28 宝石職人
あとは、細かい話になるからと親方に退席を促され僕は工房の外へ。
戻ったら連絡をくれると言っていたヴィヴィアンヌさんから連絡が無いので暫く職人街をぶらつく。
「おお! ちびっ子!」
突然声を掛けられる。
そこに居たのは茶色い革のエプロンを着けた男性。
多分、今日一緒にボスの所まで行った人だ。
「君も戻って来たのか」
「ええ。仕事があるので」
「僕もだ。
僕はカルテ。
宝石職人だ。見習いだけど」
「ショータです。
鍛冶屋の弟子ですが、鍛治になるつもりはありません」
「そうかそうか!」
カルテさんは明るい笑い声を上げる。
「宝石職人って何する人ですか?」
「宝石の原石を削るんだよ。
宝石はね、ちゃんとカットして、磨けば磨くほど綺麗になる!
女性と一緒だね!」
「そうなんですか」
「そうさ!
そして、そんな宝石はすべからく女性を魅了する!
僕の夢を聞きたいかい?
ちびっ子!」
あまり興味は無い。
だが、断る前にカルテさんは続ける。
「こう、片手いっぱいに宝石を掴んでだね」
そう言ってカルテさんは、右手で何かを鷲掴みにする様な仕草をする。
「それを!
思いっきり女性にぶつける!!」
そう言って思いっきり右腕を振り抜く。
「ぶつける?」
「そう。
そうするとどうなると思う?」
どうなるだろう。
宝石をぶつけられて。
ひよりさんは、多分涙目になってこちらを睨む気がする。
リゼさんは激怒するだろう。
ヴィヴィアンヌさんは、魔法で防ぐだろうか。
アマリさん……考えるのは止そう。
いずれにせよ、あまり面白い事にはならなそうだ。
「どうなるんですか?」
「素敵! 抱いて!!
と、こうなる訳だ!」
ならないと思う。
「そうですか?」
「そう! なるんだよ!
そうやって、次々に宝石で殴りつけて行くのが僕の夢だ!」
「そうですか。頑張って下さい」
「ああ!」
世の中には色んな人が居るのだな。
「ところで、宝石の原石を手に入れたのですが」
「ほう。何の宝石だい?」
「ラピスラズリです」
「良いよね! ラピスラズリ! 適度に固い!」
「えっと、これなんですけど加工とか出来るんですか?」
「ふむ。
ちょっと小さいけど、品質は良いね。
加工、しようか?」
「お願いできますか?
お幾らくらい?」
「あー、今日助けてもらったから良いよ。
そんなに大変じゃ無いし。
それに、夢を分かち合った同士だしね!」
分かち合ってはいないと思うのだけれど。
「明日には出来るよ。
でも、装飾品にするには別の職人に頼みな。
僕は、石にしか興味が無いから!」
「わかりました。
よろしくお願いします」
「承った!」
こうして、また一人、変な人がフレンドリストに追加された。
友達、選んだ方が良いのかな。
ヴィヴィアンヌさんに明日、改めて連絡するとメッセージを送り僕は工房へ戻った。
「ショータ。
あの子を嫁にするのは反対だぞ?」
帰るなり開口一番、親方が言う。
「いや、しません」
「そうか。
晩御飯はシチューだ。
その後……風呂に……一緒に……」
「どうしました? 親方」
「いや、何でも無い!
明日から忙しくなるぞ!」
「はい」
◆◆◆◆◆
「おはよう」
翌日、ログインした僕は真っ先に仮想ウインドウから召喚のメニューを選び、ファントムを呼び出した。
そして、普段と変わらずふわふわと漂うファントムへ挨拶。
「昨日は何とか勝てたよ。
君のお陰だ」
そう言うと、微かに縦に揺れる。
「でも、次は一緒に勝ちたい」
今度は少し紫に。
「それから新しいエリアに行ったよ。
一緒に見て回ろう」
縦に揺れる。
「とても大きなお風呂があったんだ。
一緒に行こう」
そう言うと、真っ赤になって横に揺れる。
「でも、今日から親方の手伝いで忙しなるらしいんだ。
釘をいっぱい作るんだって。
さて、まずは掃除だね。
行こう」
そう言ってファントムと共に工房へと下りて行く。
◆
工房には既に、鉄鉱石の山が出来て居てそれをインゴットにして行くのが僕の役割となった。
ひとまず三十本。
それが終わったら釘を隣のエリアまで届けに行く。
戻って、親方の手伝い。
そんな風に毎日忙しく過ぎた。
隣のエリアは日に日に人が増え、そして、少しずつ建物も出来上がって行く。
そんな感じで四日程。
ほとんどインゴットづくりだけしかしていないけれど、僕のレベルは2つほど上がった。
【ショータ】プレイヤー Lv9 SP:40
スキル
【銃技】Lv1
【召喚】Lv3
【識別】Lv2
【採集】Lv2
アビリティ
【敏捷強化】
【感知】
【狙撃】
【二刀流】
【耐火】
装備
【ON-3】短銃/ランク3
【ON-L3】短銃/ランク3
【耐熱服】体防具/ランク5
【黒獅子革のブーツ(子供用)】靴/ランク2
称号
【おねショタ】
【鍛冶屋の弟子】




