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01 チュートリアル

「ようこそ。Vinculum(ウィンクルム) Onlineオンラインへ」


 突然僕の目の前に、中世のドレスを身に纏った女の子が現れ、微笑みながら僕を歓迎した。

 右の目には、革のバンドで片眼鏡を装着して、鎖が垂れ下がっている。

 そのグラスの奥と左の瞳は金色。

 不思議な雰囲気を感じさせる、そんな女の人。


 その後ろには、白い雲がゆっくりと流れる大空。


Vinculum(ウィンクルム) Onlineオンラインは魔物の支配された世界を平和にするために多数のプレイヤーで協力し攻略して行くゲームです。

 その中で、武器を手に取り、魔法を操り果敢に魔物に挑むも、仲間を支えるサポートに徹するもすべてプレイヤーの自由。

 目指す目標は、魔王の討伐ただ一つです。

 申し遅れました。

 私はオペレーターを務めさせていただきます、メーアと申します」


 ふわふわと宙に浮く女の子が滑らかに説明をして頭を下げる。

 つられて僕も。


「まずは、ゲーム内で使うお名前をお聞かせ下さい」

「ゲーム内で? 戸籍の名前じゃなくてですか?」

「戸籍上でのお名前でも構いませんが、無用なトラブルを避けるためゲーム内でのみ使うお名前を推奨しています」

「そうですか」


 僕は少し考えてから答える。


「ショータ。それでお願いします」


 竹内たけうち翔太郎しょうたろう

 それが、僕の今の戸籍上の名前で、その前はショーンと呼ばれていた。

 名前なんて、自と他を区別する記号でしか無い。

 メーアは「かしこまりました」と頷いた後、宙に操作パネルのような物を出現させそれを両手で操作する。


「ショータさんですね。では設定を進めます。

 続きまして、ゲーム内で使用するアバターの設定に移ります」

「アバター? 何ですか? それは」

「ゲーム内で使用するショータさんの体になります。

 見たところ、既に設定済みのデータ等は無い様ですので、こちらでショータ様の生体データから一度お作りして、細部をカスタマイズして頂くと言う事でいかがでしょうか?」

「よくわからないのでそれでお願いします」

「かしこまりました」


 再び、メーアが操作パネルに手を。

 すると、僕と彼女との間に、見慣れた僕の姿が現れる。

 見たことのないアースカラーの服を身にまとっているけれど、それ意外は現実の僕と全く同じ姿に見えた。


「すごい。魔法みたいですね」

「魔法ですので」


 メーアはさも当然かのように言い切って、僕にはそれが嘘であると確信することが出来なかった。

 よく考えたら相手は人で無く、プログラムされた存在なのだろうから、声色から感情を読み取れるわけは無いか。


「ただし、このままですと現実のお姿そのままですので少し変化を持たせたほうが良いかと思います。

 例えば、髪や目の色を替えるだけでもガラリと印象が変わりますよ」

「髪の色……」


 そう言われても僕はとっさに答えが浮かばなかった。


「後から変更することも可能ですので、まずは私の方で設定いたしましょうか?」

「お願いします」


 全てが初めてで勝手が全然わからない僕は、彼女の提案を受け入れることにした。


「では…………いかがでしょうか?」


 ホワイトブロンドに緑色の目。それだけで全然印象が違う。


「すごい。素敵ですね」

「へへへへー」

「これでお願いします」


 得意げに笑う彼女が操作パネルを指で叩くと、目の前の僕の姿は消えそして、今まで自覚できなかった自分の体を感じるようになった。

 つまり、今僕はさっきまで目の前に居た、あの姿になっているのだろう。


「続いて、スキルとアビリティ、武器を選択してください。

 仮想ウインドウを操作して、お好きなスキルとアビリティを五つまで。

 お好きな武器を一つまでお選びください」


 僕の目の前に、仮想ウインドウと呼ばれる半透明のウインドウが出現する。

 その中に、<スキル>、<アビリティ>、<武器>のリスト。

 軽くスクロールしてみるが、結構な量だ。


「こう言うゲームって初めてで、全然わからないんです」


 僕は、正直に言う。


「はい。かしこまりました。まず……」


 メーアは、丁寧にゲームのシステムについて説明してくれた。

 基本的に敵を倒して、経験値とお金、素材を得て強くなることを目指すゲームであること。

 そして、ゲームを有利に運ぶために<スキル>と<アビリティ>と言うシステムがあること。

 攻撃の時に技を繰り出すスキルや、魔法を使うスキル。

 武器、防具を作り出すスキルや、その素材を見つけ出すスキル。

 そして、自分に様々な特徴を持たせるアビリティ。

 使う事で成長し強くなって行くスキル。一度取得すれば効果は変わらないアビリティ。

