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49 三人の同行者

 森の奥に行くにつれ、魔物が強くなって行く。

 個体が大きくなるし、魔法も使うようになってくる。


「ファイヤ・ボム」


 枝の中からしわがれた声が響く。

 それと同時に地面に炎の塊が着弾。爆発。


 咄嗟に距離を取ったリゼさんとファントム。

 僕は声の主へと銃口を向ける。


 老人の顔に猫科の体。マンティコア。

 放った麻痺弾と引き換えに、サソリのような尾からこちらに毒針を飛ばしてくる。


 枝の上から飛び降り避ける。

 相手も僕を追いかけてくる。


 着地のタイミングに合わせ、ファントムがラップ音。

 そのタイミングでリゼさんの剣が振るわれる。

 続けて僕の銃弾。

 最後にリゼさんの武技アーツ

 それで、魔獣は粒子と化した。


 その勝利の余韻に浸ること無くリゼさんは直ぐに顔を上げ、森の奥を凝視する。

 そして、フッと肩の力を抜いた。


 リゼさんの視界の先にはプレイヤーの姿。


 相手がこちらに向け手を上げる。

 それに応えるリゼさん。

 僕も軽く頭を下げる。

 そこに居た三人は知った顔だった。


 源さん。

 そして、ガフさんとマリーさん。


 源さんは開拓組の知り合いで、ガフさんとマリーさんは一緒にフレアゴーレムを倒した58人のメンバーだ。


 だが、ゆっくりと挨拶をする間もなく次なる魔獣が襲い来る。


 今度は……三体。

 全部、マンティコラだ。


「「「ファイア・ボム」」」


 魔法の声が重なる。

 咄嗟にリゼさんが僕の前に出てその爆風を遮るように立ちはだかる。

 一気に減少していくリゼさんのHPバー。

 僕は彼女の影からマンティコラへと銃口を向ける。


 ◆



「ヒーラー無しだと流石に無謀だったな。

 ここまでか」


 ガフさんに回復魔法を掛けて貰いながらリゼさんが言う。


「あと一息で樹海の入り口だぞ? 一緒に行けばいいさ」

「そう言うのを無粋って言うのよ」


 軽く言った源さんにマリーさんが注意するように言う。


「無粋って……ああ、デートか」

「違う!」


 ニヤリとした源さんにリゼさんが真っ赤な顔で否定する。


「冗談抜きで付き合ってくれるなら一緒に来てほしいけどね」

「そうか。どうする? ショータ」

「僕は構いません」

「では、同道させてもらおう」

「助かるよ」


 こうして、急造の五人パーティーが結成された。


「樹海を攻略するつもりなのか?」


 リゼさんがガフさんに問う。


「まあ、謎解きくらいはしたいなと。

 どうすれば奥に入れるのか。

 そして、奥に何があるのか」

「私は草摘みついでにお付き合い」

「草摘みって、木の下とか採集ポイントですか?」


 木の下や、草むらの中に時折採集ポイントがあるのが見え気になってはいたのだ。


「そう。

 薬草が手に入れば調合して薬にできるの」

「なるほど」

「でも君、毒薬しか作らないよね?」

「失敗は成功の母。いつか誰も知らない薬のレシピを作り上げるための必要経費よ」

「それを、鍋に入れて振る舞うのは勘弁してほしいんだがな」


 源さんが苦虫を噛み潰した様な顔をする。


「みんな美味しい美味しいって涙流してたじゃない」

「地面をのたうち回って涎を垂らしながら。

 その異様な光景を高笑いしながら眺めてたのは誰だよ?」

「私とアマリね」


 一体何をしてたんだろう。

 アマリさんの名が出て一瞬、リゼさんが眉間に皺を寄せる。


「僕が正しく表現するとあの光景は地獄絵図ってのがぴったりだよ。

 傍目に楽しいと思える性的嗜好があるなら極楽浄土なのかもしれないけど」


 ガフさんは笑みを浮かべながらそう皮肉った。


「源さんは護衛役ですか?」


 リゼさんが問う。


「そうだな。

 ついでに森の中をみて伐採の計画を立てようかと」

「伐採の計画?」

「アイテムボックスに制限が出来ちまったからなぁ。

 どっから切り出してどうやって運ぶか考えないといけなくなっちまった。

 後は、木の種類が意外と豊富だからな。

 その辺のチェックも兼ねてだな」


 源さんは笑いながら答えた。

 心から、楽しそうに。


 ◆


 魔物の気配が無くなった。

 樹木は生い茂り、陽の光が届かない程に暗いのに。


「なるほどね」


 ガフさんが仮想ウインドウを開きながら独りごちる。


「どうしたんですか?」

「地図が機能してないんだ」


 リゼさんの問いに全員に見えるように仮想ウインドウを展開するガフさん。

 そのウインドウはノイズが走り、本来表示されるべき周囲の地図が映っていなかった。


「こうなると、頼りになるのは……」

「勘よね」

「そうやって人は遭難するんだよ」


 そう言ってガフさんは近くにあった木にナイフで矢印と数字を彫り込む。


「現実でこんなことしたら怒られるけど」


 そう言いながら。

 そして、紙のメモ帳を取り出しさっと何かを書く。


「時折、こうやって目印を付けていこうか」

「怪しい方に進んでいけば良いのに」


 マリーさんが口を尖らせるが、ガフさんはそれに取り合わずに進んでいく。

 時折、立ち止まり、周囲を見渡し、そして、木に目印を付けながら。


 ◆


「あれ?」


 ガフさんが木を見て立ち止まる。


「何?」

「これ」

「目印?」


 ガフさんが指を指した木の幹には矢印と1と言う数字が刻まれていた。


「僕がさっき刻み込んだ物だ」


 僕たちは奥へ奥へと進んでいた筈。


「偶然誰かがつけた似たような目印なんじゃない?」

「いや、木の配置も同じだし」

「ナイフ貸して」


 マリーさんがガフさんからナイフを受け取り、矢印の下に文字を彫る。


「夜露死苦、と」

「お前、年幾つなんだ?」


 それを見て源さんが首を捻る。


「コミックで読んだだけ!」


 ……なんて読むのだろう。

 僕以外の皆はわかっている。

 夜の……うまく翻訳出来ないな。


「なんて書いたんですか?」

「……これで、『よろしく』って読むのよ」

「へえ。ありがとうございます。勉強になりました」

「テストには出ないわよ?」


 そう言いながら僕の頭をポンと叩く。


 ガフさんはメモを見ながらさっきとは方角とは別の方角へと歩いていく。

 僕らはそれに続く。

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