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95 第二の封印

 鉄板に乗って、銃口を下に向ける。


「凄い数だね」


 第二の封印。

 それは火山のマグマの中にあった。


 そして今、フェンリルの一団が敵の軍勢に囲まれて居る。


 中心で向かい合っているのはヴォルクさんと、炎を纏った赤い馬人間。


 その周囲をぐるりと囲む様に、赤い鱗を纏ったリザードマンの軍勢。

 それを中心へと近づけまいとするフェンリルの一団。


 僕とファントムは取り巻きの足止めが役目。

 特に、僕は鉄板から下りると毒ガスの餌食になってしまいすぐに死んでしまうのでここから下りれない。


 勢いはフェンリルが上かな。


 みんなの怒号が轟く。

 一番声が大きいのはヴォルクさん。





<ポーン>

<第二の封印を解除しました>


「はっはっは。完勝だ!」


 ヴォルクさんが嬉しそうに剣を突き上げた。


 ◆


 第一の封印を解き、第二の封印を解くまで一週間程要した。


 来週からは氷原を捜索する予定。

 その前に僕は一人、西の廃墟を訪れていた。


「あるね」


 宙に浮かぶ白い玉。

 手を伸ばし、それに触れる。


 玉が上昇し、膨張して形を変える。


『封印を解かんとする愚か者は誰か……』

「ショータと言います」


 問いかけに答え、名を名乗る。


 宙で姿を変えた馬人間は、腕組みをして僕を見下ろす。


「……お主、一度来ておったな。

 また戦いに来たのか」

「いえ、そちらが戦うと言うのならば相手になりますが」

「では何しに来たのだ?」

「話を聞きに。

 封印とはなんですか?」

「それすら知らずに封印を解いて回っておるのか……。愚か者めが」


 馬の顔を歪めながら、ゆっくりと高度を下げて来る。


「天の神へと通ずる道。

 地の底の魔神。

 その双方を封ずるのがこの地。

 そして、我は地の神が作りし守護者。

 人の子よ。

 天への道を守るは四つの封印。

 そののちに、魔神の封印がある。

 片方のみを解くな。

 言葉を集めよ」

「言葉?」

「左様。

 ……英雄の名は、ウェール」

「どう言う事ですか?」


 しかし、その問いに答えは無かった。

 背を向け立ち去る様にその姿が薄れ、消えて行く。


 ◆


『封印を解かんとする愚か者は誰か……』

「ショータです」


 やがて現れた白い馬人間は、僕を見下ろす少し困った様な顔をする。


「……また来たのか。

 何の用だ?」

「意味深なことだけ言って勝手に消えないで下さい」

「……いや、これしか言えんのだ。

 他の封印を回れ」

「なら、そう言ってから消えて下さい」

「……そうだな。すまん。

 用はそれだけか?」

「いえ。もう一つ。

 折角なので、相手になって下さい」

「……一人で勝てると思うてか?」

「いえ。思ってません。

 その上で、挑みます」


 勝てない敵に挑むこと。

 それは、この世界でしかできない事だから。


「よかろう」


 白い馬人間が、弓を構える。


 ◆



『封印を解かんとする愚か者は誰か……』

「ショータと言います」


 マグマの中から現れた赤い玉が宙へと浮き上がり、炎を上げながら姿を変える。

 赤い馬人間。


「……主、一度来ておるだろう?」

「はい」

「何用か?」

「封印について尋ねに来ました」

「そうか。

 うむ。

 そうでなくてはいけない。

 まず話すべきだ。

 話して尚解決できぬ、そののちに戦争へと至る。

 そうあるべきだ」


 戦争は否定しないのだな。


「白い神に言葉を集めろと言われました」

「ふむ。

 封印されし神の名はデイストルクス」

「それは魔神呼ばれているのですよね?」

「そうだ」

「ならその封印は解かない方が良いのでは無いですか?」

「それはいずれ解かれる定め。

 その時が来た。

 それだけである。

 私の話はそれだけだ」

「待って下さい」

「何だ?」

「戦いがまだですよ」

「人の子が一人で何が出来ると言うのか」

「貴方の体に風穴を開けるくらいは」


