表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/127

18 鍛冶屋の弟子

「こんにちは」


 北西の荒野で崖を掘る人に挨拶。

 昨日も居た人だ。


「やあ、昨日も会ったね」

「はい」

「昨日は大丈夫だった?」


 ツルハシを振る手を止め、問い掛けてくる。


「昨日?」


 どう言う事だろう。

 おそらくは何気なく言ったであろうその言葉に僕は足を止める。


「何の事ですか?」

「いや、昨日MPKモンスタープレイヤーキルに襲われただろ?」

「MPK? モンスターの集団のことですか?」

「そう。そうか、わからないか」

「ええ」

「あれは、プレイヤーが人為的にモンスターを集めてけしかけたんだよ」

「人為的に?」

「僕は土煙を見て早々に逃げ帰ったけど」

「それは、何か利益があるのですか?」

「さあ? 

 愉快犯か、それとも金狙いかな。

 どっちにせよ迷惑な輩だ」


 そう言う連中も居るのか。


「分かりました。

 気をつけます」


 そう言って頭を下げる僕に軽く手を上げ彼は再び崖に向かいツルハシを振り下ろす。


 そして、彼からたっぷりと離れた所で僕もツルハシを振る。


 やっぱり今日より光がわかりやすい。

 考えられるのは、狙撃の効果かな。


 ◆


「なんとも言えない充実感があるね」


 掘り起こされた崖の後を見ながらファントムにそう語りかける。


「君みたいに、空を漂うのも楽しそうだけれど」


 そう言えば、メーアが空を飛ぶ自転車を持っていたっけ。

 ……ああ、あれは夢だ。


「さて、続きをやろうか」


 ひよりさんの誘いにごめんなさいも返したし。


 僕は再び崖に向かう。


 そうやって、崖を切り崩して行くだけの僕にファントムが突如警告を発する。


 振り返ると土煙。


「やっぱり今日も来たね」


 さて、昨日と比べてどうだろう。

 新しい銃との二刀流。そして狙撃。

 その力を確認するには良い機会。


 ◆


「なかなか良いコンビだと思うんだけど」


 町の入り口でそうファントムに語りかける。

 しかし、ファントムに黒くなり横に震える。


 僕は結局死んでしまったけれど、昨日の倍くらいは倒したはず。

 そのおかげでレベルも上がったし。


 ファントムが足を止め、僕が弱点を狙撃して行く。

 弱点を外す事も少なくないけれど、絶え間なく火を噴く二つの銃は敵にダメージを与え続ける。


 最初の日に戦ったライオン。

 あれの白いヤツも混じって居て、それなりに強敵だったけれどちゃんと対処出来た。


 その結果、HPポーションと弾丸は底をついたけれど。


「さあ、女鍛治さんのところへ行こうか」


 クエストを終わらせ、弾丸を買う。

 そして、銃を注文する。


 今日はやる事が多いね。


 ◆


「戻りました」

「ああ、おかえり。

 掘れたか?」

