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98 風呂屋のバイト

「いらっしゃーい」


 お風呂屋さんの番頭から頬杖ついたマリーさんのやる気の無さそうな声が聴こえる。

 おしゃれだろうか。

 メガネを掛けている。


「こんにちわ。

 何してるんですか?」

「バイトよ」

「そうですか。お疲れ様です」

「召喚獣は別料金。

 ファントムは女湯よね?」


 そう言われ、ファントムは横に揺れる。


「駄目よ。

 ひよりちゃんに釘刺されてるのよね。何故か」


 しぶしぶと言った風にファントムが女湯へと消えていく。


「ところでエアルさんは居ますか?」

「男湯の掃除してる」

「ありがとうございます」


 なら、話をするには丁度いいかな。


 脱衣所まで行くと、丁度ガラガラと音を立て、浴室への扉が開く。


「やあ、いらっしゃい。

 今日も、デトックスの湯だよ」

「こんにちは。

 マリーさん、ここで働いてるんですね」

「あ、知らなかったか。

 まあ、色々あってね」


 そう言いながら、エアルさんはデッキブラシを立てかける。


「色々、ですか?」

「んー、まあ、ちょっとしたトラブル。

 彼女は加害者であり、被害者でもある」

「いや、別に隠さなくて良いわよ」


 番台の方からマリーさんの声。

 そして、彼女も脱衣所へと現れる。


「店番は?」

「準備中にしておいた」

「お前……勝手に店閉めるなよ」

「良いじゃん。大して流行って無いんだから」


 そう言いながらマリーさんは脱衣所にあった長椅子に腰掛ける。


「で、私の話ね。

 この前のイベントでやった事が不正って言うことになっちゃって。

 それが運営からペナルティを受けちゃって、一緒にやってた仲間から総スカン食らってさ」

「で、まあ、居場所の無くなった可哀想なこの子を私達が仲間に迎え入れて上げた訳」

「私達?」

「そ。

 眼鏡女子連。

 RenNaの作ったクラン。

 まあ、私はまだそのクランには正式には加入して無いんだけど」


 マリーさんが眼鏡を掛けているのはその所為か。


「他の奴はさ、ペナルティなんて馬鹿らしいってみんな引退しちゃったんだけどさ。

 なんか、悔しいじゃん?

 せめてあのガスマスクを一発ぶん殴ろうかと思ってさ。

 ここなら、ちょいちょい顔出すらしいし」

「まあ、マスクちゃんにはそんな事させないけどね」


 多分、マリーさんの言う事は、本音では無いだろう。


「後、約束は守るべきだよね」


 そう僕に笑いかける。


「そうですね」


 そう答えた僕に、エアルさんは怪訝そうな顔をする。





 肩までお湯に浸かりながら脱衣所の事を反芻する。

 マリーさんが、森の神との約束を覚えていたのが少し嬉しかった。


「逃げるのが嫌なんだろうね。

 それがどんなに嫌な事からでも。

 それは、素直に凄いと思うの。

 私は、逃げることを選ぶから」


 何故か僕の横でエアルさんが足だけ湯につけて居る。


「だから私「ショタ君! 居るの!?」


 尚も何かを言いかけたエアルさんを遮る喧しい声はお風呂の仕切りの向こう側から聞こえて来た。


 顔を見なくてもわかる。

 アマリさんだ。

 でも、どうして僕が居るとわかったのだろう。

 ……あ、ファントムが女湯に行ったからか。


「あの仕切り、あるじゃん?」

「はい」


 エアルさんが真ん中の仕切りを指差す。

 竹で出来て居るように見えるけれど、随分と高い。


「今のプレイヤーの身体能力だと、絶対に覗けない様になってるの。

 このお風呂の自慢の一つ」

「へー。そうなんですか。

 でも、あれ、アマリさんですよね」

「うぇ!?」


 仕切りの上からアマリさんがニンマリとした顔を覗かせる。


「え、ちょ、何やってんの?

 てか、どうやって?」

「へへへへー!

 私と、ファントムに不可能は無いのよ!」


 ファントム……あ、ポルターガイストで足場を作ったか。


 そのファントムがピンクになってアマリさんの後ろにチラチラと見える。


「え、ファントムってちびっ子の召喚獣でしょ!?

 何で結託してんのよ!?

 つーか、そんな所誰かに見られたら……」


 本当に何でだろう。


「これ……イデェ!!」


 尚も何かを言いかけたアマリさんは、突然顔を歪ませ消えて行った。

 直後、何かが水の中へと落ちる音。

 更に、ファントムが一瞬、小さな稲光に弾かれ消滅する。


『アウト!』


 そう、ガスマスクさんの声が響く。


「……ア、アマリ!? 平気? 生きてる?」


 エアルさんが大声で仕切りの向こうへ問いかけるが返事は無い。


「ちょ、マリー!! 女湯の様子見て来てー!」


 そう叫びながら脱衣所の方へと消えて行った。

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