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20 海

 南東に白い砂浜があり、プレイヤーに人気らしい。

 ヴィヴィアンヌさん曰く。


 ただ、今日向かうのはそこより北にある岩場。


 途中、新たな銃の具合を確かめながら進む。


 うん。


 良い感じ。


「君とパーティ組むと楽で良いわね」


 ヴィヴィアンヌさんは戦闘中何もしていない。

 敵が近寄る前に僕が二丁拳銃で葬っているから。


「そう言えば、モンスターの素材が結構あるですけど」

「買い取るわよ」


 僕はヴィヴィアンヌさんに言われるままに素材のリストを見せる。


「あら。白獅子の皮」

「珍しいですか?」

「それなりに。それよりは黒獅子の皮が欲しいけれど」

「そうなんですか」

「君のジャケットを作るのよ」

「僕のですか?」

「そう。

 あの服に合うように」


 ちなみに僕はまだつなぎ姿のまま。

 そのままの方が面白いからと。


「纏めて15,000Gでどう?

 あと、おまけもつけるわ」

「それで良いです。

 おまけってなんですか?」

「それは、後のお楽しみ」


 そう言ってニヤリと笑うヴィヴィアンヌさん。


 少し、嫌な予感がした。


 ◆


「ひよりー。釣れるー?」


 ヴィヴィアンヌさんが大声で手を振りながら波打ち際に立つひよりさんに声をかける。


 ひよりさんは振り返らずに左手の親指を立てて応える。


「来たか。

 久しぶりだな。ショータ」


 少し離れてリザさんが白玉と戯れていた。


「何だ、その格好」

「鍛冶屋のお姉さんに弟子入りした見たいよ」

「……流石だな」


 何が流石なのだろう。


「ひよりさんは何してるんですか?」

「釣り。白玉の餌を取ってる」

「あれ? 少し大きくなりました?」

「よく食うからな」


 リザさんから渡され抱きかかえると、ふた回り程大きくなった気がする。


 ファントムを見上げる。


「君は変わらないね」


 ファントムは微かに揺れる。

 食べないからかな。


「ショータ。今レベルはいくつだ?」

「6です」

「それよりは、強いわよ」


 僕の答えにヴィヴィアンヌさんのフォローが入る。

 リザさんはヴィヴィアンヌさんの方を向いて問いかける。


「ほう。どう思う?」

「足を引っ張る事は無いと思うわ」

「そうか」


 そして、僕の方を見る。


「実はな、明日エリアボスの討伐に行こうと計画している。

 一緒に行くか?」

「行きます」


 こう言うチャンスは生かすべきだ。

 60人がかりの相手に僕とファントムだけで勝てる訳は無いのだから。


「じゃ詳細は後で送る。

 まあ、他のパーティも強者揃い見たいだから、自分の身を守ることに専念すれば良い」

「はい。

 頑張ろうね」


 そう声をかけたファントムは、縦に揺れる。


「そう言えばショータ君は採集とか持ってるのかな?」

「持ってますよ」

「じゃ私と水辺を歩いてこようか。

 貝殻とか落ちてるのよ。

 集めるの手伝って」

「わかりました」


 僕とヴィヴィアンヌさんは波打ち際まで歩いて行く。

 その後からリザさんがついてくる。


「しごかれたりしていないか?」

「親方にですか? 大丈夫ですよ」

「親方、か」


 その言い方が面白かったのか、声を出して笑うリゼさん。


「私のお師匠さんのアランさん。

 あの鍛冶屋さんと幼馴染らしいのよ」


 小さな貝殻を拾い上げながらヴィヴィアンヌさんが言う。


「ノーラさんです」

「ノーラさんって言うのね」

「幼馴染とか、そんな細かい設定まであるのか」

「あるみたいよ」

「アランさんって何でクネクネ歩くんですか?」


 僕の疑問に、ヴィヴィアンヌさんとリゼさんが声を上げ笑う。


 波の中に光が見えた。


 それを拾い上げて見ると、透明なガラスの瓶。

 中身は空。


「それ、頂戴」

「こんなのも要るのですか?」

「ガラスは何かと使えるのよ。

 ショータ君に何か作っても良いわよ」

「ガラスでですか?」


 何が作れるのだろう。


「来たぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ひよりさんの大声が聞こえ、みんな一斉にそちらを見る。

 少し体を後ろにそらし、竿が大きくしなって居た。


 そして、ひよりさんは僕の身長程もあるマグロを釣り上げた。


「取ったどー!」


 僕達は彼女の側に。


「凄い!」

「え、ショータ君? うそ。来てたの?」

「はい」

「すっかり海の女ね」

「だってみんな誘っても遊んでくれないだもん」

「すいません」

「私は付き合ってただろうが」

「私は服を作ってのよ」

「ショータ君は何してたの?

