104 新エリア開放
【フェンリルクランチャット】
ベルヒ>メンテ明けました!
黒>おはようございます
ハヤト>集合時間までまだ大分あるから今から暴れて息切れとかすんじゃねーぞ
蛍>マラソン行くぞ
ベルヒ>了解す!ハヤトさん!集合時間まで寝てますね!ではまた!
蛍>ち、逃げたか
ハヤト>どんだけ集まったんだよ?
蛍>70個。500個必要。
蛍>行く?
ハヤト>行かね
黒>早速、新エリアに飛び込んでいったグループも居るみたいですねぇ
ベルヒ>マジすか!?
蛍>お前寝たんじゃないの?
ベルヒ>寝ます!
ヴォルク>おいっす
ハヤト>おはようございます
黒>おはようございます
ヴォルク>今日も一日頑張ろうや
黒>私は攻略情報を集めておきます
黒>先を越されないと良いんですけど
ハヤト>情報も無しに先走るなんてトーシロのやることだろ
蛍>とか言いつつ一番取られたらどうしようとか思ってるくせに
ヴォルク>まあ、予定通りの時間に全員で行こうや
ヴォルク>それで後塵を拝する事になってもやむ無し
ヴォルク>俺達は仲間であり、家族なんだからな
ヴォルク>……反応、無しかよ
ヴォルク>すまん、言い過ぎた
マヤ>団長、みんな蛍に捕まって読んでないですよ
ヴォルク>マジカヨ
◆
「おはよう」
ログインして、ファントムに声をかける。
「今日は忙しくなりそう。
よろしくね」
足止めを食らっていた新エリア。
そして、イベント。
ハヤトさんからメッセージで来ていたので目を通す。
新エリアは移転先で直ぐにボスとのバトルになるのか。
それに備えて準備を整えておけと、そう言う指示だ。
「掃除、行こうか」
ベッドから下りて工房へ。
親方はまだ起きて来ないだろう。
昨日はスパナさん達と深酒をしていただろうから。
銃弾の数は問題ない。
攻撃用の爆発する宝石のカルテさんから受け取ってる。
取り立てて、必要そうな物は無いかな。
いや、少し回復アイテムを補充しよう。
そんな事を考えながら、工房の中を箒で掃いていく。
ああ、そう言えばファントムの新しい武技を試してないな。
どんな力なのだろう。
ボス戦で試す……その機会は無いかな。
今日はフェンリルの全員で行くのだから、僕は後方支援だろう。
「あ、先輩! おはようございます!」
「おはようございます」
ろくろさんが工房へと入って来た。
「ちょっと、機械を使わせて貰おうと思って。
親方さんは?」
「まだ寝てると思います。
音を立てても起きないので遠慮なくどうぞ」
「そう言えば、先輩ってここに住み込みなんですよね?」
「そうです。
住んでると言っても、ログイン、ログアウトするだけの部屋ですけど」
一応、帰る場所でもある。
「良いすね。こっちはクランホームのローン支払いでヒーヒー言ってますよ」
ろくろさんはそう言って笑いながら機械を動かしだした。
直ぐに、機械の奏でる金属音が工房に響き渡る。
僕は、工房の隅へ腰掛けその様子を眺めていた。
何を作っているのか興味もあった。
でも、そろそろ集合時間だな。
「ろくろさん。僕、約束があるので行きます。
親方は、多分お昼すぎまで起きてきません」
「はい。
いってらっしゃいっす!」
工房から出て、お風呂屋さんの方へ足を向ける。
マリーさんが居たら、薬をいくつか買い足しておこう。
そう思って。
その道すがら、向こうから来た人、プレイヤーではなくこの世界の住人、NPCとすれ違う。
漆黒のフードを目深に被った人。
それを見て、ファントムが咄嗟に僕の服の中へと隠れた。
この反応には覚えがある。
神と呼ばれる存在に出会った時のファントムだ。
では、この人も神なのか。
「……あの」
振り返り、その人の背中へ声をかけようとした瞬間、目の前に一瞬炎が見え……。
<ポーン>
親方の家の僕の部屋に居た。
何が、起きたのだ?
目の前でファントムがしきりに横に揺れる。
仮想ウインドウを開き、ステータスを確認する。
<デスペナルティ>。
……死んだ? どうして?
あの“神”の攻撃?
行動ログを確認する。
<DEATH! ファントムの炎 クリティカル効果:即死>
……え?
僕は目の前の相棒にもう一度目を向ける。
君が?
何で?
ファントムは何も言わず横に揺れる。
何もわからない。
問おうにも、ファントムは何も答えられない。
「はい」
『ショータ君、そろそろ時間ですけれどどうかしましたか?』
黒さんから通信が来た。
そうか。集合時間。
「あ、すいません。
直ぐ行きます。
あ、すいません。
駄目です。
えっと、一度始まりの町へ戻らないと……」
『大丈夫ですか?』
「はい。
デスペナなので解消してから向かいます」
『そうですか。
では……クランでは無く光の庭の方で待ち合わせましょう』
「わかりました。急ぎます」
通信を切り、ファントムを見つめる。
「いつか、ちゃんと教えてね」
ファントムは小さく縦に揺れる。
「……行くよ」
まず、始まりの町。
そして、光の庭へ。