 このスキルとアビリティを組み合わせて自分を強くするのだと。


「……」


 その説明を聞いて、でも、僕はリストの中から何を選べば良いのかわからずに固まったまま。

 スキルとアビリティの取得に必要なSPスキルポイントが50与えられていて、一つ取得するのに最低でもSPを10消費する。

 どう使えばいいか考えあぐねていた。

 そんな様子を見かねてか、メーアが助け舟を出してくる。


「ショータさんは、何を目的としてこのゲームに来られましたか?」

「目的?」

「はい。

 例えば、ばっさばっさと敵を斬り殺して行きたいとか、派手な魔法でまとめてぶっ飛ばしたいとか、世に無いものを作り出して大富豪になりたいとか、あるいは、仲間とワイワイと楽しみたいなど、このゲームをプレイする人の目的は様々です」


 言われ、僕はこのゲームをやろうと思ったきっかけを口にする。


「友達……友達が欲しいです」

「友達ですか。

 であるならば、例えば武器や防具を作って売る生産職系のスキルはいかがでしょう。

 ショータさんの頑張り次第で幅広い交友関係を構築することも可能です」

「それは、商談相手ですよね?」


 もしかしたらそれも友達と呼べるのかも知れないけれど、僕の知っている商売人には少なくとも友達は居ない。


「失礼しました。では……【召喚】スキルなどいかがでしょう?」

「召喚?」

「はい。召喚獣と呼ばれるパートナーを使役して共に戦うスキルです。

 友達、とは少し違うかもしれませんが意志のある存在ですので、一緒に過ごすことで互いに信頼し合う良きパートナーとなるかと思います」

「信頼……パートナー……」


 僕は、その言葉に惹かれ彼女の薦めの通り【召喚】のスキルを手に入れる。


 まだ取れるのだが、メーアに後でも取れるので必要なものが見つかるまで溜めておくのも良いと言われ、従うことにした。


 そして、武器。


 剣や、槍、刀などの刃物が並ぶ中、僕は唯一使用経験のある銃を選ぶことにした。

 しかし、現れた銃は僕の知っている黒い塊ではなく、まるでアンティークの骨董品のような細工の施された品だった。


「さっそく、アビリティが必要になりましたね」

「どうしてです?」


 手にした銃を観察しながらメーアさんに問う。


「もちろん無くても問題ありませんが、【狙撃】のアビリティを持っていると、命中率にボーナスが入ります。

 的がより大きく捉えられるようになるのです」

「試し撃ちしてみていいですか?」

「ええ。構いません」


 メーアがパネルを操作すると、宙に中心が赤く塗られた六重の円形のターゲットが出現する。


「距離は?」


 他に対比物が無いので良くわからない。


「三十メートルです」


 僕は右手で銃を持ち、的に狙いを定め静かに引き金を引く。

 小さな渇いた音と、反動が手に伝わる。

 でも跳ね上がるほどの勢いではなく、連射に向きだなと、そう思った。

 放たれた弾は、中心の赤玉を大きく下にずれかろうじて的を捉えた。

 僕は狙いを補正して再度引き金を引く。

 今度は赤丸の僅かに上。

 再度補正。

 中心を撃ち抜く。

 続けて三射。

 狙いは違わず、中心を捉えた様だ。

 七度目に引き金を引いたが弾は出なかった。


「お見事です。狙撃、要らないですね」


 メーアが感心するように手を叩く。


「その銃は連続射撃が六発まで可能。リロードは側面にあるレバーを引いて戻してください」


 言われた通り、銃の横につけられた謎のレバーを引くと、カチリと音がしてレバーがひとりでに戻る。

 的に向け再度引き金を引くと、小さな音とともに弾が出た。


「弾は消耗品ですが、残数がある限りはアイテムボックスの中から装填出来ます。

 初期装備として二百発お渡ししますが、撃ちきった場合は町のショップか、他のプレイヤー様などからご購入ください」

「わかりました」


 僕は右の腰にいつの間にか付いていたホルスターへ銃を仕舞う。


「【狙撃】は不要そうですが【銃技】のスキルを取得してセットしておくと、MPメンタルポイントを使用して、武技アーツと言う強力な必殺技を繰り出すことが出来るようになります。

 おすすめですよ」

「そう言うのもあるんですね」

「以上で初期設定は完了です。

 召喚スキルについては、初めの町の南に召喚師の方が住んで居る家がありますので、そちらに行けばより詳しく教えて頂けますよ」

「ありがとうございます」

「他にプレイ中に困った事がありましたら、いつでもメニューの問い合わせを選んで下さい。

 そして、可愛く『助けてよ。お姉ちゃん』と言うのだ!」


 言うのだ言うのだ言うのだ言うのだ………。


 と最後の言葉が反響しながら視界が暗くなる。


 そして、僕は赤いレンガ造りの家が立ち並ぶ街角の広場に立って居た。

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