう言って僕に手を振るパールさん。


「そんな訳、無いでしょ……」


 アマリさんが顔をしかめながら返す。


「何よ、雁首揃えて。

 同窓会でもするつもり?」

「そうだよ」


 そう答えたのは黒髪の目つきの鋭い男の人。


「……マジで?」

「オイ、坊主。

 この女が今言った事は全部出鱈目だ。

 お前にこいつのクランに入らなきゃいけない謂れなんか一つも無い」


 そう言われ、僕は再びアマリさんを見る。

 顔をしかめわずかに決まりの悪そうな表情を浮かべるアマリさん。


「嘘、ですか?」


 小さく頷くアマリさん。


「……凄い」


 ……嘘を見抜けなかったのは、彼女の演技力がそれを完全に覆い隠したからだ。

 そんな僕の反応に、怪訝そうな顔をするアマリさん。


「あれ?

 怒ってない?」

「はい。悪いのは、騙される方ですから」


 その答えに少しアマリさんは悲しそうな、そんな表情になる。


「ハハハ。君、面白いね!

 ウン。可笑しい!

 僕と戦わないか?」


 そう言って立ち上がったのは隣の席に座る茶髪の小柄な少年。


「止めろ。GMが来る」


 その少年をたしなめる様に静かに言う黒髪の人。


「気に入った!

 壊れてる。絶対!

 合格だよ!」


 剣を仕舞いながら嬉しそうに言う茶髪の人。

 何の事だろう。


「合格って、何の事よ」


 そう思ったのは僕だけで無かった。

 アマリさんが僕の疑問をそのまま口にする。

 三人を睨みつけながら。


「言っただろ。

 同窓会だよ」

「……本気?」

「ああ。フェンリル、再結成だ」


 その言葉に一瞬アマリさんは口元に笑みを浮かべ、でも直ぐに搔き消す様に真顔になる。


「ショタ君は部外者だ」

「貴女、独り占めしようなんて随分と強欲じゃ無い?」


 パールさんは笑みを浮かべながら言って立ち上がり、僕等の間の席に腰を下ろす。


「……良いじゃないですか。別に」

「真面目な話、貴女じゃ面倒見切れないと思う。

 だって、ショータ君お昼に暇をしてる人よ?」

「え?」


 パールさんが、僕らにだけ聞こえるくらいの小声で言ったその言葉にアマリさん目を丸くして僕を見る。


「どうせ、夜の数時間付き合ってその後明け方までは一人で楽しもうと考えてたんでしょ?」

「え? ショタ君、学校は?」

「オンラインです」

「マジかぁ……盲点だった……」

「いろんな人が居るとはいえ珍しい事には変わりないから。付き合える人がいた方が良いでしょ?

 私は大体活動時間同じだろうから」


 つまり、僕の様な子供が一人ゲームにいたら目立つと言う事だろう。

 当然か。

 今だって、皆、学校等で外に出ている時間の筈だから。


「それに、そうでもしないと貴女、本当に犯罪者に成りかねないじゃない?」

「……それでも良いです」

「本当に?

 故郷の妹さんが泣くわよ?

 カツ丼食べる?」

「くそう。

 反省します。

 オイラがやりました」


 アマリさんも、灰さんもパールさんの前では大人しくなる。

 ひょっとしたらフェンリルと言うクランのリーダーは彼女なのだろうか。


 そんな僕の視線に気付いた彼女は、優しい微笑みを向ける。


「まあ、嫌なら断っても構わないから。

 クランのホームで詳しい話を聞いてくれる?

 私達の団長も紹介するわ」

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