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93 反省会

「おはようございます」

「おはようございます」


 クランホームには、にこやかな笑みを浮かべた黒さん。

 でも、何時もとは少し様子が違う。


「すいません。

 今日は、一日自由行動として下さい」

「そうですか。

 わかりました」


 ならば、少し草原にでも行こうかな。


「んー! んんんん、んんんんーー」

「うるさいですよ」


 黒さんが布団で簀巻きにされ、猿轡を嵌められたアマリさんに笑みを浮かべながら注意する。

 その状態で上から逆さ吊りにされ、身をよじりながら涙目で僕の方を見るアマリさん。

 体に『反省中』と書かれた紙が一枚貼られている。


 喋れはしないけれど<HELP!>と言うスタンプが彼女の周りにいくつも現れる。


「一応、聞きますけど何をしたんですか?」

「毒にも薬にもならない嘘をばら撒いていたので反省してもらってます」

「んーんーんー!」

「どんな嘘ですか?」

「……私とハヤトが結婚しているなどと言う馬鹿みたいな嘘です」

「ああ、嘘だったんですか」

「嘘ですよ……どうして皆さん信じるんでしょうね……」

「んーんーんー、んーんー!」

「うるさいですよ。

 何と言おうと今日一日そのまま反省してもらいます」

「んー! んんー!」

「じゃ、僕は失礼します。

 アマリさん……えっと……」


 何と声をかければ良いのだろう。


「えっと……お手柔らかに」


 少し考え、そう言い残し立ち去った。


 ◆


「ううううぅ……ぎもぢわるいぃぃぃぃ……」


 フェンリルのクランホームの庭でアマリさんが大の字になって死にそうな声を出す。

 聞けば結局半日以上、逆さ吊りにされていたようだ。


「つまらない嘘を吐くからだろ」


 五郎と格闘しながらくまこさんが言う。


「いつ言ったかも覚えてない様な事を、信じてたアンタに驚きだよ……」

「何でそんな嘘ついたんですか?」

「何でだろう……腐女子受けでも狙ってたのかな。

 薄い本作って裏で売っていた様な……うっ、頭が……」


 そう言いながらアマリさんは片手で頭を抑える。

 彼女は今、庭の芝生の上に座った僕の足の上に頭を乗せている。

 いわゆる、膝枕というものらしい。

「世界が逆さに見える。このままでは死んでしまう。ショタ君助けて」と懇願され、結果、こういう事になった。

 重いのでそろそろどいてほしいのだけれど。


 何故かファントムも上で赤くなって怒っているみたいだし。


 そろそろ帰りたいな。

 そう思い始めたタイミングで僕の横に突然人が現れる。


「もうそろそろ、宜しいのではないですか?」


 アマリさんを見下ろしながら鋭い口調で言ったのはガスマスクさん。


「何が!?」


 僕の足の上でアマリさんが怒鳴り声を上げる。


「それ以上は、セクシャルハラスメントとみなしますが」

「どうしてさ! ただのコミュニケーションじゃん!」

「ならば、徐々に顔を股間に近づけているのは何故ですか?」


 なんかモゾモゾ頭を動かしてると思ったらそういう事か。


「大体、このタイミングで出てくるっておかしいだろ!

 さっきまで私がとんでもない暴力行為にさらされていたのに!」

「ならばその時にGMコールをしてください」

「じゃ、何で今は勝手に出てくるのよ!?」

「ショタの危機だからです!」

「そうか。ならば仕方ない」

「納得していただけたようで何よりです。

 それでは離れてください」

「納得はした。

 でも、離れない」

「BANしますよ?」

「汚ねぇよ! やることが! 権力振りかざしやがって!」


 そう叫びながらアマリさんはやっと僕の上から起き上がる。


「皆様、お騒がせしました。

 引き続き、Vinculum Onlineをお楽しみください」


 納得したように頷き、周囲を見渡し、一礼してからガスマスクさんは消えて行った。


「嫁は! 渡さないからな!!」


 虚空に向けアマリさんが叫ぶ!

 そして、上空でファントムが同意するように縦に震える。


「あ、嫁じゃないです」


 ノルンさんが、目を見開いてこちらを見ていたので訂正する。

 あ、ガスマスク、聞きそびれたなぁ。

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