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05 戦闘システム

 リゼさんを先頭に街の中を進んで行く。

 目的地は東西南北に置かれた門。僕らは一番近い南の門へと向かっている。


 そこからフィールドというところへ移動してモンスターと戦うらしい。


 たどり着いた門の先には、五十メートル程の石畳の道が街の中から続き、その先は空になって居た。

 まるで崩落でもあったかの様に、突然道が途絶えてしまっている。


<ポーン>

<リゼからパーティ申請があります。受理しますか?>


 外の様子を眺めて居ると目の前に<OK><NG>と二つ文字の並ぶウインドウが現れる。僕はリゼさんの方へ視線を向ける。


「パーティ申請送ったから、OK押して」

「はい」


 僕は言われた通り、ウインドウのOKに触れる。


「じゃ行こう!」


 リゼさんが門の外へ。

 と同時に彼女の姿が消え去る。


「え!?」


 何が起きたのかわからず思わず声が漏れてしまった。


「やー!」


 続いてひよりさんも門へと飛び込み消えた。


「ショタ君、初めて?」

「はい」

「よし、お姉さんが優しく教えてあげる。

 大丈夫。怖く無いよ。

 一緒にイこう」

「はい」


 アマリさんが僕の左手を握る。

 僕は振り返り、そこに浮かぶファントムを確認する。


「よろしくね」


 改めてそう声をかける。

 ファントムは大きく縦に揺れた。


 僕はアマリさんに手を引かれ、ゆっくりと門へと飛び込んだ。




「あれ?」


 門から出る時に、一瞬視界がホワイトアウトし、次に僕の目の飛ぶこんできたのは緑の草原。

 奥に森の様な木々の連なりが見える。

 振り返ると、先程まで居た町は無く。


「町は……?」


 僕の呟きに、アマリさんは「あそこだよ」と言いながら、真上を指差した。

 見上げると、遥か上空に何か黒いものが浮かんでいる。


「この世界は、エテルと呼ばれる空に世界、そしてテラと呼ばれる今私達が立っている地上の二つのエリアで構成されている。

 大地テラは魔獣が跋扈していて、人が住むことが出来るのはエテルに浮くイスラと呼ばれる島々。

 そんな大地テラ空島イスラを結ぶのが、このスカーライ」


 リゼさんがそう説明してくれた。

 彼女がスカーライと言って指差したのは、宝石のはめ込まれた石碑のような物。


「触るだけで一瞬で上に戻れる。

 まあ、一度訪れた空島イスラはメニューからいつでも戻れるんだけど。

 空島イスラはあそこだけで無く他にもいくつかあって、そこへと繋がる階段スカーライが何処かにある筈。

 それを見つければ新しい島へと行ける、らしい」

「βテストのときは飛空艇、空を飛ぶ船で移動できたんだけどねー」


 空を見上げながらアマリさんが付け足した。


「βテストって何ですか?」


 そう僕が尋ねる。


「正式にサービスを開始する前にユーザー数を限定してテストすることよ。

 不具合を見つけたり、より楽しめるように意見を聞いたり。

 つまり、私は他の人よりもちょっと早くこのゲームをプレイしていた訳」

「やっぱりその分有利なんですか?」


 と、ひよりさん。


「そうかも知れないし、そうじゃないかもしれない。

 その時の知識が通用しない部分も結構あるからね。

 それに、有利って言っても皆でワイワイやることに有利も何も無いんじゃないかしら?

