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112 ルナフィーナ

 

 僕は、赤いレンガ造りの家が立ち並ぶ広場に立っていた。


「サモン・モンスター


 まず、そう口にする。

 目の前に、スッと青い青く燃える小さな火の玉が現れ、そして、すぐに真っ赤になって僕の顔へとぶつかってくる。


「……久しぶり」


 目と鼻の先を飛び回るファントムにそう声をかける。

 運営から言い渡された、ログイン禁止30日。

 それが明けて、僕らは再会した。

 メッセージが沢山届いて居るけれど、その確認は後回しにしてまずは森の町へ向かおう。


 やっぱり、体の感覚が現実とは違う。

 再び馴染ませるように、思い出す様に。

 一歩ずつ向かおう。


 いつもしていたように、ファントムへ手を伸ばし撫でる仕草をする。


 そして、町を歩き、門から地上へ。


「あれ?」


 視界が切り替わると同時に見た事の無い景色。

 前は緑の草原へと移動した筈。

 始まりの町からの転移先……変わったのかな。


 煉瓦造りの大きな建物。

 そして……古めかしいデザインの街灯。


 仮装ウインドウを確認する。

 やっぱり始まりの島だ。


 という事は僕の居ない一ヶ月の間に出来た建物。

 僕の他のプレイヤーが何人もその建物の中へと入って行く。


「なにが出来たんだろうね?」


 そう、ファントムに問いかけながら僕も近づいて行く。


 建物の入り口に扉は無くて大きく開け放たれて居る。


 すごいや。

 四階建てで五百メートルくらいの横幅がありそうな赤煉瓦の建物。

 このゲームで一番大きな建物かもしれない。

 上を見上げながら中へ。


「待っていたわ。鉄朗」


 ホール見たいな、高い天井を見上げる僕は不意に声をかけられるまで、その人に気づかなかった。


「……アマリさん?」

「私はメーテル」


 アマリさんそっくりの、長い睫毛の女性。

 黒いファーのコートと帽子をかぶって居る。

 とても澄ました表情を浮かべ。


「……いや、アマリさんですよね?」

「ショタ君!」


 再度確認した途端、破顔して僕に飛びついて来る。

 そしてそのまま枕の様な胸を顔に押し付けられる。


「おかえり! 待ってた! 転移で飛んで無くて本当に良かった!

 何人にチラ見された事か!!」


 柔らかい毛皮だな。

 ヴィヴィアンヌさんが作ったであろうその服の感触にそんな風に思う。


「お久しぶりです」

「うん。久しぶり」

「ここは、何なのですか?」

「ここはね、駅だよ!

 蒸気機関車の。

 はい!」


 アマリさんは僕に小さな紙切れを差し出してきた。


「これは?」


 長方形の厚紙。

 表に『始まりの島←→森の町』と文字が書いてある。


「これが切符!

 これで汽車に乗るんだよ!」

「これで?」

「さあ行こう。

 もうじき発車の時刻だ」


 そう言って、アマリさんは僕の手を引いて歩き出す。


 改札に人がいて、その人に切符を渡すとカチンと小気味の良い金属音を響かせ切符の一部を切り取り再び戻される。


「それを、降りる時に渡すんだよ」


 まじまじと観察する僕にアマリさんが教えてくれる。

 そして、鼻歌を口ずさむアマリさんに引かれ駅のホームで真っ白な蒸気を上げる機関車へ乗り込む。


「……すごい」


 木目調の観光列車の様な車内。


「これを一緒に作ったクランのこだわりが半端ないからね」


 アマリさんが通路を進み、四人が向かい合わせに座るシートに腰を下ろす。

 その向かいに僕。

 窓の外は、始まりの島の草原。


「その所為でみんな大変だったんだけど」


 そう言ったアマリさんの口振り台詞とは裏腹に少し愉しげで。


「みんな?」

「機関車が走ると言うことは、当然それを走らせる道、つまり線路が必要なの。

 その線路って主に何で出来ていると思う?」

「……鉄ですか?」

「そう!