 そう言いながら僕は赤い炎の馬人間へ銃口を向け、水の属性弾を撃ち放つ。

 僕の周りに赤い鱗のリザードマンの大群が現れる。


 昨日の戦いには間に合わなかったけど、ヴィヴィアンヌさんに用意してもらったガスマスク、ちゃんと性能評価しないとね。


 右手を馬人間に、左手をリザードマンに向ける。


「行くよ。ファントム!」



 ◆



 何で勝てないんだろうね。

 想定外はあったけれど、それが致命的であった訳では無い。

 そうすると単純に力が足りていない訳で。


「やっぱ、レベルかな」


 ホームの庭で壁に寄りかかり戦いのログを仮想ウインドウに出して眺めながら呟く。


「何?

 反省会?」


 上から掛けられた声に顔を上げる。

 立って僕を見下ろして居たのはベルヒさん。

 僕と同じタイミングでフェンリルに入った人だ。

 今は、ヴォルクさんや蛍さんと同じチームになっている。


「そうですね」

「やっと自分の力不足を実感した?」


 やっと、とはどう言うことだろう。


「お前さ、みんなのお気に入りか何か知らないけど、もうちょっと真剣にやってくんない?」


 そう、やや怒りを滲ませた声。


「真剣に?」


 問いかける僕にベルヒさんが丁寧に説明してくれる。

 何が彼の気に障ったのかを。


「昨日のボス戦だって、お前だけ全然ダメージ稼いで無いだろう。

 上から眺めていただけで。

 それにレベルだって周りから一回り以上離されてんだぞ?

 この前のイベントで一気に稼ぐのかと思ってたら全然そんな事無いし」

「はあ」

「ここでさ、くまこさんに抱きついてる暇あるならレベル上げにでも行けっつーの」

「抱きついている訳では無いです。稽古なので」

「稽古、ね。

 じゃ、俺ともやろうぜ」


 そう言いながら三歩程下がって身構える。


「良いですよ」


 ウインドウを消して立ち上がる。

 彼が武器を手にしたので、僕もナイフを。

 武器が見える様に、一度彼に見せつけてから握りしめる。

 本当は隠しておいた方が良いのだけれど、騙し討ちで勝っても納得しないだろうから。


 彼が手にするのは刃の無い八角形の長い棒。

 僕自身、小柄なこともあるけれどリーチを有効に使われると不利な相手だな。

 そんな事、銃であれば全く関係ないのだけれど。


 くまこさん以外の人へ格闘がどれだけ通用するのか。


 初撃を躱し、振り下ろされた棒を上から踏みつける。

 しかし、そのまま真上に払われ体勢を崩された。


 うーん、軽いな。この体は。

 棒の上に乗ったところで何の障害にもなってないのがよくわかる。


 それを嘆いても仕方ない。

 跳ね飛ばされた反動を利用して、一気に間合いを詰める。


 そのまま、右手を振り抜くが一歩後退するだけであっさりと躱される。


 再び間合いを取る。


 さて、どうしようか。

 奇襲なら、ここで手の中のナイフを投げるのが常套かな。


 だが、その勝負は闖入者の存在によって中断する。


「ぶへぇ!?」


 突然現れた蛍さんが、ベルヒさんの首に回転蹴りを食らわせ吹き飛ばす。


「つまんねー事言ってんじゃねーよ」


 地に転がったベルヒさんを見下ろしながら蛍さんが笑顔で言う。


「聞いてたんですか!?」

「いや? たまたま通りかかっただけ」

「じゃ、何で?」

「お前、言いそうじゃん。

 ほら、フィールド行くぞ」

「は、はい」


 蛍さんが僕の方を一瞥して、二人は去って行った。


 ……まあ、初撃は躱せたから及第点かな。

 デスペナルティー中で、ステータスが低下している分を差し引いても。


「あんま、気にすんな」


 ホームの窓から、ハヤトさんか顔を出していた。


「聞いてたんですか?」

「まあな」

「そうですか」

「レベル上げを強制してる訳でも無いし、この先するつもりも無い。

 だから好きにやれよ」

「はい。そのつもりです」


 そう答えた僕に、なぜかハヤトさんは顔を顰めるてから立ち去って行く。


「ちっとは気にしろや」


 そんな呟きが聞こえた様な気がしたけれど。

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