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02 召喚

<ポーン>


 電子音が聞こえた。


<メッセージが届いています>


 次いで、メーアによく似た声。


 さっき教えられた通り、「メニューオープン」と口にする。

 慣れれば手のジェスチャーや、視点の動きだけでメニューを開く事が出来る様だけど。


 封筒マークの書かれたアイコンの所に赤く①と言うマークが付いて居る。

 宙に浮いたそのマークに指を触れる。

 すると、さらにウインドウが開く。


 ◆


 【チュートリアルクエスト】


 ようこそ!

 より深くゲームをお楽しみ頂く為にチュートリアルへご招待します。


 召喚スキルを手に入れたあなたは今日から召喚師。

 先輩から召喚のなんたるかを学びましょう!


<召喚師チュートリアルを受ける>

<他のチュートリアルを受ける>


 ◆


 僕は迷わず受けるに触れた。


<ポーン>


 再び電子音。


<クエストを受注しました>


 今度はウインドウの中で、紙に文字が書かれた様な意匠のアイコンに赤のマークが付く。

 それを確認。


 ◆


 クエスト【召喚士の心得】


 【始まりの町:バス】に居る、大召喚師サーシャに会いに行き、召喚師の心得を学ぼう。


 期限:-

 報酬:召喚石


 ◆


 メッセージには、目的地の地図が付いていて、そして、中心が僕の位置らしかった。


 地図に従い、石造りの街並みを進んで行く。

 階段が多く、何の施設かわからないが巨大な歯車のついた建造物もちらほらと見受けられる。

 そんな建造物からは決まって煙が立ち上る高い煙突が付いて居た。


 そして、幾人か僕と同じ様な地味な服を着たプレイヤーの姿が見える。


 女性二人組が、多分僕に手を振って居たので小さく頭を下げて会釈する。

 何か変な所でもあったのか、笑いながら何処かへと行ってしまった。


 やがて、五分程で目的の建物へと辿り着く。


 そこは、鉄でできた、人の手と鱗が付いた爬虫類の手が握手をして居る、そんな看板のかかった家だった。


 木の扉を二回ノックする。


「はーい、どうぞー」


 中から招かれる声に従い、ドアノブに手をかけ扉を開ける。


「失礼します」


 と、扉を開けると、小さなカウンターにウサギの耳を付けた女性が座って居た。

 その前まで言って、果たして何と事情を説明したら良いのかとふと考える。

 そんな僕の様子にそのウサギの人少し笑みをこぼす。


「メーアの紹介かな?」

「はい。そうです」

「だよね。ちょっと待っててね」


 そう言って彼女は奥の部屋へと引っ込んで行く。

 ややあって、「大丈夫だって」と言いながら戻って来る。


「あっちの部屋。

 他にお客さんがいるんだけど、その人が良いって言うから。

 良かったね」

「ありがとうございます」


 僕は頭を下げ、言われた部屋の扉をノックして開く。


 中には長い髪の三十代くらいの女性。

 ゆったりとしたローブを身にまとって居る。

 この人が、サーシャさんだろう。

 その前で椅子に座りこちらを振り返って居るのはピンクの髪の女性。十代半ば。高校生くらいに見える。僕と同じ様な服。同じチュートリアルなのだろう。


 サーシャさんがその人の横に置かれた椅子を手で指し示す。


「失礼します。

 無理に割り込みをさせていただいた様でありがとうございます」


 二人にそう言ってから、椅子に腰を下ろす。

 ピンクの人が、目を丸くして僕を見る。

 何か失礼があっただろうか。


「はい。それでは、ひよりさんとそれから……」

「ショータです」

「ショータさん。お二人にこれから召喚術の何たるかをお教えします」

「はい。先生!」

「……はい」


 ひよりさんが返事をして元気に右手を上げる。

 僕も一拍遅れそれに続く。手は上げなかったけれど。


「まず、召喚獣とはただのモンスターの使役、所謂いわゆるテイムとは少し異なります。

 召喚石と呼ばれる魔力の篭ったアイテムを触媒として、貴方がたと共に戦うパートナーを呼び出します。

 パートナーはともに戦うことで、貴方がたと共に強く成長していきます。

 そうして行くことで、親密度と呼ばれるステータスが向上していくのです。

 この親密度が低いうちは、貴方がたの思う通りの行動を取ってくれないかもしれません。

 召喚獣は種族や個体によって様々な個性があります。そして、貴方の強さや日頃の接し方なども関係してきます。

 まあ、難しく考えず、共に戦い共に楽しめば自ずと親密になっていくでしょう。

 必要なのは召喚獣に対する、愛なのです」


 最期は両手を広げ、天を仰ぎながらサーシャさん講釈は終了した。


 パチパチパチと大げさにひよりさんが拍手をするので僕も同じ様にする。

 するとひよりさんは僕を見て、ニコリと笑う。


「では、お二人にコレを差し上げます」


 サーシャさんが七色に光る、不思議な石を手のひらに乗せ差し出すサーシャさん。


