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58 セレンの武器

 ログインして、まずは工房の掃除。

 その後、朝食。

 それからインゴッド作り。大量の。

 お昼を過ぎてからは自分の為に銃弾作り。

 ピラミッドで手に入った金塊は20本分が銃弾に変わった。

 24,000発。

 でも、アイテムボックスの関係で一度に持てるのは9,999発。

 残りの金塊と銃弾は部屋に無造作に置いてある。

 そして、夕方にヴィヴィアンヌさん達が来たら鉄骨の軽量化作業。

 日によって来る人も人数もまちまちだけれど、ヴィヴィアンヌさんだけは毎日顔を出している。

 そして、夕食。

 ひよりさんとサヤさんが魚を、リゼさんが森の素材を持ってきて親方が腕を振るう。


 そんな風に忙しく一週間が過ぎようとしていた。


 ◆


「今日は休みだな」


 朝食を食べながら親方が言う。

 約束の鉄骨二千本。

 昨日、それを全て作り終えた。


「そうですね」

「後で機械をスパナに少し手入れしてもらおうと思っている。

 休み無しで動かし続けたからな」

「わかりました。

 スパナさんにはもう声は?」

「かけてある。直に来るだろう」


 ならば、セレンさんも来るだろう。

 頼まれて居たものを渡そう。


「なので今日は特に仕事は無いが、一つだけ頼まれてくれ」

「はい」

「海の方へ弁当を届ける。

 その後は好きにしてていいぞ」

「わかりました」


 大量に持ち込まれ、食べきれないままの食材を時折親方がこうして弁当として振る舞う。

 それは、開拓組には結構好評で。

 今日も喜ばれるだろう。


 やがて、スパナさんがセレンさんと共に連れ現れる。


「セレンさん。

 頼まれていた物です」


 工房に置かれたアルミの矢五百本。

 それを彼女に引き渡す。


「ありがとう」


 その一つを手に取りまじまじと観察する。

 頭の上で耳が少し動く。


 どうやら気に入ったみたいで、ヴィヴィアンヌさんから買い取ったらしい。


「試して来たらどうだい?」

「良いですか?」

「ああ。私一人でも大丈夫だから。手が必要ならノーラを使うし」

「試し打ちなら広いところが良い。海が良いだろう。

 ついでにショータと弁当を届けてくれないか?」

「わかりました」


 そう言って親方が僕に目配せをする。

 ……あ、護衛か。


 ◆


 僕とセレンさんは、町から海岸まで整備された真新しい道を通り海岸へ向かう。

 彼女は手に弓を持っている。

 自分で作ったのだという、歯車のついた機械の様な弓。

 現実のコンパウンドボウの様な形をしている。

 スパナさんが、親方に銃なんかには負けないとそう言っていた品。

 それで親方は密かに僕の銃を新しく作り直そうと企んでいるみたいだ。

 最も今までは、鉄骨作りでそれどころじゃ無かったけれど。


「銃弾、自分で作ってるのよね?」

「そうです」

「大変?」

「作りだけならそれほどでもないです。

 工房が必要ですけど」


 属性弾をするのは手間がかかるけれど。


「矢は木でも作れるから銃よりはマシよね」


 なぜか勝ち誇ったような顔をするセレンさん。


「そうですね」


 それに矢には撃った後に【回収】と言うスキルで何割かの確率で手元に戻って来る様な事が出来るらしい。

 ちょっとズルいなと思う。


 ◆


 以前、資材置き場として使われていた一角。

 山のように積まれていたピラミッドの石はもうほとんど残っておらず、代わりに運ばれた鉄骨が積まれている。


「こんにちわ」

「ん、あ、アマリの。

 こんにちわ」

「いえ、アマリさんのでは無いです」


 そのすぐ側で炊き出しの用意をしていた人、パットさんに声を掛ける。

 今日の当番はこの人か。

