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110 ペナルティ

 襲われたのは森の町。

 そこへ向け、モンスターの大集団が押し寄せている。

 その防衛戦が砂漠エリアに出来ていて、ハヤトさんやアマリさん達フェンリルの残りのメンバーはそこに居るのだと教えてくれた。

 他にも何箇所か、モンスターに襲われているのだけれど砂漠が一番の激戦地らしい、と。

 それを知って僕を、町を助けにボス討伐の予定を変更して助けに来てくれたのかと思ったら、「もう倒してきた」と当然のように言われた。


 防衛力が低下した森の町は、ひとまずはRenNaさんが防衛用のフィールドを展開すると言って、町をすっぽりと覆う光の膜を出現させた。

 すごいですねと言ったら、レア召喚獣舐めんなと返される。二回目だな。

 町に降っていた雨も、黒蜜の力らしいから本当に凄い。


 オークやゴブリン。

 そう言った異形の人型モンスターで溢れる砂漠フィールド。

 響き渡るのは、灰さんの高笑いと爆発音。蛍さんの高笑いとハヤトさんの怒鳴り声。


「ちったぁ静かに戦えねぇのかな。アイツラは」。

 ヴォルクさんがそう頭を掻きながら苦笑いを浮かべた後、そんな喧騒に負けないくらい大きな声で「行くぞぉ!」と叫び、モンスターの漏れの中へと飛び込んでいった。

 僕もナイフを片手にそんなヴォルクさんに付いて行く。



 ◆



「へっへ! 俺の勝ちだね」

「うるせぇ。こっちは大物ばっか相手してたんだよ」

「質だって負けてないし!」


 蛍さんが嬉しそうにハヤトさんに食って掛かる。

 どうやら、ハンティングの勝負をしていた様だ。


 砂漠での防衛戦は、ファントム、ローズガーデン、開拓組と入り乱れての戦いとなったけれどどうやら僕らプレイヤーの勝ちのようだ。

 モンスターの群れは、既に無く開拓組の面々は町の修復へと戻りはじめた。


「ショタ君! イベント、行くよ!」


 灰さんに張り合ってずっと魔法を放っていたけれどアマリさんは相変わらず元気だ。


「……行けなそうです」


 僕は、アマリさんの誘いを断らざるを得なかった。


 何時から居たのか、砂漠に立つガスマスクさん。

 直立して、僕を見ている。


「ぬ。ガスマスク! 何しに来た!」


 それに気付いたアマリさんが、僕を庇うように前に立つ。


「彼は、連行します」


 そう、抑揚のない事務的な声でガスマスクさんは告げる。


「GMさんよぉ。その事なんだが、言わなきゃならないことがある。

 だから俺も一緒に連れてけや」

「……構いませんが、弁護は受け付けません」

「ああ。

 ハヤト、黒。悪ぃが、先にホームに戻っててくれ」


 その返事を待たずに、景色が切り替わった。


 以前、ひよりさんと来た事がある小奇麗な調度品が置かれた部屋。


「お座りください」


 その時と同じようにソファに腰掛けるように促される。

 隣には、ヴォルクさん。


「プレイヤーキル、合計十八人」


 腰を下ろした僕にガスマスクさんが告げる。


「内部規約に照らし合わせると、アカウント利用停止措置となります。

 この結論は、残念ですが変わりません」

「そうですか」

「それなんだが、GMさん。

 白状する。俺がやらせた」


 そう嘘の告白をしたヴォルクさんに僕とガスマスクが同時に顔を向ける。


「何故、そんな嘘を?」

「嘘じゃねーよ」

「いえ。ゲーム内でそんな会話がなされた形跡はありません」

「別に、ゲームの中じゃなくても連絡は取れるだろ。

 アイツラがムカついてしょうがなかったから、コイツを騙して俺がやらせたんだよ。

 足がつくと不味いからクランから除名して」

「嘘です。僕が勝手にやったのです」

「ショータ、もう嘘をつく必要は無い。これで良いんだ」


 尚も、ヴォルクさんは嘘を重ねる。


「その場合、ヴォルクさん。

 貴方のアカウントに対して利用停止措置となりますが、宜しいのですか?」

「構わねぇ。

 子供を騙くらかすような悪党にはお似合いの末路だ。

 だが、アイツラ、町を襲ってた連中はどうなる?

 無罪放免か?」

「いえ。

 相応のペナルティを負うことになります」

「そうか。

 ショータもそれで良いな?」

「いえ、良くありません。

 ヴォルクさんは関係ないです」

「そんな事は無い。

 同じクランの、フェンリルの仲間だ」

「……わかりました。

 運営としては、今の証言を採用します」

「そんな!」


 僕の抗議を無視して、ガスマスクさんは続ける。


「プレイヤー名、ヴォルク。

 他プレイヤーへの迷惑行為にてアカウント利用停止措置。

 プレイヤー名、ショータ。

 同じく、アカウント停止30日。

 プレイヤー名、くまこ。

 同じく、アカウント停止10日。

 プレイヤー名、朝景。

 同じく、アカウント停止3日。

 これが、今回の処分となります。

 くまこさん、朝影さんには後ほど私から伝えます」

「わかった。

 最後にクランの連中に一言言いたいんだが、良いかな?」

「……承知しました。

 本日、ログアウトまで、もしくは24時までを猶予期間とします。

 万が一、不審な行動が見受けられましたら、その時点で強制切断いたしますので」

「助かる」


 満足そうに頷くヴォルクさん。


「どうしてですか?」


 僕はその横顔に問いかける。


「それは、これから全員に説明するさ。

 ショータ。お前は何も喋るな。約束だぞ」

「では、転送します。

 行き先は、フェンリルのクランホームで良いですね?」

「ああ」


 僕が答える間もなく、また景色が切り替わる。


「団長! おかえり!

