51 樹海の奥
真っ直ぐ。
ファントムが行く後を五人で付いて行く。
光の方へと。
日が届かず下草さえ生えていなかった樹海は、何時しか低い緑の生い茂る豊かな森へと姿を変えて居た。
行く手を阻む若木を掻き分け進む。
そして、突然視界が開けた。
木の葉の屋根が無くなり、陽の光が差し込む。
それを受け止め、反射する湖面。
癒しを求める様に湖岸で水を飲む動物達。
そして、楽しそうな笑い声。
白い薄布を身に纏った女性達が、湖の中で戯れて居た。
ファントムが黒くなって僕の目の前をフワフワと漂う。
景色が見えない。
「なんだ……ここは……?」
源さんが呟く。
「桃源郷かな?」
ガフさんがそれに答える。
「最高?」
「あんまり興味無いんだよね。残念ながら」
「同じく」
マリーさんの問いにつまらなそうに答えるガフさんと源さん。
何が桃源郷なのか確認しようにもファントムが視界を塞ぐ。
「こっちに来る様だ」
そうリゼさんが言うと、直ぐにファントムが僕の背中の方へと移動する。まるで隠れる様に。
湖の上を浮遊しながらこちらへ向かって来る一人の女性。
長い髪をなびかせ、身にまとうのは白い薄布のみ。
ただ、その顔には怒りが見える。
「あちゃ。画像撮ったのバレたかな」
「興味無いんじゃなかったの?」
「資料だよ」
「じゃ、お前が悪いと言う事で」
「このまま湖におとしちゃおう。
そうすれば綺麗な学者になって戻って来れるよ」
「それは、湖から女神が出て来る前の話だろ?」
何処までもマイペースな三人。
リゼさんが一歩前に出て僕をかばう様に立つ。
そして僕達の前まで来て、湖の上に立ち仰け反るの様な姿勢で腰に手を当てながらその女性が口を開く。
「どうやって入ったかわからぬが、ここはヴォルト様の庭にあらせられる。
人の子よ。即刻立ち去れ」
そう言って僕達を見下す様に見る。
間髪置かずにガフさんが尋ねる。
「ヴォルト……森の神か?」
「いかにも」
「と言うことは聖域とか、そう言うところな訳か」
「左様」
その声は後ろから聞こえた。
全員が一斉に振り返る。
そこに、上半身裸の男の人が立って居た。
女性と同じく見下す様な笑みを浮かべ。
僕達の方へと悠然と歩くその人へ道を譲る様に自然、左右二手に分かれる僕達。
その前を歩く男性。
僕とリゼさんを上から下まで観察しながら通り過ぎて行く。
その先で女性が片膝を付き頭を下げている。
「退屈しのぎには丁度良い。
もてなして差し上げなさい」
「かしこまりました」
女性は湖の上で、下げた頭を更に深く落とす。




