4章 戦士の休息(4)
日曜日である。
体は清潔にした。服は動きやすく見栄えが良さそうなのを着てきた。少ない有り金は全部持った。
(問題はねえ、はず!)
健斗は待ち合わせ場所へ向かいながら、もう一度自分の身なりを確認していた。夏希以外の友達と出歩く用事ができたのは数年ぶりのことだ。粗相がないようにしなければいけない、と気合が入っており、一言で言えば浮かれていた。
普段は付けないようなお下がりの腕時計を見て時刻を確認する。九時五十分。十分間に合っている。分かってはいたことだが安心して、時計塔のある広場までたどり着く。
どうやって暇をつぶそうか考える間もなく待ち人はやってきた。「北野さーん!」と少し大きめの声が響くが、それなりの人通りがあるためそこまでうるさいものではない。
少し離れたところから徐々に近づき、向かい合わせで立ち止まる。朝の挨拶を交わしながら、健斗は春香をじっと眺めた。
栗色の髪はいつもよりふわふわしており、服装は上が白いシャツの上にピンクの羽織りもの、下が紺色のスカートに白いハイソックス。手に茶色がかっている手提げ袋を提げている。いつも見ている制服と違い、全てが新鮮に映る。気合いが入っているようだ。
(こういうときは、えーっと)
昔夏希に教えられたことを思い出しながら、健斗は言葉を紡ぐ。
「アレだな、なんか今日の冬宮は可愛いな!」
残念ながら健斗には語彙がなかった。我ながら酷いと後悔する。
「そうですか? えへへ、頑張った甲斐がありました」
しかし春香はそれで喜んでいるようだった。花のような笑顔を向けられて、何故か少し照れくさくなる。まず女の子の服装は褒めろという幼なじみの教えは正しかったようだ。
「その、健斗さんもなかなかイケてますね。おしゃれ好きなんですか?」
「ああ、これ夏希に選んで貰ったヤツなんだぜ! アイツなかなかにセンスよくてさー」
自慢するように首元のシャツを摘んで、引っ張り上げる。健斗としては幼なじみのセンスを褒められたのが嬉しくて、ありのままを伝えただけなのだが、
「……そう、ですか」
春香の反応は悪かった。何か間違ったことでも言っただろうか? 健斗は首を捻る。
何かを考え込むような春香だったが、突如顔を上げて健斗に近づけた。
「北野さん、服買いましょう!」
「服だと? 映画の時間は?」
「まだまだ時間はあります、大丈夫です!」
自信満々に春香は言い切る。その目は使命感に燃えていた。詳細な時間は知らないが、そう春香が言うのなら大丈夫だろう。
「そんじゃ歩くか。どの店行くんだ?」
「えっと、私のお気に入りのところがありまして」
特に拒否する理由のない健斗は、春香に道案内を任せて繁華街に足を進めた。




