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64 淤岐島作戦、終結

 ぼんやりと周りが見えた頃にはちょうど海面の真上で。

 すぐ目の前にRenNaさんが居た。


「四発当たった」


 片手でメガネを直しながら、僕を睨むRenNaさん。

 泡を消すために撃って居た流れ弾が当たったのだろう。


「ごめんなさい」

「許さない。貸し一つです。

 ……折角ここまで頑張ったけど、この戦いは負け」

「え? どうしてですか?」

『いやぁ、派手な割に効いてないね』


 灰さんの呑気な声。

 海竜のHPは残り六割程。

 だが、その巨体はまるで死んだ魚の様に海面に浮かんでいる。


「灰さん。

 前に一度説明したと思うんですけど……」

『ん?』

「海蛇類は、雷属性の攻撃を受けるとカウンターを発動します」

『おお!』

「今回、貴方の魔法は海中のプレイヤーにカウンターとして跳ね返りました。

 ショックの状態異常付きで」

『……ヤバす!』

「どう言う事?」

「ショックの状態異常は魔法で回復出来ないんです。

 つまり、今海の中を灰への怒りを溜め込んだプレイヤーが身動き取れず漂っている訳」

『…………ヤバす!!』

「まあ、シーサーペントも状態異常なんだけど、回復したら最大の攻撃が来る筈。

 つまり最初の大津波ですね。

 プレイヤーは反撃出来ない。

 橋も持たない」

「どれくらいで回復しますか?

 それまでに倒せば……」

「一分くらいね」

「それまでに倒して来ます」

『頑張れ! ショータ!』

「RenNaさん、セレンさんを乗せてもらって良いですか?

 その……」

「黒蜜」


 亀の召喚獣の名前は黒蜜と言うのか。

 確かに黒い甲羅をして居る。

 そこへセレンさんを下ろす。


「因みに海の中のプレイヤーで動けそうな人は居ない。

 私は攻撃力皆無。

 なので勝ち目は無いと思います」

『頑張れ! ショータ! 俺は燃料切れだけど精一杯応援するよ』

「では、静かにしてて下さい」

『ぉぅ……』

「行こう。ファントム」


 出来る限りの事はして来よう。

 小さく揺れるファントムと共に空へ。


 そして、上から海に浮かぶ海竜へ向け銃弾の雨を降らす。

 一分。

 その間、引き金を引き続けたけれど……やはり無理か。

 かろうじて一割ほどHPを減らしたけれど。


 海竜は再びその首をもたげ、睨みつけるような視線を僕に向ける。

 怒りなのだろうか。

 目が真っ赤に染まっている。


 大きく口を開ける海竜。

 構わず引き金を引く。

 海竜の周りの波が泡立ち、高くなっていく。


 不味い。


 何か、手は無いのだろうか。


 ……困ったときは……。


 ……困ったときは……助けてよ、お姉ちゃん?


 海竜が高周波の様な咆哮を上げる。


『総員。

 弩級範囲攻撃、第二波来ます。

 覚悟を決めて下さい』


 RenNaさんの最後通告。

 これまでか……どうせ……駄目なのならば……。


「……たす」


 言いかけた僕の目の前で、海竜の首が大きく傾く。

 衝撃音と共に。


 上から人が……エアルさんが落ちてきて海竜の顔面に衝突した。


 狙っていたのだろうか……。


 衝突する瞬間、その膝を立てているように見えた。

 そのお陰で、海竜の攻撃は中断された。


 そのままエアルさんは、海竜の顔に魔法を浴びせかけ剣を突き立てる。


『止まった……?』


 海竜の攻撃は止まった。

 だけれど、代わりにエアルさんの絶叫が聞こえる。


「死ねぇ……クソがぁ……部下の負荷を考えろ……ハゲェ!!」


 矢継ぎ早に繰り出されるエアルさんの剣。

 自らの頭に乗ったその敵を振り落とさんと、海竜が頭を乱暴に振る。

 落とされかけたエアルさんは、しかし、海竜の首へしがみ付く。

 そして……自らの左手を剣で突き刺した。

 海竜に自分の体を繋ぎ止める為に……。


 エアルさんは右手一本で海竜に剣を突き立てる。

 何度も、何度も。

 何本も、何本も。


 海竜がエアルさんを振りほどこうと暴れる。

 しかし、海中に潜っても空中に身を躍らせてエアルさんを海面に叩きつけるように飛び上がっても、彼女はそこから離れることは無かった。


「散々……リスクを……説明……したじゃねぇか!!」


 エアルさんの絶叫は続く。


「絶対! ぶっ殺す!」


 どうして良いかわからず、僕はRenNaさんの側へ。


「……何なの? あれ……」


 セレンさんがそう呟いた。


「孤高の狂戦士バーサーカーエアル。

 ちょっとした有名人」


 RenNaさんがそう説明する。


 海竜が海中から再び身を踊らせる。

 海面にエアルさんを叩きつけるつもりだろう。

 しかし、その前にエアルさんは海竜から弾き飛ばされる様に離れる。


 そして、静かに海面へと着地する。


「水の上に……立った!?」

「魔法!? 何のスキル?」


 そのエアルさんに向け海竜が口を開ける。

 放水か!?

 海面に悠然と立つエアルさんは静かに左手を海竜に向け掲げる。


「避けて!」


 僕の声に気付きこちらを振り返るエアルさん。

 その顔に……涙?


 動かないエアルさんに向け放たれる放水。


 不用意に声をかけるべきでなかったか?


 エアルさんが再び竜を向く。

 向かい来る放水がエアルさんを飲み込んだその瞬間、爆発音と共に真っ白な煙が生じてあっと言う間に周りに広がって行き、海竜をも飲み込む。


 真っ白の霧の様な物に覆われた海面。

 そこへエアルさん絶叫が響く。

 それは、勝利の雄叫びではなく慟哭。



 〈ポーン〉

 〈リージョンボス・シーサーペントを退治しました〉


 徐々に霧が晴れゆく海上に響くシステム音。

 しかし、プレイヤーから歓喜の声は上がらない。

 ただ、エアルさんの叫び声だけが続いていた。

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