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36 付与魔法

「親方、インゴット出来上がりました」

「ご苦労」


 これで今日の工房の仕事は終わり。


「釘、届けてきます」

「ああ。気をつけてな」


 隣のエリアへ釘を届けに行く。

 心なしか、開拓組の面々がまばらだったような気がする。

 知り合いへ釘を引き渡し、その足で始まりの島へと引き返す。


 目指すは、マグマゴーレム。



「て、結構大変だったね」


 前は他に五十七人の仲間が居て、僕はその最後方をついて行くだけだったけれど。

 今日は、ファントムと二人だ。


 道中、頑張って避けたけれど、それなりに攻撃は受けた。


「気をつけないと、また、中毒になっちゃうしね」


 持っているHPポーションの数には余裕があるけれど、使える数には限度がある。


「ま、ダメ元で行こうか」


 ファントムが縦に揺れる。

 それに頷きを返し、僕は洞窟の奥の広場へと入って行く。



 ◆



「ははっ。行けそうだったね」


 金の弾丸を封印して挑んで、オレンジまではHPを削った。

 結局、負けて死んでいるのだけれど。


「それにしても、強化魔法ってすごいんだね」


 ヴィヴィアンヌさんの風の魔法。

 改めて動きの違いを実感する。


 もちろん自分で取得する手もあるのだけれど。


「なんか、同じのもつまらないかなぁ?」


 そんな事を考えながら工房へ戻る。


「帰りました」

「早かったな」

「ええ、まあ」


 僕は工房の隅に座り親方の仕事を眺める。


「これを仕上げたら飯にしよう。

 ちょっと待ってろ」


 そう言って、親方は手に持った金槌を赤く焼けた鉄の塊へと振り下ろす。

 その度に鉄の塊が形を変えて行く。


 それは、まるで飴細工の様で。


「凄いですね」


 あっさりと、鉈を一つ仕上げた親方の仕事に改めて感服する。


「まあ、これぐらい訳ないさ。

 このハンマーは金属加工がしやすいように魔法の力が込められているからな」

「へー。

 道具が凄いんですね」

「その言い方は、何かおかしい気がするが、まあそういう事だ」


 そう言えばエアルさんも属性攻撃と言っていたな。


「そのハンマーってどうやって作るのですか?」

「付与魔法で属性を付与している。

 もっとも、私がやったのでは無いけれど」


 親方は、テキパキと道具を片付け始める。


 付与魔法。

 それはスキルリストにあったはず。


 それは使えるのではないかと考えながら片付けを手伝う。



 夕食はキノコパスタ。

 開拓組の人たちからどっさりといただいて、若干呆れ顔で居酒屋にでも鞍替えするかぁなどとぼやいていた物。

 しばらくはキノコ中心の夕食が続いているが、同じ献立が続かない所をみると本当に食事処にしても案外繁盛するのではないかとそんな風に思う。

 バターの風味の香るそれを食べながら付与魔法について尋ねる。


「付与魔法って銃弾にも出来るんですか?」

「出来るさ。

 使ったらそれでおしまいの銃弾にそんな手間をかける奴が居ないだけで。

 それより次を撃った方が安上がりだ。

 職人に頼むと結構な額になるしな」


 試す価値はあるかな。



 食器を洗い部屋に戻りそれを実践する事に。


 まずは【付与魔法】スキルの取得。



 魔法スキル【付与魔法】必要SP:20

 アイテムに多様な効果を付与する魔法体系



 仮想ウインドウから<付与魔法>を選択。

 使用可能なアーツが表示される。



 付与魔法【属性付与】消費MP(小)

 対象に属性を付与する

 上書き不可



 <属性付与>を選択。

 すると、リストに八つの選択肢が並ぶ。


【ファイア・アタッチ】

【アクア・アタッチ】

【アイス・アタッチ】

【ソイル・アタッチ】

【エアロ・アタッチ】

【サンダー・アタッチ】

【シャイニング・アタッチ】

【ダークネス・アタッチ】



 一番上の【ファイヤ・アタッチ】を選択。

 すると、対象アイテムを選ぶように指示が出る。

 【通常弾】を選び、実行。


<SUCCESS!>


 と言うウインドウが現れる。

 アイテムボックスから通常弾の段数が一つ減って新しいアイテムが増えた。


 武器アイテム【通常弾(火)】銃弾/ランク:2

 鉛を銅のジャケットで覆った物。

 僅かに火の力が付与されている。

 製作者:ショータ



「出来た」


 それを取り出し、親指と人差指でつまんでファントムに見えるようにかざす。

 嬉しそうに揺れるファントム。


 そうやって一通り全てを試す。



【通常弾(水)】

【通常弾(氷)】

【通常弾(土)】

【通常弾(風)】

【通常弾(雷)】

【通常弾(光)】

【通常弾(闇)】



 出来上がった八種の銃弾を床に並べてみる。


 火なら赤、氷なら青と言ったように僅かに異なる色に光が反射して見える。


 今度は先に銃弾を取り出して右手に乗せる。


「ファイア・アタッチ」


 手の上の銃弾が仄かに赤く。


 これでも結果は同じ。


 一通り試す。


「メニュー操作の方が楽かな」


 床の上に銃弾が各種二つずつ。


 再びメニューからそれぞれ一つずつ作ったところでMPが切れた。

 全種類三発ずつ。


「これは、確かに大変かな」


 親方の言う通り消耗品に使用する物では無いのかも知れない。

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