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40 セレンさん

「そろそろ倒したいよね」


 マグマゴーレムにリベンジを誓い、南東の洞窟へと足を進める。


 ひよりさん達と海へ行ってから三日後。

 前にマグマゴーレムに負けてから一週間。


 念の為、金の銃弾も属性がついたものを用意した。

 対マグマゴーレムとして、氷の銃弾。


 前回より、レベルも上がっている。

 行ける、とそう思う。


 洞窟の中、コウモリ型のモンスターを軽く蹴散らしながら進む。

 目指すは、最奥。


 途中、洞窟の隅で蹲っているプレイヤーが居た。


 何をしているのだろう。


 僕が目の前を通り過ぎようとすると、顔を上げる。

 目が合うけれど、相手は何も言わず。


 軽く頭を下げて、足を進める。


 突如、ファントムが行く手を遮るように僕の顔の前を飛び回る。


「どうしたの?」


 何かを知らせたい、そんな風に見える。


 ファントムは、蹲るプレイヤーの方を指し示す様な動き。


「何? あの人がどうかしたの?」


 一度縦に揺れ、そして、戻れとそう促す様な動き。


「知り合い……じゃないよね?」


 僕は踵を返す。ファントムは何がしたいのだろう。


 しゃがみこんだプレイヤーの前まで戻る。


「……何?」


 僕を見上げながらそのプレイヤー、黒髪の女の子は不機嫌そうに言った。


「いえ、よくわからないんですけど、ファントムが何か気になるみたいで」

「ファントム?」


 二人の視線が僕の横に浮かぶファントムに集まる。

 ファントムは満足そうに縦に揺れる。


「何? ほっておいてよ」

「はい」


 立ち去ろうとした僕を再びファントムが遮る。


「何なの?」


 ファントムから、少し怒っている、そんな気配がする。


「こんな所で何しているんですか?」


 仕方なしに蹲った女の子に声を掛ける。


「休憩」

「そうですか」


 ファントムを見る。

 どうも、まだ通してはくれなそうだ。


「知り合いですか?」


 そんな訳は無いと思いつつ聞いてみる。


「そんな訳ないでしょ? 何なの。貴方。ナンパ?」

「違います。僕はボスを倒しに行きたいだけです」

「……一人で?」

「二人です」


 そう言ってファントムを見上げる。


「馬鹿じゃない。たった二人で勝てるわけ無いじゃない」

「そんな事ないですよ」

「あるわよ。私がどれだけ苦戦してると思ってるの」

「僕は貴方ではありません」

「何よ! その言い方! 偉そうに!」


 その女の子が怒りの形相で立ち上がる。

 背は、僕よりちょっと高いくらい。


「だったら、一緒に行きますか?」

「は? 何でアンタ何かと?」

「そうすれば証明になります」

「勝てなかったら?」

「謝ります」


 そう答えた僕に、その女の子は口を開け目を丸くする。


「謝りますって……そんな、子供みたいな……」

「あの、何がおかしいですか?」


 この場合、何と言えばよかったのか。

 正解があるのならば知りたい。


「何と言ったらよかったですか?」


 僕の問いに眉間に皺を寄せる女の子。


「何てって……」


 僕は彼女を見つめ答えを待つ。


「そんなの……そんなの、自分で考えなさいよ! バーカ!!」


 顔を真っ赤にして、この子は怒鳴る。

 それがわからないから聞いたのだけれど。


「……本当に勝てるの?」

「恐らくは」

「私、そんなに戦うの得意じゃ無いわよ?」

「元々二人で行くつもりだったので。

 回復アイテムもまあ、それなりに余裕はあります」

「……仕方ない。一緒に行きましょう!」


 嫌なら一緒に行かなくても良いのに。

 でも、ファントムが満足そうに紫になり揺れている。


 僕は彼女へパーティ申請を送る。


<ポーン>

<セレンがパーティに加わりました>



「あ、これ着ます?」


 僕は作業着のツナギを取り出す。


 耐火性能はバッチリなので。


「……何これ?」

「作業着です」

「……いらない」


 顔をしかめながら突き返された。


「そうですか」


 まあ良いけれど。


「作業着も派手なのね」

「そうですか?」

「誰が作ってるの?」

「作業着はアランさん」

「その服は?」

「ヴィヴィアンヌさん」

「……誰よ?」

「服飾職人の師弟です。

 紹介しましょうか?」

「……貴方と一緒の服を着るわけ?

 大体、女物レデイースが作れるの?」

「そちらの方が得意みたいですよ」

「そう。そこまで言うなら会ってあげても良いわよ」


 嫌なら別に紹介する事もないけれど。

 ただ、所々に嘘を隠す仕草がある。

 多分、ボスを倒して向こうへ行きたいし、ヴィヴィアンヌさん達も紹介して欲しいのだろう。

 どうして、それを隠すのかはわからないけれど。


 ◆


「負けたわ……ね」

「……ごめんなさい。勝てませんでした」


 僕はセレンさんに頭を下げる。

 ファントムも所在無さげに揺れている。


「……謝らなくて良いわ。……貴方は頑張ってた」


 おかしいな。

 前に行った時よりもボスのHPが大分多かった。

 それに、全体攻撃も多かったし。

 また、ポーション中毒だし。


「あのボスを倒すのは、また今度にするわ」

「他の人達と一緒に行ったら良いんじゃ無いですか?」


 僕の言葉にセレンさんは何も答えず視線を逸らす。


「そう言えば、服飾職人は何処に居るの?」

「職人街です」

「案内して」

「良いですよ」


 僕はそのまま工房へ戻ろう。

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