「ええ」


 僕は掘って来た分の素材を床に出す。


【銅鉱石】×4

【鉛鉱石】×5

【鉄鉱石】×67

【石炭】×39

【金鉱石】×1


「……ひとまず依頼は完了だな。

 丁度新しいツルハシを打ったからそれをやろう」


<ポーン>

<クエストが完了しました>



「ところでどうして金が有るんだ?」


 女鍛治さんは呆れた顔で言う。


「同じ銃をもう一つ作って下さい」

「何?」

「ああ、でも弾が無いか」


 素材全て引き取ってもらって銃の加工費と同じくらいの計算だから。


「お前、何しにここへ来たか覚えて無いのか?」

「弾を作りにです」

「なら、弾は自分で作れば良いだろう。

 叩き込んでやる」

「お願いします」


<ポーン>

<称号【鍛冶屋の弟子】を手に入れました>


 あれ。

 弟子になる気は無かったのだけれど。

 ……まあ、良いか。


「そう言えば名前を聞いてなかったな。

 私はノーラ・オヴェット。

 ここはオヴェット工房だ。

 ようこそ」

「ショータです」


 彼女の差し出す手を握り返す。


「その召喚獣の名は?」

「まだわかりません」

「そうか。

 よろしく。名無しくん」


 ファントムが小さく震える。


「まずは……着替えるか。ちょっと待ってろ」


 そう言って彼女は上の居住スペースへと上って行き、服を手に戻って来る。


「私が子供の時に来てたヤツなんだが、まあ大丈夫だろう」


 それは、少し汚れはあるけれどきちんと折りたたまれた作業着だった。


「ありがとうございます。

 ノーラさん」

「違う」

「これからはおねえ……おね…………お…………親方、親方と呼べ」

「はい。親方」

「……よし。では上で着替えて来い」

「はい」


 と言って居住スペースに上がるけれど、着替えてって言っても仮想ウインドウで一瞬なんだよね。


「着替えました」

「サイズはどうだ?」

「丁度良いです」

「では早速、鉱石の精製から始めるか。

 こっちへ来い」

「はい。親方」


 歩き出した彼女について工房の隅へ。

 そこには樽の上に洗面器を置いた様な、そんな器具が置かれており、陽炎が上がっている様子から相当な熱を持っているのだとわかる。


「これが溶鉱炉だ。

 まあ、見ての通り年代物で石炭をくべて熱が下がらない様に気を払う必要がある」


 そう言って、親方は手袋をして樽の上についた扉を開ける。

 中は真っ赤に燃え上がって居た。


「そして、ここに鉱石を入れる」


 そう言って親方は炉の扉を閉め、上部の蓋を開ける。


「すると、溶けて下から出て来る。

 それを、この濾し器付きインゴットケースに入れる」


 そう言って指差したのは、溶鉱炉の下にある漏斗の先の様なところと、その下、金床の上に置かれた荒い網の突いた長方形の陶磁器の箱。


「すると、不純物が取り除かれたインゴットが出来上がる」

「……え」


 たったそれだけ?

