25 特異体・フレアゴーレム③
やがて、金の弾を撃ち尽くす。
もう百発、いや出来る限り用意しておけば良かった。
麻痺弾を叩き込みながら何度も何度もリロードしてゴーレムを撃った。
フレアゴーレムの残りのHPは僅かとなったところで、再び動き始める気配。
既にMPは空っぽで、麻痺弾も使えない。
そろそろ十分経つ。
その首にしがみついて、ゴーレムの頭、人ならこめかみに相当する所へ銃口を密着させ何度も銃弾を叩き込む。
動き始めたゴーレム。
こいつが倒れるのが先か、それともゴーレムの攻撃が先か。
ゴーレムは両手で地を叩いた。
間に合わなかった。
そう思った僕の視界の中で、炎は僕の下のゴーレムへと吸い込まれて行く。
ダメージは、無い。
そして、炎が消え去る。
フレアゴーレムのHPはオレンジまで戻った。
「……安全地帯、あったじゃんね……」
それに気付くには、少し遅かったけれど。
「ショータ!」
リゼさんが飛び込んで来た。
早いね。
随分と。
「お待たせ!」
ヴィヴィアンヌさん。
それから、次々に入って来るプレイヤーの皆さん。
僕のMPが回復する。
そして、幾つも魔法が包み込み体が軽くなる。
「下がれ! HPは回復は出来ない!」
「はい」
フレアゴーレムから離れると同時にリゼさんの剣が振り下ろされる。
僕は下がりながら麻痺弾を打ち込む。
動きを止めたフレアゴーレムにプレイヤー達の攻撃が一斉に降り注ぐ。
剣が、槍が、斧が。
炎が、雷が、氷が。
その凄まじい攻撃は、身動きの取れないフレアゴーレムのHPを確実に削って行く。
僕も彼らの隙間から銃弾を叩き込む。
このまま次の範囲攻撃の前に倒せそうだ。
僕一人と比べ手数が圧倒的に多い。
何より士気が高い。
そう思えた。
「凄いですね」
下がりながら、姿の見えたヴィヴィアンヌさんへ近寄り素直にそう感想を伝える。
「君の頑張りがあったからね」
「僕の?」
……一緒に頑張ったパートナーはでも、もう居ない。
「そ。だから君は最後まで立ってなさい。
はい。私の後ろに隠れて」
「大丈夫ですよ」
「駄目」
そう言って僕の前に出て、風の盾を貼るヴィヴィアンヌさん。
僕は大人しくその後ろに居ることにした。
そんな僕の側に、そっと白玉が駆け寄ってきたので掴み上げて肩に乗せる。
やがて麻痺弾の効果が切れ、フレアゴーレムが再び動き出す。
しかし、HPバーは赤。
残り僅か。
大きく腕を振り回すが、それを恐れもせずに皆飛び込んで行く。
何人か吹き飛ばされているが、顔は笑っている。
こちらに石飛礫が飛び来るが、ヴィヴィアンヌさんの風がそれを撃ち落とす。
そして、一人の女性戦士が仲間の頭を踏み台にして跳躍し、フレアゴーレムの脳天からメイスの一撃を叩き込んだ瞬間、フレアゴーレムのHPバーが弾け飛んだ。
直後、全身から赤い光を放ち、そして、粒子になり巨体は消えて行った。
〈ポーン〉
〈エリアボス・フレアゴーレムを退治しました〉
そう音声が響き、直後に周囲から歓声が上がる。
<新たな世界への扉が開きます>
<戦士たちに祝福あれ>
その言葉の後に、僕達の戦っていた広間の奥の壁が光ってそこにポッカリと通路が現れる。
そして、周りに白い光が溢れる。
その光は、人型へと変わり、やがて、倒されたプレイヤーへと変わっていく。
「白玉ぁ!!」
その光の中から、絶叫を上げひよりさんが僕に走り寄ってくる。
そして、僕ごと白玉を抱きしめる。
「偉かったね。頑張ったね。
ショータ君も。ショータ君もすごかったよ」
そう言った、ひよりさんは泣き声で。
でも彼女にきつく抱きしめられ、僕は顔を上げることすら出来ず。
取り合えず、苦しい。
ひよりさんの胸から開放されると、今度は周りの人達からもみくちゃにされる。
頭をグシャグシャに撫でられ、大きな人に担ぎ上げられ……。
でも、皆笑顔で、こういうのも悪くないなと思った。
◆
「じゃ、情報は共有させてもらっちゃうね。
君に変な迷惑なかからない様には気をつけるけど、ま、保証はしないよ」
「はい」
「じゃねー。ショータ君。今度おねーさんと遊ぼーねー」
「はい」
そう言って、最後のパーティーが出て行った。
僕の見つけた範囲攻撃の回避方法、壁に穴を開ける方法とゴーレムの上に乗る方法。
それは共有したほうが喜ばれると言われ、それならとおまかせしてしまうことにした。
やり方も分からないし。
ボスを倒した広間でレイドは解散となり、一組ずつ外へと出て行く。
真っ先に行ったのは林豪さんの所で、僕たちは結局最後になってしまった。
それには理由があって、何故か僕とフレンドになりたいと言う人達が結構居て、そういう人達と順番に話をしていたから。
最後に出て行った彼らもそう言う人達。
「面倒なフレが居たら遠慮せずに削除して良いからな」
そうリゼさんが言ってくる。
最初にここに入ってきたのが、五十八人。
最後まで残ったのが、四十二人。
そして、僕にフレンド申請してきたのが二十二人。
多くて、誰が誰だが覚えきれないくらいだ。
「さて。他に人がいなくなったので私達から幾つか聞いても良いか」
「ええ」
「言いたくないことは言わなくていいから」
「そんな事は無いですよ」
◆
「何というか、まあ金で殴ったようなものだな」
消耗品と言うには高価な金の弾丸と、明らかに場違いに高性能なアランさんのツナギの耐火性能。
それが勝因だろうとリゼさんとヴィヴィアンヌさんは言った。
もちろん、僕とファントム、白玉の頑張りは当然だけれど、と前置きして。
「リゼさんたちが戻ってこれなかったら無理でしたよ」
後一発受ければ死んでいた。
そんな彼らもレベル×1,000Gの費用をそれぞれ負担してステータス異常を回復した上で駆けつけたのだと言う。
「急いだからな」
「ひよりが急かしたからね」
僕達の戦いぶりは逐一ひよりさんが二人に伝えていたそうだ。
「だって、見てるだけでしんどかったんだもん。
次は、倒されない様にする!」
そう白玉の脇を持って掲げるひよりさん。
それに答え鳴く白玉。
「さて、そろそろ次のエリアへ行こうか。出口も落ち着いただろう」
「そうね」
「楽しみー!」
出現した通路を進みそこにある石碑、スカーライに触れると次のエリアへと到着らしい。
立ち上がった三人に続き、最後尾から付いていく。
いつも頭の上に漂っていたファントムの姿が無い。
もう一度召喚するためには六時間待たねばならない。
僕はそれが少し、寂しいと、そう思った。
「出た」
「長かった」
「おお」
洞窟から出ると、そこは深い森。
辺りを見渡す僕に音もなく近寄る人影。
それに気付いた時には既に僕の間近で。
避ける間もなく、強い力で拘束される。
「ショタ君!!
ようこそ!!
待った!!! 長かった!! 何度助けに行こうと思ったか!!!!」
アマリさんだ。
今度はアマリさんに捕まり、枕の様な胸を押し付けられる。
こうして僕は次のエリアへと足を踏み入れた。




