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109 魔神出現

 屋根から、地面へと移動して、ガスマスクさんの首を跳ねた。

 一瞬で。

 僕は、その動きの一切を捉えることが出来なかった。


「つまり、この騒動の一端はアンタに有るわけだな?」

「だとしたら、どうする?」

「そんなの、決まってるわなぁ」


 そう言いながら、ヴォルクさんはゆらりと剣を構える。

 直後、デイストルクスの姿が消えた。

 そして甲高い金属音が轟く。


「ほう」


 僕が全く目に追えなかったデイストルクスの一撃を、ヴォルクさんは正面から剣で受け止めていた。

 そして、後ろに飛んで距離を置くヴォルクさん。


「……マジィな」

「逃げますか?」

「それも、悔しいな」

「なら、死ぬ気で殴るしか無いよね」


 そう言って、くまこさんが飛びかかって行く。

 それに五郎も続く。

 しかし纏めて跳ね返され、続いた朝景さんの矢の雨もすり抜け避ける。


「負けイベントでしょうか」


 そう言いながら、黒さんが両手に剣を持ち飛びかかって行く。

 迎え討つ剣で脇腹を撫で斬りにされた黒さんの陰からヴォルクさんが剣を上段から振り下ろす。

 その一撃を、指先だけで軽々と止めるデイストルクス。


 そのまま対峙する両者。


 ヴォルクさんの背後からスコルが飛びかかる。

 しかし、左手一本で黒い狼を弾き飛ばす。

 僅かに出来た隙。

 そこへ、右手からハティに跨ったノルンさんが槍を伸ばす。

 だが、それが敵を貫く前に相手の姿は掻き消えた。

 現れた先はノルンさんの背後。

 身を回転させながら放たれた蹴りはノルンさんを直撃し彼女の華奢な体を吹き飛ばす。

 素早くスコルが彼女を空中で受け止めて距離を取る。


「強いわねー」


 皆に回復魔法をかけながらパールさんが僕の横でのんびりと言う。


 僕も。

 そう思い、銃を手に取り、そこでまず違和感を感じる。

 銃が、重い。

 いや、体が重い。

 そう感じる。

 さっきまでの憑依の反動か。

 そして、そうか、ファントムが居ないんだ。

 幾つかの技が使えなくなった。

 でも、それ以上に、何というか心細い。

 一度、大きく息を吐く。

 それで、余計な思考を止め引き金を引く。

 放たれた鉛の銃弾は、仲間の隙間から敵に当たり、そして砕け散った。


 デイストルクスが僕を見る。

 フードの下から覗く、口元が歪む。

 直後、その姿が僕の直ぐ目の前に。

 HPが一気に赤に。

 胸に深々と突き立てられた剣。

 相手がそれを引き抜くと同時にパールさんの回復魔法が飛んでくる。


「……刻印」


 頭蓋に直接響く様な、寒気がする声。

 咄嗟に大きく下がって距離を取る。

 そこへ、フェンリルの面々が飛びかかっていく。

 体が、震える。

 何かの、状態異常攻撃だろうか?


 皆の攻撃をいなし、再びデイストルクスがこちらを見た。

 来る。

 頭では理解したのだけれど、体が思うように言うことを聞かない。


 次に直撃を受けたら間違いなく、死に戻るな。


『それを持つ魂はシャルディーニの元に辿り着く前に、デイストルクスに喰われるのだよ』


 不意に、森の神の言葉が蘇る。

 ……魂を喰われる。逃げなきゃ。

 理由は定かでは無いけれど、その時僕はそう思った。

 でも、意に反し、足の震えは止まらない。


 眼前に、デイストルクスの剣が迫る。


 僕のこめかみを貫く。

 その紙一重のところで、剣は停止した。

 それを止めたのは水の盾。


「私の結界の中で、好き勝手はさせません」


 凛としたRenNaさんの声が響く。


「黒蜜、ヘクサゴナル・バインド!」


 デイストルクスの背後に現れた黒蜜がRenNaさんの指示に応えるように鳴声を上げる。

 すると、デイストルクスの周囲に光る六角形の輪が幾重にも出現し、それが魔神を縛り付けるよう締め上がっていく。


「「「「アイシクル・レイン」」」」


 僕の眼前で身動きの取れぬ魔神へ向かい上空から冷気が一気に吹き付ける。

 そして、幾千もの氷の雨。

 立ちすくみ、巻き添えになりそうな僕をその場から救い出したのはすっかり大きな虎になった白玉。


 冷気が白煙となる中へ、武器を手に飛び込んでいくリゼさんとひよりさん。

 一拍遅れ、ヴァルクさんを先頭にフェンリルの面々もそれに続く。

 矢が、魔法が放たれ、全ての攻撃がデイストルクス、唯一点へと収束していく。


 パールさんが回復魔法と強化魔法を施す横で僕はその戦いを見つめていた。


 やがて、攻撃の手が止まる。

 それは、示し合わせた訳では無いのだろうけれどまるで台風の目に入った、一瞬の凪の様で。

 その中心にいるのは、RenNaさんと黒蜜により拘束されたままの魔神。


「各位! 警戒!」


 RenNaさんの鋭い声が響く。

 直後、魔神から黒い雷が周囲に迸り、黒い炎を伴いながら広がっていく。

 それは力の奔流となりプレイヤー達を、そして町の建造物を吹き飛ばした。




 地の上に、或いは瓦礫の上に転がったプレイヤー達の中で僕が真っ先に立ち上がったのは、オートポーションが発動したことと、パールさんが身を盾にして僕を庇ってくれたからだろう。


 守ろうとした門は、今ので跡形もなく吹き飛んだ。

 ……これを作り上げた開拓組の面々は、この町の人達はこの光景に嘆くだろうか。


 いや、『作り直していけば良い』と、そう親方は言った。

 震えながら、神に対して一歩も引かなかった親方なら、また同じような事を言うだろう。

 その為には、まずコイツをなんとかしないと。


 悠然と立ち、こちらを見る魔神を見つめ返す。


 ……神に、立ち向かう。

 なんだ。

 たったそれだけの事じゃないか。

 幾度となく挑み、そして、答えをもらっていたんだ。


「四騎神。力を。再び封印を」


 魔神を見つめながら、そう言葉を口にする。

 再び封印が必要ならば呼べと、そう言った彼らを。


 初めに白い矢が。

 次に赤い剣が。

 そして、黒い鎖が。

 最後に青い鎌が。


 光を放ちながらデイストルクスへと突き刺さり、まばゆく光る一つの柱となって、音もなく地へと吸い込まれるように消えて行った。

 消え去る寸前に、フードの下から垣間見えた赤い瞳は確かに僕を見据えていた。


「……終わったのかしら?」

「はい」


 背後から掛けられたパールさんの声に、僕は振り返らずに頷いた。


「眼鏡女子連、イベント行かなくて良いって人、ここの警備を手伝って下さい。

 フェンリル、ローズガーデン。

 相変わらず砂漠がピンチ。

 直ぐに向かってください」


 戦いの余韻に浸る間もなく、RenNaさんが指示を出す。


「じゃ、行きましょう」


 パールさんは僕の手を取り半ば強引に、僕を引きずるように歩き出した。

 その先には満面の笑みを浮かべたヴォルクさん。

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