 ……いや、ゲームだから良いのか。


「ただ、年代物だから自動で温度が調整される様な機能は無い。

 低くなりすぎない様に気をつけろ。

 あと、火傷にも注意しろ」

「はい」

「ではやってみろ」

「はい。親方」


 僕は鉛鉱石を一つ手に取り、溶鉱炉の上に放り投げる様に投入する。


 そして、しばらく待つと下から銀色の液体が出て来てケースに溜まる。

 不純物は、その手前の網で漉されている様だ。


「何度か繰り返せばそれだけ純度が高くなるのだが、弾丸なら一回で充分だ」

「はい。親方」

「次は銅だな。石炭をくべて炉の温度を1100度まで上げろ」

「はい。親方」


 言われた通り、炉の扉を開け小さなスコップで石炭を放り込んで行く。


 その後、銅鉱石を放り込みインゴットケースに流し込む。



 こうして、鉛と銅のインゴットが完成した。



 素材アイテム【鉛のインゴット】

 素材アイテム【銅のインゴット】



「次はこれを成形する」

「はい。親方」


 親方が二つのインゴットを親方の背より大きな機械へセットする。

 そして、大きなレバーを下げる。

 すると機械の歯車が回り出し、リズミカルな音を立て始める。

 機械の中へと吸い込まれて行くインゴット。

 振動と音から機械の中は高速で動いて居るのだろうとわかる。


 そして、乾いた音を立てながら銅で皮膜された銃弾が機械の下から出て来て、そこに置いてある木箱の中へと転がって行く。


「これで完成だ。

 これも年代物だ。圧力が低くならない様に気をつけろ」

「はい。親方」


 あっさりと完成した。


「インゴット二つで通常弾が100発作れる。

 残り、作ってみろ」

「はい。親方」


 僕は、銅鉱石と鉛鉱石を三つずつインゴットにして、そして、それを銃弾へと変えて行く。


 計400発の銃弾は、僕の給料変わりだと、全て譲り受けた。

 買い取ると言ったのだが、弟子から金を取る親方が何処に居ると言って首を縦には振らなかった。


「よし。そしたら鉄のインゴットを三つ作れ。

 一人で出来るな?」

「はい。親方」

「温度は1600度まで上げろ。

 火傷に気をつけろ」

「はい。親方」

「私は上に居る。

 終わったら今日の仕事は終わりだ。

 炉の火を落として上がってこい」

「はい。親方」


 言われた通り、炉の温度を上げ鉄をインゴットにして行く。



「流石に暑いね」


 本当に1600度なんてあったらこんなものでは無いのだろうけれど。

 何とかならないかと思って調べたら【耐火】と言うアビリティがあったので取得したら幾分かマシになった。


「それでも、暑いよね」


 するとファントムが下りて来て、僕と炉の間に入り込む。

 一瞬、涼しい風が顔に当たり暑さがわずかに和らぐ。


「はは。すごいや。ありがとう」


 これは、寒気さむけとか、そういうやつなのかな。


 ◆


「親方、インゴット出来ました。

 炉の火も落としてあります」

「そうか。

 こっちも出来た」


 そう言ってテーブルに皿を置く親方。

 晩御飯か。


「さあ、食べよう」

「いえ、毎日ご馳走になるわけには」

「お前は弟子だ。

 弟子なら食べて行くべきだ」


 どういう理屈だろうか。


「わかりました」


 今日の献立は、ステーキ見たいだ。


 歯ごたえのある肉だったけれど、美味しい肉だった。


「銃は使ったのか?」

「はい」

「どうだった?」

「癖がなくて扱いやすいです。

 なので、もう一つ欲しいです。

 リロードの弾数が違うと何かと不便で」

「ん? 二丁持ちのスタイルか?」

「ええ」

「珍しいな」

「僕もそう思います」

「そうか。わかった。

 明日作ってやろう」

「ありがとうございます」


 僕は食後に出されたアイスティーを飲み干し立ち上がる。

 そろそろ宿へ戻ろう。

 しかし、そんな僕に親方が言う。


「お前の部屋は三階だ。

 ちょっと物が置いてあるが、明日片付けるから今日は我慢してくれ」

「……はい?」


 部屋をお願いした覚えなど無いのだけれど。


「お前は弟子だろう。

 毎朝早い。

 宿にいるよりはここに居てもらった方がこちらとしても都合が良い。

 幸い、私一人しか居ないから部屋は余っている」

「しかし」

「何か問題が?」

「いや、そう言う訳では無いですが……僕は鍛冶屋になるつもりはありませんよ?」

「ああ。私も誰かにここを継がせる気は無い」


 なら良いか。

 好意に甘えここを利用させて貰おう。


「わかりました。

 では、暫くお世話になります」

「ああ」


 ◆


 親方に案内された部屋は、宿で借りて居た部屋とさほど広さは変わらず。


 しかし、ログアウトするだけなのだからどんな広さであれ問題ない。


「じゃ、また明日」


 そうファントムに声をかけベッドへ体を横たえる。


 ◆


【ショータ】プレイヤー Lv6 SP:10


 スキル

【銃技】Lv1

【召喚】Lv2

【識別】Lv1

【採集】Lv1


 アビリティ

【敏捷強化】

【感知】

【狙撃】

【二刀流】

【耐火】


 装備

【ON-3】短銃/ランク3

【ハンドガン】短銃/ランク1

【黒獅子革のスーツ(子供用)】体防具/ランク2

【黒獅子革のブーツ(子供用)】靴/ランク2


 称号

【おねショタ】

【鍛冶屋の弟子】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