37 危なそうなお茶
外から部屋のドアをノックする音。
「はい」
他に人が居ないので当然だが、ドアを開けると親方が立って居た。
「珍しいお茶を入れた。
少し休憩したらどうだ?」
「ありがとうございます」
手にお盆。
その上にティーセットとクッキーを乗せて居た。
部屋の隅に置かれた机の上にそのお盆を置き、そしてカップにお茶を注ぐ親方。
「ほら。美味くは無いぞ」
「いただきます」
口をつける前から独特の匂いが鼻を突く。
口に含むと仄かな苦味。
「なんです? これ」
「貰ったキノコの中にマジックマッシュルームがあってな。
そのままだと毒なので乾燥させて茶にした」
乾燥させても毒じゃ無いのかな?
「それが魔法の弾丸か」
親方は、床に置かれた弾丸を一つつまみあげる。
「良い出来じゃ無いか」
まじまじと観察した後、そう言って僕に笑顔を向ける。
「撃ってみないとわかりません」
お茶を飲み干し、そう答える。
「そうか。
ま、精進しろ。
お茶はまだあるから好きに入れて良い。
だが、一日にポット二杯までにしろ」
「どうしてですか?」
「中毒になる。なんでも幻覚が見えるとか」
肩をすくめながらそう言って親方は部屋から出て行った。
だったら、どうしてこんな不味いお茶を差し入れたのだろう。
なみなみとポットに残ったお茶を見ながら浮かんだ疑問は直ぐに消し飛んだ。
MPが回復していた。
コップ一杯のお茶で全開。
あと、コップ四杯分はある。
もう少し頑張れと言うことか。
そう思いながら僕は仮想ウインドウのスキルリストを開く。
親方の差し入れがあるとはいえ、効率が悪い。
リストを眺めながら考える。
ああ、そうか。
わからなければ聞けば良いのか。
魔法の事は……。
『どうした? ちびっ子』
「すいません。ちょっと質問があります」
アマリさんと思ったのだが、変な会話になりそうなのでエアルさんに。
『うん。えっと……プライベートな事柄以外は何でも聞いて!』
少しの戸惑いの後、嬉しそうな声に変わる。
「魔法を覚えたんですが、MPを有効的に使う方法有りませんか?」
『それなら【聡明】だね。
後、ちびっ子はもうレベル10超えてるよね?』
「はい」
『【活性化】って言うスキルも良いかもね。君には。
あと、威力を上げるなら【集中】とか、【魔力超過】かな。
逆に威力を下げて回転重視なら【魔力節約】。
【乱打】なんかもあるけどちびっ子のスタイルでは無いかな。
そう言う戦い方も面白いと思うけど』
「いっぱいあるんですね」
『可能性は無限大! でも、肝心なのは自分に合うか』
「わかりました。
試してみます。
ありがとうございました」
『役に立ったかな?』
「はい。
参考にします。
流石ですね」
『……君のその素直なところは、ホント羨ましい。
そんな訳で、また風呂入りにおいで』
「はい」
通信を切り、僕は教えられたスキルをチェックする。
アビリティ【聡明】必要SP:10
理解力が向上する
これを取得し、そして、再び弾丸作りを行ってみる。
今度は四セット出来た。
つまり、魔法に使うMPが減っている事になる。
次は、【活性化】かな。
お茶を飲みながらスキルの説明を見る。
アビリティ【活性化】必要SP:20
全身の細胞が活性化する
主な効果
全ステータス向上/自然回復力向上/被ダメージ増
あれ?
情報が増えた?
主な効果?
どうしてだろう。
……聡明のお陰?
改めて聡明の説明を確認。
アビリティ【聡明】
理解力が向上する
主な効果
消費MP減/取得情報増/魔法スキル取得経験値増
そうみたい。
便利。
そうすると、この【活性化】って、ダメージが増えるのか。
でも、その分ステータスは上がる、と。
それと、僕に必要そうなのは。
アビリティ【魔力節約】必要SP:10
魔力を抑える
主な効果
消費MP減/魔法威力減
残りのSPは20。
まずは、魔力節約かな。
取得し、再び弾丸に負荷魔法を。
<ERROR!>
あれ?
失敗?
MPは減ったけれど、弾丸は通常弾のまま。
もう一度。
<ERROR!>
もう一度。
<SUCCESS!>
三度目で出来た。
武器アイテム【通常弾(火)】銃弾/ランク:1
鉛を銅のジャケットで覆った物。
微かに火の力が付与されている。
製作者:ショータ
うーん。
ランクが下がって、説明文もちょっとだけ違う。
このスキルは合ってないかな。
仮想ウインドウで〈忘れる〉を選択。
SPが20に戻る。
そして、改めて【活性化】を取得。
……心なしか、体が軽くなった気がする。
じゃ、続きを。
四セット出来上がり、MPがちょっとだけ余裕がある。
自然回復ってこう言う事か。
再びお茶をコップに注ぐ。
そうやって、その日は各種属性の銃弾を19発作り上げた。