 さ、イベント行こう!」


 蛍さんが嬉しそうな声を上げる。

 フェンリルのクランホームには僕を入れて十八人全員が揃っていた。


「ああ。その前に、少し良いか」

「えー、早く行こうよ!」

「蛍、座れ」


 ハヤトさんに窘められ、蛍さんがしぶしぶ椅子に座る。

 そんな面々をゆっくりと見回し、ヴォルクさんは口を開く。

 その背を僕は後ろから黙って見ていた。


「突然で悪いが、俺は引退することにした」


 そう言ったヴォルクさんに、全員が目を見開く。


「フェンリルは、ハヤト、お前に任せる。

 続けなり、解散するなり好きにしてくれ」

「待ってよ! 何で!」


 蛍さんが立ち上がり、そのはずみで椅子が音を立て倒れる。


「蛍! 座れ」


 ハヤトさんが蛍さんを見上げながら言う。


「何で落ち着いていられるのさ!?」

「座れ!!」


 ハヤトさんが怒鳴りながら立ち上がる。

 そして、ゆっくりと座りなおす。


「団長が、しゃべってんだろ」


 そう、うつむき加減で言った。


「そいつの所為なんだろ!?」


 そう言って蛍さんは僕を指差し睨む。


「蛍、ショータは関係ない。

 これは、俺が決めたことなんだ」

「意味わかんないよ!」

「団長。

 ちゃんと納得の行く説明をしてください」


 黒さんが、メガネのブリッジをおさえながら言う。

 一度、僕を睨むように見て。


「……親がよぉ」


 ヴィルクさんが、そこで一度大きく息を吐く。


「親が、死んじまったんだわ。

 そろそろ俺も、現実で外に出ねぇと。

 そう思ってな」


 僅かに肩を落としながら言ったヴォルクさんの言葉。

 そして、静寂がその場を支配する。


「それが……それが何だよ!」


 再び静寂を破ったのは蛍さんだった。


「そんなの関係ないだろ! ふざけんなよ! ずっと、一緒だって……家族だって……団長!」


 そのまま、ヴォルクさんへと飛びかかろうとする蛍さんをハヤトさんが後ろから羽交い締めにする。


「離せよ!」

「ウルセェ! 落ち着け! 馬鹿野郎が!」

「落ち着ける訳なんかあるかよ!

 オイ、お前、何か言えよ!

 お前の所為なんだろ!」


 そう言って僕を睨む蛍さん。


「止めなさい」


 その一言は、パールさん。

 顔を歪め暴れていた蛍さんの動きが止まる。


「団長の決めた事は絶対。

 それが、フェンリルでしょ?」

「だって……」

「今、団長を困らせているのは、貴方よ」


 羽交い締めにされたまま、蛍さんがヴォルクさんを見上げる。

 対するヴォルクさんはどんな表現をしているのだろうか。

 蛍さんは、二度三度と大きく冠りを振り、そして消えた。






「あのー、俺、そろそろ落ちるんで。

 お疲れした」


 誰も、一言を発せぬまま流れる時間に嫌気がさしたのだろう。

 ベルヒさんが、明るくそう言って返事も待たずに消えて行った。


「今日くらいは、付き合えるんだろ?」


 それを切っ掛けにだろう。

 ハヤトさんがヴォルクさん向かって言う。


「ん、ああ。夜までならな」

「なら、イベントに行こう。

 黒、朝景、マヤ、くまこ、パール付き合え」


 名を呼ばれた面々は黙って頷く。


「皆。

 こんな終わり方になっちまって、本当にすまない」


 ヴォルクさんは、深々と頭を下げた。



 彼らが消え、残った面々も次々と居なくなり、最後まで残ったのは灰さんとアマリさん。


「まー、最後は呆気ないもんね」

「そうかい? 感動的だと思ったけど?」


 そんな風に軽口を叩くアマリさんと灰さん。


「心にもない事を」

「バレたー!

 でもこれからどうしようかな。

 アマリは開拓組に出戻り?」

「そうね。暫く復興で大変そうだし。

 ショタ君もね!」

「いえ、僕は……一ヶ月ほど旅に出ますので」

「え、マジで?」

「はい」


 そう言う事にした。

 いずれバレるだろうけれど。


「おお、私は明日から何を潤いにして生きていけは良いのだ」

「あの……オヴェット工房……僕が、直したいんですけど、出来そうに無いので」

「承り!」


 言い切る前に嬉しそうにアマリさんが手をチョキにして顔の横に。


「僕も開拓組入れてもらおうかなぁ」

「アンタ、絶対壊す側だから駄目!」

「そんな事、無いよ」

「と言うか、フェンリルだって解散かどうかはまだわかんないじゃ無い」

「そうだけど、別に思い入れも無いし。

 結局、パールさん次第な訳よ。僕の運命は」


 そう言って、鼻で笑う灰さん。


「あの人、本当に主婦なのかしらね。

 ここのところずっといるけど」

「旦那さん、単身赴任中らしいよ」

「ああ、なるほど。

 ……それ、言ってよかったの?」

「ダメ」


 灰さんは、悪びれもせずに笑う。



 親方に一言言ってからログアウトしようかと思ったけれど、何と言えば良いのかわからないから結局会わずにログアウトした。


 そして、ガスマスクさんに言われた通り翌日からログインが出来なくなった。

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