 オヴェット工房は、また昼夜問わずに大回転!」


 ……よかった。

 ということは、工房は直り親方も無事なのだ。


「結構、お弟子さん増えたよ。

 まあ、一段落してスキルもお金も溜まって卒業していく人もちらほらって感じだけど。

 ショタ君に変わって私も少しお手伝いを」

「ありがとうございます」

「銃弾をたくさん作ったから、君に上げる。

 金の。

 ショタ君に金の玉を!」


 そうアマリさんが叫ぶと同時に、甲高い汽笛の音が鳴る。


「口には出さないけれどノーラさんは君を心配している。

 だから、元気な姿を見せてあげて」

「はい」


 もちろん、そのつもりだ。

 でも、今の話を聞いて僕の心配事の一つは解消された。

 もう一つの心配事。

 再度、汽笛が鳴って、そして汽車が動き出した。


「フェンリルとヴォルクさんはどうなりました?」


 ガタゴトと大きく揺れる車内。


「団長は、言ったとおりあの後ゲームに現れていない。

 フェンリルは、ハヤトが引き継いで、半分以上のメンバーが離れた。私もその一人」


 窓の外を向きながらアマリさんが言う。


「クランホームはそのまま。

 一度、顔を出してみたら?」

「そのつもりです」


 森の町に着いたら、まず親方に会いに行こう。

 そして、その後にフェンリルへ。


 窓の外は、あっという間に海へと変わっていた。

 僕が手伝った橋。

 そのすぐ隣を汽車は走る。海の上を。


 ◆



「さ、着いた。

 終点だよ」


 汽車はあっという間に森の町へ着いた。

 時間にして五分に満たないくらい。


「早いですね」


 汽車が完全に動きを止め、アマリさんが椅子から立ち上がる。


「でも、転移だったらそれこそ一瞬だからね。

 作っては見たものの、完全にロマンの遺産ね。

 私は、好きだけど」

「僕も、嫌いじゃないです」


 流れる景色をただ眺める。

 それだけなのに、すこしワクワクした。

 逃げて隠れるための移動ではないからかも知れない。


 森の町の駅はホームに簡素な駅舎があるだけで、始まりの島に比べずいぶんとみずほらしい気がした。

 だけど、その向こうには、以前よりも人に溢れた町が広がっている。


「こっちの駅は、これから作るんだけど設計で揉めてる。

 有名な建築物を模倣するか、それともオリジナルにするか。

 多分、次の駅が出来ても決まらないと思う」

「次の駅……どこに出来るんですか?」

「砂漠の先。

 深い谷を超えて、その先の遺跡へ。

 あそこも今、発掘が終わって、新しく生まれ変えようとしている」

「すごいですね」

「ショタ君も気が向いたら手伝ってね」

「はい」


 それから、アマリさんに手を引かれ、郊外の作りかけだと言う駅から少し歩く。

 以前と同じ場所で、以前より少し立派に見える建物へ。


 建物の扉は開け放たれており、中から金属を打ち付ける音が絶え間なく響いてくる。

 アマリさんに促され、僕は一人、中へ。


 何人かのプレイヤーの姿があった。

 そして、親方。


 プレイヤーの一人が、僕に気づき親方に声をかける。

 喧騒の中、振り返った親方は、僕を見て破顔する。

