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32 ピラミッドへ

「ピラミッドだな」

「言わなくても見ればわかるわよ」


 石積みの建物の下。

 アマリさんはエアルさんに冷たく言い放つ。


「えっと、罠系のスキル持ってる人?」


 僕ら全員を見渡しながらエアルさんが問うが、反応する人はおらず。


「じゃ、私が取ろう。取り敢えず【罠発見】で良いかな」


「随分積極的ね」

「ん? 使わなければ<忘れる>でSPに戻せるし。

 私には、稼ぐ理由があって、でも時間がない。

 ここは頑張りどころだとそう思うの」

「時間が無い? 利息?」

「……明日から仕事」

「ああ。それは気づかずにすまん」

「そういう訳で、行くわよ!

 えっと、リゼちんとひよりんは後ろを警戒。

 ちびっ子は私と先頭。

 アマリとビビは真ん中。

 それで良いかな?」

「はい」


 しかし、リゼさんが手を上げ質問をする。


「ショータが前なのか?」

「多分、中は恐らく狭い通路だ。

 そうすると、銃を使うちびっ子は先頭で敵を迎え撃ったほうが良い。

 接近される前に掃討してしまうのが理想」

「そうか。危なかったら交代するからな」


 リゼさんは僕を見て笑顔でそう言った。

 一応頷き返すが、剣より銃の方が安全ではないかと思う。


「過保護だねぇ」


 エアルさんが呆れ顔で僕を見ながら呟いた。


 ◆


 細剣と、そして、左手の盾。

 攻撃は極力正面から受けず、躱し、いなす。

 それがエアルさんの戦い方。

 敵の死角から、斬りつけ、突き、そして直ぐに離れる。


 軽い戦い方。

 そう見えるのだけれど、与えているダメージ量は僕の銃弾より大きい。


「どうしてですか?」


 全身に包帯を巻きつけたミイラを倒し切ったところで彼女に疑問をぶつける。


「連撃のダメージ増と、属性攻撃」


 仮想ウインドウを操作しながらそう答えた。


「所詮はゲーム。

 ある程度はこちらが勝てる様に設計されている。

 だから、私はそれを最大限利用する」

「属性攻撃って何ですか?」

「各種属性魔法をレベル3まで上げるとその属性に対応する武技アーツが解放される。

 相手の弱点属性を纏った攻撃を与えればダメージ増」

「て言っても、敵の弱点属性と自分の持ってる攻撃属性が必ずしも一致する訳じゃないでしょ?」


 後ろからヴィヴィアンヌさんが口を挟む。


「そう。だから私は全部の属性を抑えた」

「マジで?」

「マジで」


 アマリさんが驚きの声を上げる。

 すごい事なのか。


「その方が効率的だからね」

「いや、その労力……」

「報われる事が確定しているならそんなの労力に入らないね」


 さも当然の様に言い切るエアルさん。

 僕の銃技のレベルがまだ3で、彼女はそれを6個は持っている計算だ。


「真似はしない方が良いわよ」


 そう、アマリさんが僕に言う。


「連撃って言うのは?」

「連続攻撃成功時のダメージ増。

 一人でも二回目からは1.2倍になっていく。

 二人なら、1.44かな。

 もちろん、それは二人が連撃を持ってる必要があるのだけど」

「それって、僕が両手で撃った弾が続けて当たって良いんですか?」

「良いはずだよ」

「やってみて良いですか?」

「良いよ」

「ありがとうございます」


 僕は仮想ウインドウを操作してそれを取ることにした。


「以外と親切なのね」

「いや、聞かれたら答えるよ。

 聞かれなければ教えないけど。絶対」

「良い性格してるわ」

「へへへへ」

「いや、褒めた訳じゃ無いわよ?」

「褒めて良いのに」

「その情報をお風呂場に張り出したら良いんじゃ無い?」

「お! おー……いや、それでクレームになったらもう立ち直れないし。

 実際、そうなりそうだし。

 そしたら、慰めてくれる?」

「指差して笑って上げる」


 そう言われアマリさんに歯をむき出しにして睨むエアルさん。


「エアルさんて、男の人ですよね?」


 僕はその疑問をぶつけて見る。

 エアルさんは、僕をみて、そして、小さく首をかしげる。


「……ん? そんな事、無いわよ?」


 その返答は、仕草は、まるっきり嘘のもので。


「そうですか。わかりました」


 なぜ女性のふりをしているのかは、別の機会にでも聞いてみよう。


「あのさ、多分この先アンタとこうやってパーティ組む事は無いと思うから」

「何でだよ!?

 組んでよ」


 何かを言いかけたアマリさんをエアルさんの絶叫が遮る。


「無いと思うから最後に聞いておきたいんだけど」

「いや、組んでよ。最後とか、死ぬよ?」

「アンタ、何でネカマしてんの?」


 僕の疑問はあっさりとアマリさんから投げつけられた。


「……えっと、まず、私はネカマじゃ無い。

 その上で、仮に私がネカマだとしたらの話をですが」

「まあ、どっからどうみてもネカマなのですが」

「仮に! 仮に私が男の人だとして、そのまま男のアバター。

 つまり、異性としてアマリや、君たち女性の前に現れたとしたら、こんな風に普通に話せないと思うのですよ」


 そう、恥ずかしそうに言ったエアルさんをアマリさんはジト目で見つめ、吐き捨てる。


「……思ったより! 理由がつまらない!

 思春期かよ!」

「姉よ。それ以上言うな。泣きそうだぞ?」

「……大丈夫。私は、ネカマじゃ無いから。全然堪えて無いから」


 そう言って、しかし、エアルさんはしゃがみこんでしまう。


「ごめんごめん。

 大丈夫?

 太もも触る?」


 上からアマリさんがそう優しい声をかける。


「触る!」


 ガバッと顔を上げ、満面の笑みでアマリさんを見上げるエアルさん。


「嘘だよ。バカ」

「クソ! また、騙された!」


 溜息をつきながら、リゼさんが歩き出す。

 そして、ひよりさんが僕を手招きしながらそれに続く。


 僕とヴィヴィアンヌさんは黙ってついて行くことにした。


「あ、ちょ置いてかないでよ!」


 走ってアマリさんとエアルさんが追いかけて来る。

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