34 隠し部屋
「向こうに空間がある」
二メートルほど壁を崩し、そして、小さな穴が開いた。
そこを覗き込みながらエアルさんが言う。
「よし、あと一息」
そう言ってスコップを再び壁に突き立てる。
僕はファントムを手招きして、そして、ツルハシを振り下ろす。
ほどなくして、ひと一人が通れる程の穴が開く。
その先は、先程までいた石棺の部屋と同じ様な小部屋で、テニスコートぐらいの広さがあった。
「何かあった?」
皆、休憩を終えこちらに来た。
「ショータ君、お疲れ様」
ひよりさんが、微笑みながら僕の頭に手を乗せる。
「あれは、王座かな」
部屋の中心に鎮座する石の構造物。
エアルさんの言うとおり、王座の背面にも見える。
「みんな、これだけは、先に言わせて」
エアルさんが、真剣な表情で言う。
「変なものは! 勝手に触らないで!」
「大丈夫よ」
「当たり前だ」
「そうよ」
「ねー」
エアルさんは諦め顔で溜息を一つ。
「じゃ、穴の下がミミズの住処でも驚かないように」
椅子の向こうへ回り込もうと歩きだすエアルさん。
その手には剣と盾。
僕も銃を手にそれに続く。
「ミミズだったら私は離脱する」
「私も」
「ミートゥー」
「ショタ君、私は君を抱えて逃げるからね!」
などと言いながらついてくる四人。
ファントムは、僕の頭上。定位置に。
椅子の向こうへ回り込んだエアルさんが、眉間に皺を寄せる。
それは、やはり王座で、そのそこに腰掛けていたのは黒い犬の顔を人型の化物。
上半身は裸で、金色の腰巻きを身に着けたその体は人の物。
BOSSモンスター【冥界の使い】Lv:???
その犬が、ゆっくりと目を開く。
「来るぞ!」
エアルさんが叫ぶと同時に盾を構える。
僕は即座に銃を向け、引き金を引く。
しかし、銃弾が当たる前に【冥界の使い】が動く。
「!」
気付くと、【冥界の使い】が手にした錫杖が僕の鳩尾に食い込んでいた。
そのまま振り抜いた錫杖に後方へ弾き飛ばされる。
「ショタ君!」
アマリさんが駆け寄りながら回復魔法を掛ける。
リゼさんとひよりさんが【冥界の使い】へと襲いかかる。
「早いぞ! 気をつけろ!」
エアルさんが叫びながらそれに続く。
前方二人の攻撃を錫杖で受け止めた【冥界の使い】の背後から、エアルさんの剣が伸びる。
剣先が背へ突き刺さる、その前に大きく跳躍し難を逃れる【冥界の使い】。
宙で一回転した後、王座の背もたれの上に着地し、そして僕らを見下ろしながら不敵な笑みをこぼす。
すかさず麻痺弾を撃ち込むが、レジスト表示。
思わず舌打ちが漏れる。
「続けて。状態異常は蓄積されるはず」
振り向かずにそう指示を残しエアルさんが飛びかかる。
僕は、武器を振るう三人の間から麻痺弾を撃ち込む事に専念する。
冥界の使いは、エアルさんとリゼさんの剣を錫杖で捌き、迫るひよりさんへ左手を振りかざす。
そこから黒い雷が走り、ひよりさんへ直撃する。
後ろへ跳ね飛ばされながら、左手一本でバク転をし綺麗に着地する。
再び顔を上げたひよりさんへアマリさんの回復魔法が飛んで行く。
再び地を蹴り、冥界の使いへと槍を突き立てんと飛び込んで行くひよりさん。
ファントムがラップ音で援護をするが、冥界の使いは意にも介さず。
捕らえたと思った僕の銃弾はあっさりと躱される。
完全に死角から放ったはずなのに。
振り下ろされた錫杖を剣で受け止めるリゼさん。
しかし、剣は弾かれ身に錫杖を受ける。
減ったHPが、すぐに元に戻る。
冥界の使いは、アマリさんへ視線を向ける。
死角からエアルさんが襲い掛かり、直ぐにそちらへと視線を戻す。
深追いせずに離れるエアルさん。
そんな動きを幾度となく繰り返すエアルさん。
そうか。
アマリさんに向いた注意、敵意を再び自分のもとに引き付けているのか。
後で意図を確認しよう。
そう思いながら、僕は引き金を引く。
「良し。麻痺だ!