 そして、首から掛けたタオルで顔を拭いながらゆっくりと僕の方へと歩み寄ってくる。


「ただいま……」


 もどりました。

 そう言いおうとした僕を遮るように、親方に抱きしめられる。


「おかえり」

「……はい」


 上から落ちてきた、懐かしい声。

 僕は親方の背に手を回した。


 ◆



 積もる話は後で。夕飯の時にでも。

 暫く僕を抱擁した親方はそう言い残し、作業へと戻っていった。

 工房の外で待つファントムとアマリさんの元へ。

 次は、フェンリルだ。


「ホームにハヤトが待ってる」


 アマリさんは事前に連絡を取っていてくれた様だ。


「ハヤトも、ショタ君に会いたいって」

「そうですか」


 一ヶ月前に僕を睨みつけてきた蛍さんの顔を思い出す。

 恨まれているのだろうな。



 ◆


 森の町のハズレのフェンリルのクランホーム。

 金槌を持ったヴォルクさんが手入れをしていた。そんな光景が目に焼き付いている。


「こんにちは」


 スムーズに開くようになった扉を開け、中へ。

 しかし、中から返事は無く。


「ハヤトー。連れてきたわよー」


 アマリさんが声を張り上げる。


「おー。座って待っててくれー。すぐ行く!」


 言われるままに、僕はソファに腰掛けクランホームの中を見回す。

 少し、家具が増えただろうか。

 少し殺風景に思えた以前の室内より、明るく見える。

 見上げると、屋根に天窓が取り付けられていてそこから明かりが入り込む様になっていた。

 そして、観葉植物の鉢が幾つもぶら下がっている。


「悪ぃ。待たせたな」


 ハヤトさんがお盆を手にやってきた。

 その上に、ティーセットとクッキー。


「久しぶりだな。元気だったか?」

「はい」

「そうか。こっちは色々あったが、まあ、大体元気だ」


 カップにお茶を注ぎ、僕の前に置く。

 そして、顔を上げ、その視線を僕の後方へ。


「アマリ、悪ぃけど、外してくれ。

 庭に誰かしら居るだろうから、これ持って行って待っててくれ」


 そう言いながらハヤトさんはクッキーの乗った皿をアマリさんへ。


「はいよ。

 これ、アンタが焼いたの?」

「そうだよ。味は良いぞ。まぁ、スキルの補正込だが」


 ハヤトさんが笑顔で答える。


「りょーかい。

 ショタ君、いじめるなよ?」

「んなことしねーよ」


 アマリさんが皿を手に、僕に手を振りながら去っていった。

 僕は改めてハヤトさんに向き直る。

 頭の上に、ファントム。


「まずは、これ。

 団長からの置き土産だ」


 ハヤトさんは、テーブルの上にアイテムを置く。


「オマエと一緒に取ったもんだから、オマエにやるのが筋だろうってよ。

 まあ、ゴミが3つ手に入るだけだろう」


 それは、イベントで団長が手に入れた『武器ガチャ』のチケット三枚。


「何も言わずに、素直に受け取れ」

「はい」


 断る間もなく、ハヤトさんに釘を刺されてしまった。


「やっと、肩の荷がおりた。

 これで、ファンリルの仕事は終わりだな」


 ハヤトさんが、ソファの背もたれに寄りかかりながら破顔する。


「で、オマエ、これからどうすんだ?