 誰かと先を競い合って、蹴落としあっても虚しいだけよ?」


 そう言うアマリさんを何故かリゼさんが冷めた視線で眺めていた。


「さて、そろそろ行こうか。

 階段スカーライを中心に半径百メートルはセーフティエリアになって居るから突然敵に襲われたりはしないけれど、その先は危険地帯だ。

 まあ、そんなに強い敵は居ないけれど用心して行こう」

「よし! 頑張ろうね! 白玉!」


 リゼさんの呼びかけに答えたひよりさんは今まで持って居なかった槍を手にしていた。

 足元で白玉がにゃーーーーーーと鳴く。


「ショタ君は、銃が武器かな?」

「はい」

「じゃ、私といっしょに少し離れていよう。

 あの二人は敵に近づいて戦う脳筋組だから」

「脳筋?」

「ま、見てればわかるよ」


 僕はアマリさんに従い、前を行く二人と一匹から少し離れて歩き出した。

 銃を取り出して。


「ショタ君、こういうゲーム全く初めて?」

「ゲームが初めてです」

「なんと! じゃ、色々解説しよう」

「ありがとうございます」


 百メートル程歩いた所で、リゼさん、ひよりさん、そして白玉の頭の近くに緑のバーが表示される。


「そろそろ見えたかな?」

「緑のバーですか?」

「そう、それ。パーティーを組んでいる仲間同士は互いにHPを確認することが出来るんだ。

 満タンなら緑。減っていくと黄色。オレンジ、赤と変わっていく。

 それがゼロになると死んでしまいます」

「死んじゃうんですか?」

「ゲームの中だけだよ。

 だから、ゼロになる前に魔法やアイテムで回復してあげましょう」

「ゼロになってからだと駄目なんですか?」

「完全にゼロになってからだと、とても高価な蘇生アイテムが必要になるんだ。

 そのアイテムがある場合は良いけれど、ない場合は体は動かせずそこに留まることになる。

 出来るのはメニューから<帰還>を選ぶ事だけ。

 <帰還>すると最後に居た町に自動で戻る。

 でも、同時にペナルティも発生する。

 いわゆるデスペナと言う物。

 経験値を失うのと、一時間ステータスが減少してしまう。

 ステータス減少は教会に行けばお金で解消できるし、経験値はまた貯めれば良い。幸いレベルが下がることは無いみたいだし。

 とは言え、教会で結構な額のお布施を要求されるし、経験値の損失もレベルが上がると馬鹿にならない。

 なるべく死なないにこしたことは無いわけ」

「なんとなくわかりました」


「まあ、どうあっても死ぬときは死ぬからあまり深刻に考えすぎても仕方ないんだけどね」

「そういうもんですか」

「うん。

 ボスって呼ばれる、すごく強い敵が居るんだけど準備無しで行けばあっさり全滅だし、例えしっかり準備して百人近くで言っても半数が死ぬこともある。

 まあ、それはそれで壮観だけどね。

 俺の屍を乗り越えて進め! って感じで。

 実際は味方に跨がれ、爆風に飛ばされ、端にどかされて散々だけど。

 それでもボロボロになりながら仲間が勝ってくれたときは感動するよ。

 よくぞ仇を取ってくれた! って」


 僕はその光景を想像してみたけれど全く頭に浮かばなかった。


「あ、来たね」


 アマリさんが指差した先、リゼさんとひよりさんの間に大型犬くらいありそうなウザギが現れる。


「ファットラビット。この辺で一番弱い敵だね」


 僕は銃を構えるが、アマリさんが片手で銃口の先を遮る。


「まあ、まずは見ていよう。

 負ける敵じゃないから」

「はい」


 僕は素直に銃を下ろす。


「ちなみに、【識別】のスキルと持っていると敵の種類、HP、レベルなんかがわかるようになるよ」


 アマリさんの解説の間にファットラビットに向かってひよりさんが走り出す。

 そして、槍を突き出すが僅かに穂先が掠った程度。

 反撃とばかりに、ファットラビットがひよりさんに体当たりをする。

 よろけたひよりさんのHPバーが五分の一ほど減って、緑から黄色へと変わる。

 リゼさんがファットラビットに剣を振り下ろす。

 その刃がファットラビットの胴を半分切り裂いた様に見えたが、刃のすり抜けた後は血どころか傷跡すら残っていない。


「あれ? 切れて無かったですか?」


 アマリさんに疑問をぶつける。

 しかし、アマリさんはそれに答えず「まあ、見てて」というのみ。


 再び飛び上がったファットラビットにひよりさんの槍が振り下ろされ、頭に直撃する。

 地面に叩きつけられたファットラビットは砂のような粒子になって消えていってしまった。

 ひよりさんとリゼさんがハイタッチを交わした後、こちらに向かってサムズアップ。

 それに答えるアマリさん。


「今ので勝ち。

 現実と違って与えたダメージはわかりづらいのよね。

 ボスとかだと行動パターンが変化したりするけど。

 でも【識別】があればわかるけど。

 ついでにメニューからアイテムを確認してみて」


 僕は言われたとおり、「メニューオープン」と言ってから道具の袋の書かれたアイコンをタッチする。


「【ウサギの毛皮】と言うのが増えてます」

「パーティの誰かがモンスターを倒すと全員がドロップアイテムを入手できるんだよ」

「僕、何もしてませんけど」

「良いの。それで。それが、仲間」


 そう言ってアマリさんは微笑みながら僕の頭に手を置いた。

 そういう物か。

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