35 ピラミッドの戦利品
「おおう。珍しくお宝がある」
「あら珍しい」
先程のボス戦で全員レベルアップしたらしく、セーフティーエリアを展開しながら休憩をしていると王座を調べていたエアルさんが声を上げる。
「珍しいんですか?」
僕は振り返り、後ろから抱きつこうと構えるアマリさんに尋ねる。
その手前でファントムが彼女を牽制するように浮かぶ。
「うん。私は初めて。
ボスの戦利品はパーティ全員に同一の素材が入るくらいしか今まで無かったから。
何が有るの?」
「ちょっと待って」
王座を動かし、その下に開いた空間の中に上半身を突っ込み中から何かを取り出すエアルさん。
全員がその周りへと集まる。
王座の下の空間から出てきたもの。
金の延べ棒×50
スキルストーン(特大)×2
イクスストーン(特大)×2
「これは、山分けかな」
床に置かれたそれ等のアイテムを見下ろしながらエアルさんが言う。
それに誰からも異論は漏れず。
「じゃ、まず、希望を募ろうか。
スキルストーン」
「「はい」」
リゼさんとヴィヴィアンヌさんが手を上げる。
「イクスストーン」
「「はーい」」
これはひよりさんとアマリさん。
「じゃ、金塊は私とちびっ子かな?」
「はい」
「綺麗に分かれたね。じゃ、これで決まりにしちゃおう」
「いえーい」
「ちびっ子が金塊とか腹黒くて意外」
「銃は金食い虫。
腹黒とか言うな。
ドドメ色の癖に!」
「ドドメ色違う」
アマリさんに言い返しながらエアルさんが金塊を選り分ける。
「はい。ここを見つけたファントムの分おまけ。
無駄遣いしちゃ駄目だぞ」
そう言って、僕の方へ三十本。
「ありがとうございます」
その好意は素直に受け取ることにした。
ファントムの取り分なのだから。
「僕の分は、溶かして全部弾丸に変えます」
「ええぇ?」
「ショタ君の金の……」
「おい、姉よ」
「言わない言わない。しかし、思い切るね」
説明に寄ると、金の延べ棒が金のインゴッド12個分相当。
つまり一つで1200発分の銃弾に変わる。
二十五本で三万発。
当面は問題ない量だ。
残りの五本は、ファントムの分なので必要になるまで取っておこうと思う。
「さて、そろそろ行こうか。
今日はみんな私のお風呂に寄っていって。
サービスするから!」
そう言ったエアルさんに、しかし、賛同する人は誰ひとりとして居なかった。
◆
全員で一度、2つめのエリアの開始地点へと帰還する。
「ショータ君は工房へ戻るのよね?」
「はい」
「じゃ、一緒に帰りましょう」
そう言って仮想ウインドウを開くヴィヴィアンヌさん。
「ぬ。私も!」
何故かアマリさんが手を上げる。
「何か用事あるの?」
「無い!」
「アマリ、ちょっと」
断言したアマリさんにエアルさんが話し掛ける。
「何? 風呂は……後で行くかもしれないけれど、今は行かない」
「なんでさ、今来てよ。……それよりも」
仮想ウインドウを開くエアルさん。
そして、何かを操作。
ドンと言う大きな音とともに、地面に四角い大きな石が出現する。
「……何、これ?」
「ピラミッドの石」
「え。持ってきたの?」
「持ってきたの」
「持って来れるの?」
「持って来れたの」
「使える……わね」
「遺跡の出現パターンが分かれば……あとは人手だけ。
私は残念ながら明日から忙しいのであとお願い」
「任された!」
そう言って二人顔を見合わせ、ニヤリと笑う。
「何ですか? あれ」
呆れ顔のリゼさんに問う。
「どうせ良からぬことを思いついたのだろう……。
放っておけ」
「巻き込まれる前に逃げましょう」
「そうだな」
「ショータ君! またね!!」
笑顔で手を振るひよりさんとリゼさん。
それに手を振り返した所で視界が切り替わった。
工房に戻ると珍しく親方が不在なので、僕は設備を借りて金の弾丸を作ることにする。
とりあえず、1,200発の金製ソフトポイント弾。
その間、じっと側で待っているファントム。
「エアルさんは、一人でゴーレムを倒したんだって。すごいね。
きっと僕達でもできるよね」
溶鉱炉の灯りが僅かにファントムを赤く照らした気がした。