 ペンキ屋さん?」

「鉱石掘ってました」

「宝石取れた!?」

「いえ。金ぐらいですね」

「金!」

「南東の荒野か?」

「そうです」

「変な事は無かったか?」

「MPKって言うんですか? それにやられました」

「やっぱりか」

「良いですね。あれ。敵が勝手にいっぱい寄って来て」


 その僕の答えに何とも微妙そうな顔をするリゼさん。


「そうか。うん。まあ、そう言う捉え方もできるか」

「と言う事はショータ君にお願いすれば貴金属を調達してもらえるのね?」

「金と銅しか発掘場所知りませんけど、必要ならインゴットにしますよ」

「それなら今度お願いするわ」


 そう言ってウインクするヴィヴィアンヌさん。


 リゼさんの腕の中で白玉がニャーーーーと鳴く。


「おお、ごめんごめん。お腹すいたよね。

 今、捌くからね!」


 ◆


 釣り上げたマグロをひよりさんが解体して、リゼさんが調理する傍ら、白玉の餌を作る。


「ひよりさん、服素敵ですね」


 ヴィヴィアンヌさんが作ったのだろう。

 腰を絞ったドレス。

 釣りをしたり、戦ったりする格好には見えないのだけれど、それは僕のスーツも同じだ。


「う、うん。

 ありがと」


 ひよりさんは、僕の方を見たあと顔を赤くし足元でマグロの水煮を食べる白玉に視線を戻す。


「さらっと口から出て来るあたり末恐ろしいわね」

「流石だな」


 ヴィヴィアンヌさんとリゼさんがそう口々に言う。


 何が流石なのか。


「次は、ショータ君に武器を作ってもらおうかな」


 再び僕を見てひよりさんが言う。

 少し、笑みを浮かべながら。


「いえ、僕は鍛冶をやるつもりはないです。

 武器なら親方に作れるか聞いておきましょうか?」


 僕の言葉にひよりさんが顔を引き攣らせる。


「まだまだ、子供ね」


 それを見て、そして僕の方を向いてヴィヴィアンヌさんがおかしそうに呟いた。


 ◆


「うりぁ!」


 リゼさんが全身のバネを使い跳躍。


「ウインドシールド!」

「またか!?」


 高い打点からリゼさんの手がしなやかに弾き飛ばしたビーチボールは相手の陣地へ入る前にヴィヴィアンヌさんの魔法に弾かれ僕達の陣地へと落ちる。


「魔法は、禁止にしないか?」

「そうしたら、私達に勝ち目がないじゃない」


 マグロを食べ終わった僕達は場所を移し、砂浜へとやって来た。

 何をするのかと思ったら水着に着替え、海水浴。

 そして、浜遊び。

 ヴィヴィアンヌさんが言っていた素材買取のおまけって水着の事だった。


 僕とリゼさん対ひよりさんとヴィヴィアンヌさんのビーチバレー。

 と言っても、僕はほとんど役立たず。

 リゼさんが一人でボールを拾い、トスを上げ、アタックまでしている。


 そんなリゼさんの奮闘虚しく、ヴィヴィアンヌさんの魔法とひよりさんのコンビに一点も取れず。


 白玉とファントムはパラソルの下で戯れて居る。


 次は何をするのだろう。


 ◆


 彫刻の様な砂の城をヴィヴィアンヌさんが作り上げ、その上に白玉が飛び乗って台無しにする。


 そんな様子を僕とひよりさんは城にトンネルを掘りながら眺めて居た。


「ショータ君、ファントム、レベル上がった?」

「はい。2になりました」

「ショータ君が幾つの時?」

「4の時ですね」

「私は5の時だった。

 やっぱり成長遅いみたい」

「僕は気にしてません」


 パラソルの下に避難して居るファントムの方を見ながら答える。

 その下でリゼさんが


「私も。

 でもね、召喚のスキルレベルが上がるとその辺を調整できる様になるんだって」

「へー。

 それは、楽しみですね」

「ねー。

 だから、明日は頑張ろうね!」

「はい」


 そう言って笑うひよりさんの所へ白玉が飛び乗って来る。

 少しは懐いたのかな。

 それとも、こっちの城を崩しに来たのかな。

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