17 二丁拳銃スタイル
「おはようございます」
翌日、改めて工房を訪れる。
「ああ、来たか」
女鍛治さんは、汗だくで首からタオルを掛けていた。
「丁度良い。
これ、どう思う?」
そう言って手渡された銃。
武器【ON-3】短銃/ランク3
職人が作った品
最大八連射
製作者:ノーラ・オヴェット
手に取り、握り込んで感触を確かめる。
「甘いですね」
悪くは無いけれど、昨日の銃に比べ細部の作りが甘い。
そう思った。
「だろうな。
それは、昨日の持って来た鉄鉱石から私が作った物だ」
「あれから?」
「使う気も起きないか?」
僕はその銃をかざし、引き金を引いてみる。
重さは、気にならない。
「そんな事はありません」
「そうか。
それと弾二百。
昨日の石と交換でどうだろうか?」
「内訳は?」
「その銃の加工費が8000G。
材料費分は持ち込みという事で差し引く。
残り6000Gは全て弾で払う。
これで、全ての昨日持ち込んだ金鉱石含め等価だろう」
「弾が多くないですか?
120発相当ですよね」
「それは売値だろ?
卸値ならそんなもんだ」
僕は少し考え答えを出す。
「3000G出すので、弾を百追加してください」
昨日手に入ったモンスター素材で即納出来る依頼を冒険者ギルドで請けて4000G程になった。
うち、1000GはHPの回復アイテムである【HPポーション】を五個購入して消えた。
「ちゃっかりしている」
そう言いながら笑顔を見せる女鍛冶さん。
取引は成立だ。
「では、ツルハシを借りていきます」
「南東の洞窟に行け。
そこなら両方手に入る」
初めて具体的なアドバイスが。
しかし、急にどうして?
彼女は疑問を込めた視線を向ける僕から目を逸し、宙を見る。
「昨日見せた銃は、死んだ親父が作ったものだ。
親父が急死して、この工房は閑古鳥。
それは、でも、私が女だから。だから、もうどうしようもない。
そう、思っていた。いや、決めつけていた。
でも、それは甘えだ。
女とかそれ以前に私の腕もまだまだで、子供に現を抜かし呆けている場合じゃない」
そう、独白し僕に視線を戻す。
「工房を動かすにも人手が必要だ。
お前、弟子になるんだろ?
いつまでも穴掘りなんかさせておく余裕はないんだよ」
「いや、鍛冶屋になるつもりは無いです」
「そこは、嘘でも頑張りますとか言うところじゃないか?
……所詮は子供か」
女鍛冶さんは眉間を押さえ、俯いて首を横に振る。
「では、南東の洞窟へ行ってきます」
「モンスターは強いから用心しろ」
「わかりました」
◆
「何だか色々あるんだね」
僕はフィールドを歩きながらファントムにそう声をかける。
プログラムされた存在であるNPCの女鍛冶さんに背景と言うか、過去の様な物が存在していた。
行動原理は、NPCそれぞれに存在するのかもしれない。
「君も、何かあるんだろうね」
だって、ひよりさんの事で怒っていたから。
そう語りかけたファントムは、少し小さくなって、そして暗い色へ変色する。
「いつか聞かせてね」
そう言った後で、僕は見落としていた事実に気付く。
よく考えたら、霊体な訳で、だとすると、既に死んでしまっている事になる。
「どうやって死んだのかを」
そう付け加える。
幽霊って無念の存在らしいから、ひょっとしたら殺されたのかな。
殺されたと自覚したのは、殺される前?
それとも殺されてから?
それは、どんな気持ちだったのだろう。
恨み?
悲しみ?
僕が再び見上げたファントムは小さく揺れていた。
◆
「中は明るいんだね」
岩肌が剥き出しの洞窟。
陽の光は届かない筈なのに中は見通しが効く。
「じゃ、行こうか」
なだらかに傾斜した道をゆっくりと下りていく。
するとすぐに耳につく泣き声。
上か。
現れたのは【ブラッドバット】。
デカイコウモリ。
女鍛冶さんから受け取った銃で応戦。
最初に貰ったものより僅かに弾速が早い。
その分、威力も。
「でも、相手も強いんだね」
その銃の弾を五発打ち込んでやっと倒せる。
「ちゃんと弱点を狙わなきゃ無駄玉ばかり増えちゃうや」
不規則に動く相手で容易いことでは無いけれど。
ただ、銃が変わって少しタイミングを捉えやすくはなったかな。
◆
「なんだ。簡単じゃん」
洞窟を少し進んで、僕はアビリティを一つ取ることにした。
アビリティ【狙撃】
狙い撃つ事に長ける能力
結果、どうなったかと言うと敵の弱点の範囲が広がった。
それは、つまり狙いをつける時間が僅かに緩和され余程の事がなければ弱点を外さない攻撃が出来るようになった。
「で、一難さってまた一難って言うんだっけ?」
今度はまとめて敵が現れる。
コウモリが三匹。
それと、【デビルリザード】と言う黒いトカゲ。
それから【ファングラット】。こちらはデカイ鼠。これが……六匹。
先制してファントムがラップ音を仕掛ける。
動きを止めたのはコウモリだけ。
僕は近い敵から狙いをつけ、引き金を引いて行く。
◆
<ポーン>
システム音。
<レベルアップしました!>
モンスターの集団を倒しきった所でレベルが上がる。
でも、SPは後回しで良いかな。
それよりHPを回復しないと。
「やっぱり、リロードのタイミングが隙になるね」
【HPポーション】を使って回復しながら戦いを振り返る。
こちらが攻撃の手を止める瞬間に襲われる事が多い。
ファントムは頑張ってくれたのだけれど。
「何か、手を考えたほうが良いね」
そう言いながら、僕は再び足を進める。
発掘ポイントはちっとも見当たらない。
◆
「なるほどね」
僕は新しいスキルの効果を実感し独りごちる。
アビリティ【二刀流】
両手で違う武器を扱う能力
リロードの隙を補うためにこれを選んでみた。
単純に両手に銃を持つだけでも良いのだけれど、僅かに左手に持った銃の威力と精度が落ちるような感覚があった。
しかし、このアビリティでその違和感は解消された。
さらに、こうすると左手でも【銃技】を使えるらしい。
と言っても【銃技】、全然使ってないね。
二丁拳銃なんて、現実だと愚の骨頂だと思うけれど。
「様になってるかな?」
上に居るファントムに問いかける。
ファントムは、一瞬赤く燃え縦に揺れる。
しかし、こうすると銃のリロード間隔の違いが気になるようになる。
女鍛冶さんにもう一丁作ってもらおうかな。
◆
「ああ、ここかな」
ついに発掘ポイントを見つけた。
洞窟の一番奥。
足元には他の人が既に壁を掘り返したのか岩がゴロゴロとしている。
「じゃ、警戒お願い」
そうファントムに声を掛け、ツルハシを取り出す。
昨日より、強く光って見える洞窟内の採掘ポイント目掛け、全身でツルハシを打ち付ける。
壁がえぐれ、地に鉱石が転がる。
素材アイテム【鉛鉱石】
「早いな」
早速一つ。
その後も黙々と掘り進める。
奥から採掘ポイントが現れ、その度に鉱石が手に入る。
敵が現れると、すぐにファントムが知らせてくれる。
あっさりと。
一時間もしないうちに目的の数は手に入った。
「まだ、時間は有るね」
そうしたら、今度は昨日の荒野へ行こうと決めた。
あそこで、鉄鉱石と石炭を掘り出して、銃をもう一丁作ってもらおう。