畳み込む!」
僕の放った黄色く光る弾丸が冥界の使いへと吸い込まれた直後、その体が硬直する。
すぐさま状態異常を察知したエアルさんが叫び、それに呼応するようにリゼさんとひよりさんが武技を放ちながら飛び込む。
アマリさんとヴィヴィアンヌさんの魔法がそれに続く。
流れ弾が当たったらすいません、と心のなかで謝罪をして、魔法の光に遮られ姿を捉えることの出来ない冥界の使いへ銃口を向け弾丸の雨を御見舞する。
「散開!」
再び、エアルさんの声。
距離を取る、アマリさんとひよりさん。
冥界の使いのHPバーは赤いに近い。
しかし、その冥界の使いが激昂の叫び声を上げ、大きく錫杖を振りかざす。
直後、冥界の使いを中心に砂塵の竜巻が出現する。
それは、みるみるうちにこちらに迫りくる。
狭い室内で、逃げる場所など無く。
仮にあったとしても逃げれる速度では無かっただろう。
「ファントム! 隠れて!」
そう叫んだ直後、風と砂に飲み込まれ視界を完全に遮られる。
そして、浮き上がる体。
そのまま、後方の壁へと弾き飛ばされ叩きつけられる。
咄嗟にポーションでHPを回復して、風のおさまった室内を確認する。
全員、僕と同じ様に壁に叩きつけられた様だが死んだ人は居ない。
そして、冥界の使いの姿も見えず。
「アマリ! 上!」
エアルさんの叫び声。
壁際に身を横たえたアマリさんが上を見上げる。
錫杖を振り下ろしながら落下する冥界の使い。
既に、逃げれる距離では無かった。
甲高い金属音が木霊する。
エアルさんが、両者の間に割って入り盾で錫杖を受け止めた。
しかし、その勢いは盾を弾き飛ばし、彼女の肩へと食い込む。
HPバーが一気に赤へ。
しかし、完全にゼロになることは無く、辛うじて踏みとどまる。
「ファイヤ・ボム」
アマリさんが、エアルさんの後ろから手を伸ばし冥界の使いの鳩尾に魔法を炸裂させる。
吹き飛び、宙で一回転して着地した冥界の使い。
その着地点へあらん限りの弾丸の雨を御見舞する。
鉛の弾に貫かれながら、こちらを睨み錫杖を振り上げ、そこで、冥界の使いの動きが完全に停止する。
腹部を貫き、槍の穂先が飛び出して居た。
背後から放ったひよりさんの投槍。
それが、冥界の使いへの止めとなった。
末端から黒い粒子と化し、消えていく冥界の使い。
乾いた音を立て、ひよりさんの槍が地に落下した。
<ポーン>
<レベルアップしました!>
<【銃技】スキルがレベルアップしました!>
<【召喚】スキルがレベルアップしました!>
<【識別】スキルがレベルアップしました!>
<【採集】スキルがレベルアップしました!>
<ファントムがレベルアップしました!>
<ファントムの【霊障】スキルがレベルアップしました!>
<レベルアップしました!>
<討伐実績から【冥界の刻印】の称号を入手しました>
一気にレベルが二つ、そしてファントムも。
仮想ウインドウを開き確認する前に、満面の笑みを浮かべたひよりさんに抱きつかれてしまった。
【ショータ】プレイヤー Lv11 SP:50
スキル
【銃技】Lv2
【召喚】Lv4
【識別】Lv3
【採集】Lv3
アビリティ
【敏捷強化】
【感知】
【狙撃】
【連撃】
【二刀流】
【耐火】
装備
【ON-3】短銃/ランク3
【ON-L3】短銃/ランク3
【黒獅子革のコート(子供用)】体防具/ランク4
【黒獅子革のスーツ(子供用)】体防具/ランク2
【黒獅子革のブーツ(子供用)】靴/ランク2
【ガラスのゴーグル】眼鏡/ランク2
称号
【おねショタ】
【鍛冶屋の弟子】
【冥界の刻印】
【???】ファントム/Lv3 親密度:59
スキル
【霊障】Lv3
アビリティ
【浮遊移動】
【障害物通過】
【物理攻撃無効】
【回復無効】




