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29 プレゼント

「こんにちは」


 僕は、ファントムと職人街にある一軒の店を訪れる。


「いらっしゃい。待ってたわ」


 小奇麗な作業場にヴィヴィアンヌさんが座り僕を待っていた。

 作業場の中には凝った小物がいくつも置かれており、殺風景な親方の工房とはまるで違うななどと思う。


「ああ、ノーラのとこの子か。

 ノーラは工房に居るかな?」


 奥からここの主人である、アランさんが顔を出す。


「まだ寝てるみたいです。休みなので」

「そうか。最近忙しかったみたいだからな」

「よくご存知ですね」


 ヴィヴィアンヌさんが、口元に笑みを浮かべながら言う。


「ん、まぁ、ガキの頃からの付き合いだから」

「そうですか。

 ま、そういうことにしておきましょう」


 そう言うとヴィヴィアンヌさんは仮想ウインドウを開く。


「さて、まずはショータ君の服」


 ヴィヴィアンヌさんから試着の案内が来る。

 僕はそれを受理。

 すると、僕の周りが一瞬ボケて黒い服が出現。



 防具【黒獅子革のコート(子供用)】体防具/ランク4

 黒獅子革を使用したロングコート

【耐刃(小)】【耐打(小)】

 製作者:ヴィヴィアンヌ



 着替えた僕の横でヴィヴィアンヌさんが微調整をする。


「こんなもんかしらね。

 前は閉じないほうが良いわ。

 袖も通さないで。

 まあ、通したほうがショタっ気は醸し出せるけど。

 どれだけ激しく動いても肩から外れることは無いから」


 ホルスターから銃を抜いて構える。

 裾があるのでどうかと思ったが、それほど気にならず。


「毎回、僕に銃を向けるのはどうなの?」

「あ、すいません。丁度良かったので」


 射線の先で顔を引き攣らせるアランさん。


「後は、これを首にかけて」


 アクセサリー【ガラスのゴーグル】眼鏡/ランク2

 ガラスをレンズにしたゴーグル

【視覚スキル・アビリティ効果微増】

 製作者:ヴィヴィアンヌ


「顔じゃ無いんですか?」

「効果は変わらないから首で」

「はい」


 何かこだわりがあるのだろう。


「良いね。それ。僕のツナギにもぴったりだ」

「その辺は抜かりなく」


 鏡に映った自分の姿。

 まるでゲームのキャラクターだ。

 ……あながち間違いでも無いのか。


「どうかな?」


 そう問いかけたファントムは、赤くなり僕の周りを楽しそうに飛び回る。


「それと、もう1つの頼まれ物も」

「ありがとうございます」


 依頼して居た品を全て受け取り支払いを済ませる。


「さ、行こうか。

 師匠、留守番よろしくお願いしますわ」

「いや、僕も出かけるよ。多分」

「あら、頑張って下さいまし」


 ヴィヴィアンヌさんはニヤリと笑いながらアランさんに手を振り作業場から出て行く。

 僕も一礼して、ヴィヴィアンヌさんに続く。



 ◆◆◆◆◆


「納品か?」


 建物の建造が続く町を歩いていると、木こりだと言うプレイヤーが話しかけて来る。

 名はオウル。

 とても木を切るとは思えない大きな斧を肩に担いで居る。


「今日は日曜なので休みです」

「あ、今日は日曜か。そうか」

「こちら的にと、世の中的にも日曜ですよ」


 額に手を当て、天を仰ぐオウルさんにヴィヴィアンヌさんが笑いながら言う。


「まあ、関係無いけどな!」


 そう言いながら森の方へと歩いて行く。


 親方の手伝いでここに釘を納品に来る様になって知り合いが増えた。

 最初は子供だと珍しがって居る様子だったのだが、僕が彼らの仕事道具を運んでいる関係ですっかり同士だと、そんな風に認識される様になった。

 それは釘であり、金槌であり、さっきオウルさんが持って居た斧であり。

 全て親方の仕事だが、インゴットにしたのは僕だ。


 おかげで未だに金の弾丸が作れて居ない。

 工房が休みの今日の夜にでも少し作ろうかと思って居る。


「あ、居たわね」


 ヴィヴィアンヌさんが通りに立つ二人組、リゼさんとひよりさんを見つける。

 向こうもこちらに気付き手を振る。


「ショータ君、似合うね!」


 開口一番、ひよりさんが僕の格好を褒める。


「当然よ!」


 それに答えるのはヴィヴィアンヌさん。


「あの、ひよりさん。これ白玉にプレゼントです」

「え?」


 彼女の足の下に居る白玉。

 ヴィヴィアンヌさんに作ってもらった首輪。



 アクセサリー【革のチョーカー】首輪/ランク3

 ラピスラズリのはめ込まれた小さな首輪

【取得経験値増加(小)】

 製作者:ヴィヴィアンヌ



「どうして?」

「この前勝てたのは白玉のお陰ですから」


 ひよりさんは足元の白玉をじっと見つめる。

 そして顔を上げ、満面の笑みを浮かべる。


「ありがと!」


 そう言って両手で首輪を受取るひよりさん。


「今度、ファントムにも何かお返ししないとね」


 視線を上げ、笑顔でそうファントムに語りかける。


「でも、ファントムは何も装備出来なそうなんですよね」

「そうなの? 残念」


 見上げたファントムが微かに縦に揺れる。


「でもいつか出来るよ!」

「はい」


 ファントムは嬉しそうに縦に揺れる。

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