「おおお! ……これは?」


 驚きの声を上げながらその宝石を受け取り、そして確認するひよりさん。


「これが召喚石です。お二人に差し上げます」

「おおおおお!! ありがとうございまっす!!」


 両手で受け取り頭上へと掲げるひよりさん。


「ありがとうございます」


 僕もそれを受け取る。


<ポーン>

<クエスト【召喚士の心得】が完了しました>


「おお!!」


 僕と同じ声が聞こえたのか、ひよりさんが三度驚きの声を上げる。

 ……にぎやかな人だな。


「先生! ここで召喚しても良いですか!?」

「構いませんよ。是非」

「やった!」

「召喚石に祈りながらサモンモンスターと唱えるのです」

「はい!」


 ひよりさんが椅子から立ち上がり、目を閉じて召喚石を両手で胸に抱きしめる。


「さあおいで。

 私と契約して、一緒にお月見をしよう。

 サモンモンスター!!」


 その言葉と同時に召喚石が光り、そしてひよりさんの手を離れ宙に浮く。

 そして、光が弾ける。


「おぉ!」


 その石を見つめるひよりさんの横顔は花が咲いた様な笑顔。

 直後、目を見開き、そして、とても悲しそうに顔を歪める。

 それは、でも、ほんの一瞬の出来事ですぐに取り繕う様に笑う。


 ひよりさんの視線の先、頭上には薄っすらと青く燃える火の玉が浮いていた。


「ファントムね」


 そのサーシャさんの説明に、わずかにひよりさんの顔がひきつる。

 それに気付いたのか、ひよりさんの頭上のファントムの炎が弱々しくなったように見えた。


 歓迎されていない。

 それは僕にも分かった。


「ショータさんは?」


 サーシャさんがそのファントムへなだめるように手を差し出しながら僕に聞いてきた。

 僕は手の中の召喚石を一度見て、そしてサーシャさんに返事をする。


「やります」


 何が現れるかわからないようなのでここでサーシャさんに見てもらったほうが良い。


「サモンモンスター」


 僕は、手の上の召喚石を見つめながら呟くように言った。

 召喚石が光り、浮き上がる。


『ウルトラ…レアァ! ヘイッ!!』


 突然頭のなかに、リズミカルに大声が鳴り響く。

 びっくりして肩が跳ね上がると同時に手の上に、白い毛玉が落ちてきた。


「おおおぉぉぉぉぉ!!」


 ひよりさんが今日一番の大声を上げ、僕と毛玉がビクッとする。

 手の中に居たのは、小さな猫だった。


「タイガーね」


 サーシャさんが猫の頭を撫でながらそう教えてくれる。


「私にも抱っこさせて!」


 ひよりさんが両手を差し出してきたので、タイガーを渡すととても嬉しそうに顔をすり寄せる。


 その上で、所在無げに漂うファントムはより一層、薄くなって見えた。

 手を伸ばすと、ファントムが一瞬戸惑った様な仕草をしてから僕の方へよって来る。


 意志は、通じる様だ。


「あの、交換しませんか?」


 僕は、ひよりさんにそう提案した。

 猫だと、現実のペットと大差が無い気がしたしそれならファントムの方が人間っぽいと、そう思った。


「え、でも……」


 ひよりさんは目を丸くして僕を見た後、サーシャさんの方を見る。


「二人が良いと思うんだったら良いんじゃないかしら。相性も悪くないと思うわ」

「君も、良いかな?」


 そうファントムに問い掛ける。

 すると、ファントムは一瞬、仄かに紫色になった後、僕の周りを飛び回り始めた。


「うれしそうね」


 そうサーシャさんが説明する。

 そうか。喜んでいるのか。


 それに釣られ、猫もひよりさんの手から僕の方へと飛び乗って来る。

 そして、僕の頭の上でそのファントムで遊び始めたみたいだ。


「本当に良いの?」

「はい」

「ありがとう!」


 僕の頭から猫を取り上げ抱きかかえるひよりさん。

 その腕の中で暴れる猫。

 相性、悪そうに見える。

 でも、猫ってそういう物なのかな。


「じゃ、君の名前を決めないとね」


 そう猫に話しかけるひよりさん。


 名前、か。


「君も名前とかあるのかな?」


 ファントムに問い掛けると、答えるように青く揺らめく。

 何か言ったのだろうか。

 サーシャさんを見ると、首を横に振りながら答えてくれる。


「貴方が、もっとその子と仲良くなって、そして、その子がもっと強くなったら、いつかわかる時が来るかもしれないわね」

「そうか。じゃ、その時に教えてもらおう。

 僕は、ショータ。よろしくおねがいします」


<ポーン>

<召喚獣【ファントム】と契約しました>


 こうして、僕はパートナーを手に入れた。


「ヨッシ! 君は『白玉しらたま』だ!」


 猫の両脇に手を入れ抱え上げながら、ひよりさんが元気に言った。

 ニャーーーーーと長い、ともすれば嫌そうにも聞こえる鳴き声を猫は返したけれど、ひよりさんは満面の笑みだった。

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