97 第三・第四の封印
ヴィヴィアンヌさんから連絡を受けたけれど、一人だと不安だとノルンさんに相談されお供がてら一緒にローズガーデンへ。
「どうかしら?」
出来上がった服を試着し、姿見の前に立つノルンさんにヴィヴィアンヌさんが少し不安そうに問う。
「か、可愛いです。でも……」
「うん。少し、派手になっちゃったわよね。でも、良く似合ってると思うの。ねえ?」
「そうですね。とても良くお似合いですよ」
「そ、そう?」
この場合、これ以外の答えは存在しないと教えられている。
ノルンさんは鏡を見ながらその場で一回転。
真っ赤に染められたフード付きのウールのコート。
従えるのは白黒二匹の狼。
そう言う童話があった気がする。
新しい装備を手に入れ、そして氷原の氷瀑の中に封印の黒い玉を見つけたのが三日後。
フェンリルの一団は、徐々にHPが減少し、ステータスも低下していくという特殊なフォールドでのボス戦も今まで同様にヴォルクさんを中心とした戦いで乗り切ってみせた。
◆
『封印を解かんとする愚か者は誰か……』
「ショータと言います」
三度目の問いかけ。
「封印の言葉を聞かせてください」
「ほう」
現れた、黒い馬人間が僕を見下ろしニヤリと笑う。
「ならば教えよう。
死の女神の名はシャルディーニ」
「シャルディーニ」
「左様。
人の子よ、封印を解く前に我ら四人の守護騎士を必ず呼ぶのだ」
「何故です?」
「主がそれを知る必要はない。
では」
「待ってください」
「何じゃ?
答えは用意しておらぬぞ?」
「いえ。戦いがまだです」
「……良かろう。
捻り潰してくれよう」
僕は黒い馬人間へと銃口を向ける。
◆
第四の封印は、無数の洞窟の中。
その中の何処かにあるだろう。
そう言う見立て。
現れる敵は、ジュエル・パペット。
魔法が効きづらい敵だったけれど、素材として沢山宝石が手に入る。
それは、全てカルテさんに買い取ってもらった。
開拓組の皆は、攻略そっちのけで遺跡の発掘をしているらしい。
ガフさんが何かを見つける度に騒いで鬱陶しいとボヤいていた。
第四の封印を解いたのは、第三の封印を解いてから丁度一週間後。
手に鎌を持つ、青い馬人間。
その攻撃は、一撃でプレイヤーを死に至らしめた。
近接陣がヴォルクさんの盾となり攻撃を肩代わりする隙を縫って、最後は彼の剣がボスを両断した。
流石に死に戻りが多く、次のエリアへと進むのは翌日という話になる。
全員で。
そうヴォルクさんが笑顔で言った。
◆
その前に、僕は一人、再度黒い馬人間の元へと訪れる。
『封印を解かんとする愚か者は誰か……』
「ショータと言います」
四回目の問いかけ。
「死に足らなかったか?」
「いえ。封印の言葉を聞きに参りました」
「そうか。
人の子よ。
ならば覚えよ。
祈りの言葉を。
初めに魔神の名。
次いで、英雄の名。
そして、死の女神へ語りかけよ。
二つの魂へ安らぎを。
そう紡ぐのだ。
それこそが、祈り」
「……魔神の名、英雄の名。死の女神。
二つの魂へ安らぎを」
「それで、万事は上手く行く」
「わかりました」
「では、さらばだ」
「待ってください」
「何だ?」
「一体くらい、一人で倒してみたいのですよ」
僕は静かに銃口を向ける。
◆
「また死んだね」
死に戻った自分の部屋でふわふわと揺れるファントムに声を掛ける。
ファントムは小さくなって、そして横に揺れる。
「どうして一緒に戦ってくれないのかな」
浮かぶファントムに、そう問いかける。
結局四体挑んだ馬人間との戦いで、ファントムが力を貸してくれることは一度もなかった。
ずっと、僕の服の中に隠れていて。
「ま、良いけど。
嫌なことはあるもんね。
お風呂でも行こうか」
そう言うとファントムはピンクに染まる。
一人で戦う事に長けた人。
その人の話でも聞いてこようと思った。
まあ、約束はしていないからお風呂屋さんに居るか定かで無いのだけれど。