 本業はお菓子職人らしいのだけれど、この人の炊き出しはどういう訳か評判がよろしく無い。

 僕はそんな事はないと思うのだけれど、あまり美味しく無いと。


「どうした?」

「差し入れです」

「ああ、ありがとう。皆喜ぶな。

 所で、あの子は?」


 少し離れてこちらを見つめるセレンさん。


「スパナさんの弟子のセレンさんです」

「彼女?」

「違います」

「可愛いね」

「そうですね」

「紹介して」

「本人が嫌だと言ってました」


 事前に紹介しますよと聞いたのだけれど、結構よと言われている。

 そして、パットさんは悔しそうな顔をする。


「それでは」


 そんなパットさんに頭を下げ、セレンさんの元へ。


「さ、行きましょう」


 目的地は、ここから更に先。

 今、まさに作られている橋の先。

 そこなら弓矢の練習に丁度良いだろう。


 工事の邪魔をするモンスターを追い払えば皆喜ぶし、なにより、セレンさんがそこへ行きたいとそう言ったので。


 ◆


「凄いわね」


 海のすぐ上を鉄筋で組まれた道が一筋まっすぐに伸びている。

 周りはぐるりと海。

 こうして歩いて居ると、まるで海の上を歩いている様な気分になる。


 これを、作ろうと思い立ち、本当に成し遂げてしまう開拓組の人達の執念は本当に凄いと、そう思う。

 本人たちに言わせると、こんなものまだまだの出来で全然本意では無いらしいのだけれど。


 僕がインゴットにして、そして、軽量化の魔法をかけた鉄の塊。

 その上を歩く。


「凄いですね」


 ファントムもゆっくりと縦に揺れる


「……楽しい。

 最初話を聞いたときは、何を馬鹿な事をって思ったけど。

 皆、この光景が見えてたのね……」


 歩きながら、そう感想を漏らすセレンさん。

 少し、悔しそうに。

 でも、頬は少し紅潮している様に見えた。


「そうかも知れないですね」


 彼女の横に並んで歩きながら同意を返す。


 そろそろ水平線の先に橋の終りが見えてきた。

 そして、橋を伸ばすために工事をする人達。


 ◆


 金属を打ち合わせる音と、怒号が飛び交う橋の製造現場。

 戦場の様な喧騒だけれど、雰囲気は悪くは無い。


 僕の姿を見てか、鉄骨を担ぎ上げ怒鳴り散らしていた源さんがそれを置き寄って来る。


「よう。デートか?」

「違います!」


 笑いながら言った源さんに、喧騒に負けないような大声でセレンさんが叫び返す。


「もうすぐ完成ですね」


 海を挟んで反対側からも同じように橋をかける人達の姿。

 でも、資材の関係で冒険者の大陸からの方が長い。

 両者が繋がるまで……残り数百メートル程だろうか。

 その時がこの工事の完成。


「問題だらけだけどな」

「しばらく後ろの方で弓の練習をさせてもらいます」

「ああ。こっちに飛ばさなければ良いぞ。

 資材の運搬する奴も通るから気をつけてくれ」

「はい」

「坊主は暇か?」

「はい」


 本当は護衛なのだけれど、それをセレンさんの前で言うと気を損ねるだろう。


「なら、海中で狩りでもして来ないか?

 褌貸してやるから」

「いえ、水の中だと僕の武器は役立たずなので」

「ああ……そうか」


 おでこに手を当てる源さん。


「大変なのですか?」

「ああ。

 日に日に増えてなぁ……」

「まあ、僕ではお役に立てません。

 ごめんなさい」

「いや、変な事言って悪かったな。

 気にせず楽しんでくれ」


 海の中で、まるで工事を邪魔するかの様にモンスターが襲って来るらしい。

 ひよりさん達が毎日それを迎え撃つ護衛として海に潜って居る。


 その海に目をやると、海面下で発光。

 今も誰かが戦って居るのだろう。

 海上に木の小舟がいくつか浮かんで居るのも目に入った。

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