24 特異体・フレアゴーレム②
ひとまずポーションでHPを回復。
『クソ、死んだ!』
『おい! どう言うことだよ!』
『突っ込めって言ったじゃないか!』
一斉に非難の声が上がる。
『特異体だから行動パターンが違うんだろ!
そんな事分かるわけないじゃないか!』
林豪さんが声を上げるがその姿は見えず。
「HP、回復しちゃってるね」
さっき、僕の弾丸で赤に変わったフレアゴーレムのHPは黄色に戻って居た。
『ショータ、生き残ったか』
「はい」
リゼさんだ。
周囲を見渡しその姿を探すが……。
「皆さんは?」
『駄目』
『私も』
ヴィヴィアンヌさんとひよりさん。
他の生き残りは十人に満たなそうだ。
『白玉は?』
「後ろに居ますよ」
穴の中で無事なのを確認。
そして、ファントムを呼ぶ。
「手伝ってくれるかな?」
ファントムが縦に揺れる。
直後、フレアゴーレムが手で床をえぐり、こちらに向け岩の塊を飛ばす攻撃を放つ。
跳躍して避ける。
「ははっ。こんなに飛べる」
身軽、すごい。
上から両手の銃を向ける。
当たったのは一発だけ。
でも、HPは削った。
こうやって戦っていればいつかは終わるはず。
着地した僕の体を誰かの魔法が包み込む。
「多少当たっても大丈夫!」
「ありがとうございます」
僕に狙いを定めたフレアゴーレムの死角に、そして他の人を攻撃に巻き込まない様に回り込む。
ファントムのラップ音で動きを止めたその瞬間、弱点へと銃弾を叩き込む。
そうやって、動きながら攻撃を繰り返す。
小さく噴き出る炎や、飛び来る石飛礫をもらうことはあったけれど、仲間の人がHPを回復してくれた。
そうやって、フレアゴーレムのHPがオレンジになった時だ。
両手を大地に叩きつける。
再び、床が赤く。
「ファントム、逃げて」
そう指示を出し、攻撃に備える。
そして、三度目の炎。
ポーションでHPを回復する。
また、人が減った。
そして。
「回復してんじゃんね」
また、フレアゴーレムのHPが黄緑まで戻って居る。
『何やってんだよ!
さっさと仕留めろよ!』
雑音の中から一際大きな林豪さんの叱責。
そう言われても。
「ファントム。あれ、やってみようか」
なんとか避難して、再び僕のところに戻って来たファントムにそう声をかける。
ファントムはゆっくり縦に揺れる。
「じゃ、行こう」
飛び行くファントムと反対方向へと走り出す。
先程と同じ様に動き回りながら攻撃を繰り返す。
体が少しずつ重くなって来た。
『バフが切れたわ』
ヴィヴィアンヌさんの声。
なるほど。
そう言う事か。
フレアゴーレムが再び、両手を叩きつける仕草。
しかし、それは両手を振り下ろそうとした所で硬直する。
行けるかな。
あ、駄目だ。
すぐに硬直を解いたフレアゴーレムの腕が地を叩き、僕は炎に包まれる。
そして、再び回復する相手。
「えーっと、どうすればいいんですか?」
堪らず問いかける。
『自分で考えろよ!』
林豪さんの声。
『よく頑張った。諦めていいぞ』
『ああ。無理ゲーだ』
そう言う意見。
そして。
『は、ふざけんな! 特異体だぞ。どんだけレアかわかってないだろう!
死んでも倒せ!』
そんな意見の林豪さん。
あと、試して無いのは何だろう。
あ、武技か。
『ショータ。このまま三十分耐えられるか?』
と、リゼさん。
「三十分ですか。
まあ、行けると思います」
『良し。帰還して、再び戻る。それまで耐えてくれ』
「了解です」
『マジかよ』
『無駄になるぞ』
『うるさい! これ以上、仲間が一人戦ってるのを指をくわえて眺めて居られるか!』
『そうね。ショータ君、すぐ戻るわ』
「はい」
『私も!』
「ひよりさんは駄目です」
『ふぇ?』
「まだ、白玉も戦ってます」
穴の中でじっとこちらの様子を伺って居る。
石飛礫が飛んで来た。
一つ避け損なう。
ポーションを。
『ショータ君!』
「すいません。集中します。
通信、切ります」
『すぐ戻る!』
通信をオフにする間際にリゼさんの言葉だけ飛び込んで来た。
「さて、じゃ持久戦だね」
再び寄って来たファントムが縦に震える。
と言ってもやる事は変わらず。
避けて撃つ。
それだけ。
両腕が届く様な距離には決して近づかない。
怖い攻撃は、範囲攻撃だけ。
その範囲攻撃は、僕の予想が確かなら十分に一度。
つまり、あと三度は耐えないとならない。
無駄撃ちせずに行こう。
そう思いながら、武技を試してみる。
アーツ【麻痺弾】
放たれた弾丸は僅かに黄色の射線を描き、フレアゴーレムに突き刺さる。
〈レジスト〉
と表示。
「効かないじゃんね」
あるいは弱点を撃ち抜かないと駄目なのか。
考える一瞬が隙になる。
飛び来る石飛礫を避け切れず。
減ったHPをポーションで。
……しかし、回復するはずのHPバーはピクリともせず。
何だろう。
再びポーションを。
〈ポーション中毒!〉
そう言う表示。
僅かに減るHP。
調べて居る余裕は無いけれど、これはピンチだ。
攻撃を受け続ける余裕がなくなった訳で。
再び地を叩きつけようとするフレアゴーレム。
ファントムの金縛りが、それを一瞬止める。
耐えれるだろうかね。
しかし、次いでぼくの体が動かなくなる。
そして、ファントムが僕の所へと飛び来る。
隠れなきゃ駄目だよ。
その言葉は発せられず。
ファントムが僕の足元へ。
一瞬、周囲の空気が冷たくなる。
そして、炎。
本当ならば、HPがゼロになるだけの攻撃。
でも、それが消えた時、僕はまだ地に立って居た。
「ファントム……?」
呼びかけに応える姿は無い。
僕のHPはオレンジ。
思ったよりも減って居ない。
でも。
「ファントム!」
代わりにパートナーが居なくなった。
僕の足元へと飛んで行ったファントム。
視界の隅で、HPバーが砕け散るのを確かに見た。
その最後に居た場所を見つめる。
「ニャッ!」
白玉の声。
我に返り、顔を上げる。
こちらに攻撃を仕掛けようとして居たフレアゴーレムの注意が白玉へと向かう。
咄嗟に銃を向ける。
放たれた弾丸はフレアゴーレムの体表に弾かれる。
白玉が穴から飛び出し、フレアゴーレムの股の下をくぐり抜けながら逃げ回る。
僕は狙いを定め、武技を放つ。
弱点へと吸い込まれて行った黄色い銃弾。
フレアゴーレムが崩れる様にうつ伏せに地に倒れこむ。
僕はゆっくりと、それに近づき足をかけ背中に乗る。
そして、銃を下に向け続けざまに引き金を引く。
次は耐えれないだろうしファントムの助けも無い。
これで、仕留めなければならなくなった。
そんな事と関係なく、僕はただただ、その岩の塊へと銃弾を撃ち付けたかったのだけれど。




