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107 ラビット

『ショータ、モンスターが一体入り込んだ模様。

 住宅区域の方らしいけど見つけたら処分。無理なら場所を知らせてちょうだい』

「了解」


 僕は空を駆けながらマリーさんからの通信を受ける。

 でも、索敵に敵の印は無い。

 プレイヤーとNPCのみ。


 そのうちの一点。

 孤立したプレイヤーの印を目指す。


 地に降り、全力でそちらへ。


 曲がり角の先。

 その姿を捉えると同時に引き金を引く。

 六門の銃口から射出された銃弾は、プレイヤーを粒子に替えた。


 次。


 プレイヤーが二点。

 一つはこちらに向かって居る。

 もう一つは、逆に逃げる様に遠ざかる。でも、そちらの方が近い。

 まずはそれを。

 そう決め、走り出す。


 二度、三度と曲がりその背を捉える。


 だが、その前にもう一人に追いつかれたか。


 背後……建物の屋根の上から襲いかかる影。

 下降しながら一気に振り下ろされたその大剣を頭上で受け止める。

 押し潰されそうな衝撃。膝を使いながら和らげる。

 火を纏った大剣の一撃。

 でも、親方の宣言通りに僕のナイフは折られることなくそれを正面から受け止めた。


 目の前で驚愕の表情を浮かべる剣士を無視し、首を回し逃げるプレイヤーを視界に捉える。


 行け。


 ファントムの腕が手にした銃の引き金を引く。


 それは遠ざかる影の後頭部を狙いを違わず撃ち抜きそれを粒子に変えた。

 そして銃口を目の前の剣士へ。


「……ショータか!?」


 リゼさんが眉をひそめる。

 剣に込められた力がわずかに弱くなる。


「はい」

「その姿は? それに今、PK……」

「敵味方の判断がつかない。

 プレイヤーは全部消します」


 邪魔をするなら、リゼさんも。


 別のプレイヤーを索敵が捉えた。


「いや、しかし……。

 ちゃんと説明を」

「そんな時間は無い!」


 目の前のリゼさんが小さく息を吐く。


「開拓組が消火活動をして居る。それは撃たない様に」


 剣を引きながらリゼさんが言った。


「約束は出来ません」


 僕はそれに素直に答えてから、索敵に掛かった敵に向け走り出す。


「RenNaさん。

 町中のプレイヤーに、外に出る様にアナウンスして下さい。

 外で防衛に当たれとか、理由は何でも…」


 リゼさんが、誰かへと通信を入れるのを僕の頭につけたウサギの耳が微かに捉えた。

 だが、それより敵の排除が優先。


 今までの爆破の状況から、残りは十人に満たない程度の筈。



 ◆



 ポツリと顔に水滴が当たる。

 雨が降り出したのか。


 初めてだな。

 このゲームで降雨を体験するのは。

 これが町の火を消す恵の雨となるかもしれない。

 プレイヤーの行く先を追って走りながら、ゴーグルを顔をはめる。

 あっという間に雨は土砂降りとなった。


 一人。

 上から仕留めた。


 敵とも味方ともわからないプレイヤーを追って地に降り通りの角を曲がる。


 その先に、突然索敵に今までかかって居なかった人影。

 反射的に全ての引き金を引く。

 放たれた六発の銃弾。

 それは涼しい顔をした女性の手前で全ての停止し、消滅した。


「賊は居住区を抜けましたよ。

 私の雨で火が消えた。

 被害が想定以下で、最終手段に出るのでしょう」


 僕は銃口を向けたまま、それを聞く。


「敵の狙いはこの町の防衛ステータスの低下。

 次の狙いは明白。

 そして、賊の位置も私にはわかってる。

 ラビット。

 その情報を貴方に逐一教える」


 だから、殺しに行けと言う事か。

 良いだろう。


 小さく顎を引き、銃口を下ろす。


「凄いですね」


 彼女の言葉が本当ならば、僕の攻撃を全ての受け止め、この雨を降らせ、敵の位置までもわかって居ると言う。

 彼女の足元から、ぬっと黒い頭が顔を出す。

 そこは、地面の筈なのにまるで水面から顔を出す様に姿を見せたのは黒蜜。

 RenNaさんの召喚獣。


「ウルトラレア舐めんな。

 もう、この辺一帯は黒蜜の領域内よ」


 メガネをくいっと上げながら言って、そして、僕を睨む様に見据える。


「PKはペナルティーで最悪アカウント停止になるかもしれない」


 僕は再び顎を引く。


「お咎めなしなら、その時は私のクランに入らない?」

「僕は、男ですよ?」

「それなら仕方無い。

 今はどう見ても女の子なんだけど」

「そうですか?」

「ええ」


 ファントムの武技、憑依スピリット・ポゼッション

 ファントムと同化した僕はそんな風に見えるのか。

 確かに髪がとても長くなったのは自覚して居たけれど。

 見た目なんて気にかける必要も余裕も無かった。

 ただ、とても強くなって、プレイヤーに銃弾が当たる。

 それだけで十分だったから。


 RenNaさんから敵の位置が送られて来る。


 それは全ての町の外周の方へ移動して居た。


 あるのは簡素な柵と門、その先は砂漠フィールドへと続く。


「行きます」


 そう、RenNaさんに言って、雨の降り続く空へと駆け上がる。


 残りは、三人。

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