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10 GMさん

「まあ、座って下さい」


 ソファに腰掛けたガスマスクの人が向かいの席を手で示す。

 間に背の低いテーブル。


 調度品に囲まれた室内。

 機械仕掛けのオブジェが多く並ぶ。

 中にいるのは僕と、ひよりさんとガスマスクの多分女の人。


 ひよりさんと顔を見合わせた後、勧められたソファに座る。

 とても柔らかい座り心地だった。


「ひよりさん。不快な思いをさせ申し訳ありません」


 そう言ってガスマスクの人が深く頭を下げた。


「相手の言動は迷惑行為に相当しますので、注意を促します。

 望めば金輪際顔を合わせる事が無いように設定いたします。

 いかがいたしますか?」

「……お願いします」


 少し考えてからひよりさんはそう答えた。


「かしこまりました。

 手配します。

 さて、ショータさん。

 経緯はどうであれ、貴方のした事も迷惑行為になります」

「……はい」

「ショータ君は、でも……」


 言いかけたひよりさんを手で制するガスマスクの人。


「今回は情状酌量の余地があるので、ペナルティーは課しません。

 情状酌量、わかりますか?」

「はい。意味は知っています」


 僕の答えに頷くガスマスクの人。


「ですが、今後同じような事を行えば、どうなるかは保証いたしません。

 お気をつけ下さい」

「はい」

「ちなみに、殺意はあったのですか?」


 問われ、考えずに即答する。


「いえ」

「では、誰かが殺せと言ったらどうしてましたか?」

「殺してます」

「ショータ君? 何言ってるの?」


 あいつに飛びかかったのは、ファントムが怒ったから。

 それ以外の理由は無い。

 どうしてファントムが怒ったのかはわからないけれど、ファントムがその怒りを晴らすことが出来ないのならば僕が代わりにやる。

 それだけだ。


「ひよりさん。

 今のは最近小さい子の間で流行っているアニメーションの台詞ですよ」


 ガスマスクの人が、声のトーンを上げてそう嘘をついた。

 僕はそんなアニメーション、知らない。


「え、そうなの?」


 わずかに怯えの見える顔を僕に向けるひよりさん。


「そう、ですね」


 僕も嘘をついた。

 でもひよりさんは、それで少し安心した顔になる。


「ところで、ショータさん」

「はい」

「貴方自身は迷惑行為を受けていませんか?」

「僕ですか?

 いえ、受けてません」

「よし!

 いえ、失礼しました。

 もし今後、不快に思うような出来事を強制させられた場合はいつでも遠慮無く呼び出して下さい」

「……貴方は誰ですか?」

「あぁ……私はゲームマスターと言って、ゲーム内の迷惑行為、違反行為の取り締まりを行なっている者です」


 そう言う役割の人がいるのか。


「では、お二人はこれで結構です。

 フィールドと街、どちらへお送りしますか?」

「町でお願いします。あ、白玉」

「召喚獣もちゃんと一緒にお送りします。

 ご安心下さい」

「良かった」

「ショータさんも町でよろしいですか?」

「はい。お願いします」

「では、転送いたします。

 ご協力ありがとうございました」

 

 そう言ってガスマスクの人が頭を下げると同時に視界が暗転する。


『困ったらいつでも、助けてよ、お姉ちゃんと呼ぶのだ呼ぶのだ呼ぶのだ……』


 暗闇の中でそう、聞こえた気がした。


 ◆


 気付くと僕たちは、町の入り口に立っていた。


「駄目だよ。あんな事しちゃ」


 そう、僕の頭に手を置いていって、それから僕の上にいたファントムに手を伸ばす。

 ファントムはおずおずと近づいていったけれど、ひよりさんは今までみたいに顔を強張らせる事は無かった。


 僕達は、冒険者ギルドへ行き依頼を完了させる。

 所持金が20,000G近くになった。


 そして、昨日と同じカフェに。


「お疲れ様! パフェで良い?」

「はい」

「じゃ、順調にお金が稼げたのでここはご馳走しよう!」

「でも」

「ショータ君は、戦うのに弾丸を消費してるでしょ?

 だから、おあいこ」

「はい」

「よろしい」


 ひよりさんは、ニコリと笑って注文を済ます。

 直ぐにパフェが三つテーブルに並ぶ。


「はい。ファントムにも」


 ひよりさんは、僕の方へ二つパフェを寄越す。


「食べれませんよ?」

「良いのー。いただきます」


 そう言ってスプーンを自分の口と、白玉へと交互に運び始めた。


 パフェの一つを、ファントムの方へ差し出す。

 その前で少し嬉しそうに揺れるだけのファントム。

 何だか、よくわからないことばかりだ。


 そして、ひよりさんは仮想ウインドウを開き出す。


「ショータ君、新しいスキル何にするの?」

「まだ、決まってません。ひよりさんは?」

「料理」

「へー」

「全然懐かない白玉を! 食べ物で懐かせるの!」


 懐いていない事は自覚していたのか。


「そして、次は釣りを取るの!

 全ては、白玉の為に!

 そう言えば、ショータ君親密度ってどれくらい?」


 仮装ウインドウを開き確認。


「27ですね」

「え!?」


 ひよりさんが驚きの声を上げる。

 低いのだろうか。


「白玉はどれくらいですか?」

「……2」

「え」

「……笑うなー!」

「いや、笑ってません」


 と言っても白玉が低いのか、ファントムが高いのか。


「あ、リゼ達も来るって」

「わかりました」


 そう答える間に扉がノックされる。


「おかえり!

 勝てた?」


 現れた二人、リゼさんとヴィヴィアンヌさんはしかし冴えない表情。


「駄目だった」

「惨敗」

「へー」

「まあ、暫くはレベル上げだな」

「そうね」

「何があったんですか?」


 苦々しい顔で席に座った二人に尋ねる。


「ここでは無い、隣のエリア。

 ……つまり先だな。

 先へ行くために洞窟を抜ける必要があるのだが、その洞窟の奥にとても強いモンスターが居て道を塞いで居る。

 進むためには倒すしか無いのだが、60人で挑んで駄目だった」

「60人……」


 そう言われてもピンと来なかったけれど、そのモンスターが強そうだと言う事はわかった。


「じゃ、私もついていこうかな。

 レベル上げ」

「ん? 良いのか?」

「うん。私一人だと、ほら、なんて言うの?

 モテモテ?」

「何かあったのか?」


 ひよりさんは掻い摘んで先程の出来事を説明した。


「……そういう輩は、無視してしまうのが一番だ。

 ショータ、気持ちはわかるが、手を出したら負けだぞ」

「あら。

 そんな事言うの?」


 僕に諭すように言ったリゼさんにヴィヴィアンヌさんが口を挟む。


「何だ?」

「私は、そうやって助けてくれた方が嬉しいわね」

「余計なトラブルの元だ」

「そこで助けない男はその後絡まれてしまった女の子とのトラブルが待ってるのよ。

 ショータ君。男は大変ね」

「子供に変な事吹き込むな」


 意見が分かれる二人。


「もうその話は終わり。

 買い物行こう。

 私、調理セット買いたいの」


 それでその話は終わりとなった。

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