 アマリと居るのか?」

「まだ、決めてません。ハヤトさんは、ファンリルは今何を?」

「……結局、フェンリルは無くなった」

「そうですか」

「それで、俺はソールって言うクランを新たに立ち上げた。

 元フェンリルのメンバーと。

 マヤ、朝景、くまこと、それからエイラ。

 残ったのはその四人だな」

「他の人達はどうしてます?」

「黒と鹿之介、チーコ、ミキ辺りはもうこのゲームを止めたらしい。

 灰とベルヒは転生した」

「転生?」

「ああ、知らないか。

 新システム。

 あの4つの封印の先で生まれ変わることが出来る。

 天界人に」

「そう言えば、お知らせが来てましたね」

「まあ、フレンドリストとか、召喚獣とか引き継げない要素があるからな。

 多分、オマエには縁が無いシステムだろうよ」


 これは、後で調べよう。


「パールさんとタルタロスは気ままにやってるみたいだ。

 ノルンは、まあそのうち会うだろ。

 まあ、見事にバラバラだ」

「すいません。

 僕の所為で」

「オマエの所為じゃない。

 団長が決めたんだ。

 そもそも、オマエ、俺がフェンリルを首にしたんだからな?」

「そう言えば、そうでしたね」

「だから、フェンリルの事はもう気にするな。

 元メンバーに会っても謝ったりするなよ?」

「……はい」


 僕の返答に、ハヤトさんは笑顔を浮かべ、それから真顔になる。


「だがな、蛍の野郎はだけは何を考えているかわからん。

 ゲームを続けてるのは確かなんだが、どこに居て何をしてるか全くわからん。

 オマエを付け狙うような事は無いと思うが……一応、気をつけろ」

「……はい」


 彼の、殺意の篭った視線を思い出す。


「まあ、困ったことがあったらいつでも相談に来い。

 気が向いたらウチに入るのも大歓迎だ」


 再び笑顔を浮かべながら、ハヤトさんが立ち上がる。


「庭、見たか?」

「いえ、まだです」

「案内する。自慢の庭だ」


 彼は、僕をアマリさんが待つ庭へと連れ出す。


 以前は手入れのされていない芝生が茂るだけだった庭。

 今は、一面にバラが植えられ色とりどりの蕾をつけている。


 その中心に猫脚の白いテーブルと椅子。

 アマリさんと向かい合って座る……紫の髪に白いワンピース姿の女性。

 誰だろう。ソールの新しいメンバーかな。


 それにしても、随分と素敵な庭になったと思う。


「俺が、育ててんだよ」


 少し恥ずかしそうにハヤトさんが言った。


「素敵ですね。

 花が咲いたらまた見に来ていいですか?」

「お、おう」


 その庭へ一歩降り立つと同時に、椅子に座った二人がこちらに気づき、視線を向ける。

 その瞬間、二人の姿が消える。


「え?」


 僕の目の前にアマリさんの背中が。


「あれ?」


 だがすぐにそれは弾き飛ばされ、代わりに白い大きな胸。

 そのまま抱き寄せられ顔を胸の間に挟まれる。


「おかえりなさい。ショータ」


 誰だろう。

 身動きの取れぬままその声の主を考える。


「うぉおぉい! ショタ君から離れろ! 痴女!!」


 アマリさんの絶叫。


「マヤっち、ちょっとくっつきすぎだろ?」


 そう声を上げたのはハヤトさん。

 ……マヤっち?


「あれ? ヤキモチ?」

「……そうだよ」


 そこで僕は拘束を解かれる。

 と、同時に今度はアマリさんが僕を後ろから抱きかかえる様に手を回し、マヤっちさんから引き剥がす。


「動きが、早すぎるだろうよ!」

「脱いだらすごいのよ?」

「くそう! たかが鎧脱いだくらいで饒舌になりやがって!」

「マヤさん?」


 フルフェイスの兜をつけた全身鎧の姿しか知らないけれど、女性だったのか。


「そうよ。改めてよろしくね」

「はい。よろしくお願いします」


 アマリさんにしがみつかれたまま僕は彼女へ右手を差し出す。

 するとマヤさんは、僕の右手を握り、更に左手を添え包み込むように握り返す。


「ン、ウン」


 ハヤトさんが咳払いをする。

 マヤさんは、それを横目に見てニヤリとした。


 ◆


 ハヤトさんとマヤさんは、お付き合いをしているのだと庭のテーブルを囲みながら教えてくれた。

 ハヤトさんが、とても照れくさそうに。


 その後、少しだけ話しをして僕らはクラン・フェンリル改め、クラン・ソールのホームを後にした。

 誰も、ヴォルクさんの事は口に出さなかった。

 それは、意図して避けている。そんな風に感じられた。


 ◆



 それから、アマリさんに誘われるままに樹海の森へ。

 一ヶ月振りに、銃を手にする。


「そう言えば、ショタ君。

 何かロリっ子に変身したって聞いたけど……?」

「変身ですか?」


 相変わらず扱うのにコツが要る親方の銃。

 感覚を思い出すのに四苦八苦している。


「ああ、ファントムの憑依でしょうか?

 自分ではどんな姿になっているか知らないのですけど」

「見せて見せて!!」

「はい」


 僕は敵に向けた銃を一度下げ、ファントムを見上げる。


 しかし、見上げたファントムはわずかに小さくなって横に揺れるのみ。



「ダメなの?」

「駄目みたいですね」


 どうしてだろう?


「人前で変身してはいけないルール?」


 そうアマリさんが問いかけるけど、ファントムは横に揺れる。


 僕は仮想ウインドウを開き確認する。

 ファントムのスキルリスト、霊障の中から『憑依』がすっぽりと消えていた。

 一度しか使えなかったのかな。

 でも今まで、そんな武技は無かったけれど。


「うーん。残念だが、まあ、ファントム!

 ショタ君と合体するなどこの魔法少女☆アマリが許さないのだよ!」


 そう言って何故か胸を張るアマリさん。

 ファントムが飛んできて僕の服の中へ。


「あ! ちょ、ずるいぞ! 霊体め!」

「うわ、ちょっと、どうしたんですか?」


 アマリさんが叫びながら僕の方へ飛びかかって来る。


「さあ、脱……イデェ!!」


 そして顔を歪ませながらのけぞるアマリさん。


「アウトです」


 いつの間にか現れたガスマスクさんが静かに告げる。


「くそう……」

「おかえりなさい。ショータさん」

「あ、はい」


 僕は一度頭を下げる。

 再び顔を上げたときにはもう、その姿は無かったけれど。


 少し休憩して、狩りを再開。

 なんと無く、感覚を思い出したあたりで工房へ。


「じゃ、ショタ君、また明日!」

「あ、はい」


 工房の前でアマリさんと別れる。


「戻りました」

「おかえり」


 親方は仕事を切り上げ、既に夕食の準備を済ませていた。


 テーブルの上に置かれたオムライス。

 それを食べながら、この一ヶ月の苦労話を聞かされる。

 壊れた工房。

 そして町の復興。

 更には、線路に使う鉄骨の大量生産。

 一段落はついたけど、まだ当面忙しそうだと言う親方。

 僕も手伝いますよと言うと、嬉しそうに笑う。


 それは、僕にとって久しぶりに、誰かと一緒の食事の時間だった。


 そして、そのままになっているという僕の部屋へ。


 ベッドに腰を下ろし、仮想ウインドウを開く。

 大量のメッセージが届いていた。

 リゼさんや、ひよりさん、セレンさん、ヴィヴィアンヌさん、サヤさん。

 それから、ノルンさんにくまこさん。


 他に、運営からのお知らせとか。


「あれ?」


 ◆


 バランス調整の補填について


 10月25日に行いました、バランス調整の個別補填を行わせていただきます。


 ●対象者

 ・バランス調整対象スキルの所持者

 ・バランス調整対象スキルの所持する召喚獣の所持者



 ●補填内容

 ・スキルストーン×5

 ・イクスストーン×5


 バランス調整対象スキルの詳細はこちらをご確認ください。


 引き続きよろしくお願いいたします。


 ◆


 どうやら、憑依がバランス調整の対象になってしまったみたい。

 だから使えなかったのか。

 代わりにもらったアイテム、イクスストーンを全てファントムに。


<ポーン>

<ファントムがレベルアップしました!>

<ファントムが進化可能レベルになりました!>

<進化はメニューより操作して下さい>


 ……やった。

 そのアナウンスを聞いて、僕は頭上に浮かぶファントムを見上げる。

 ファントムは静かに、不思議そうに、揺れる。


「進化だって」


 早速僕は仮想ウインドウの中で踊る、魔法陣を模した召喚獣を示すアイコンに触れる。

 そして、<【???】ファントム>という文字とともに現れた<進化>と言うボタンに触れる。

<ゴースト>、<シルキー>と言う二つの文字が表示される。


「ゴーストとシルキーだって」


 そう、ファントムに声をかける。

 すると、ファントムは静かに横に揺れ、仮想ウインドウの中のシルキーの表示にノイズが走る。

 これは、ファントムの意思表示だろうか?


「ゴーストが良いの?」


 問いかけに、ファントムは縦に揺れ答える。

 そうみたい。


「じゃ、ゴーストにするね」


 僕はファントムに頷きを一つ返しながら答える。

 そして、少しドキドキしながらゴーストの文字に触れる。


<ファントムをゴーストへ進化させます>

<YES / NO>


 ゆっくりと、YESへ。

 指先が触れると同時に頭上のファントムを見上げる。

 ゆっくりと、ファントムの中から光が弾ける。

 段々と、強く。

 そして、目も開けていられないほどに眩く。

 瞼を閉じ、一拍置いて収まった光。

 ゆっくりと目を開ける。


 ファントムが居た場所に、薄く透き通った朧気に人に見える姿が。

 髪の長い女の人。

 表情はぼやけていて良くわからないけれど、笑っているように思えた。

 進化、した。

 ファントムからゴーストへと。


『私は、ルナ……』


 か細い声で、まるで耳元で囁くように、そう聞こえた。


「ルナ……」


 ファントム、いや、ゴーストの名前。

 相棒の、パートナーの名前。


「ルナ」


 僕は彼女を見上げその名を呼ぶ。


『或いは、ルナお姉ちゃん』

「ルナ! よろしく!」


 何か、聞こえたけれど、無視した。


『……ええ、よろしくおねがいします』


 そう答えた彼女の声は少し、残念そうだった。

 そして、僕も喜びの声を上げたけれど内心は少し残念だった。

 ルナと伝えた彼女の声に、少しだけ嘘の気配を感じ取ってしまったから。


「……今日だけだよ」

『え?』

「……ルナ、お姉ちゃん」

『ショータ!』


 霊体が、ピンクに染まり、嬉しそうに飛び回る。


「じゃ、おやすみ。

 また明日」


 少し照れくさくて、恥ずかしくなった僕はそそくさとログアウトをした。





次回予告!


突然のペナルティから復帰したショタはつきまとう姉を手に入れた!

前回の予告の五人娘はこの章、ほぼ出番無し!


荒れ狂うプロット。

この章で回収予定だった伏線が、完全放置のまま!

どうしよう。

どうしてこうなった!?

そうだ!

男を減らそう!


そんな感じでゆるゆる行きます。



感想、評価ありがとうございます。

この後、暫く書き溜めの時間をいただきます。

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