とりあえず新たに四つ
ユイは早速【露店】で購入した書物をアイテム欄から引き出すと、使用の文字をタッチする。すると目の前に本が現れパラパラとページが勝手に開かれたと思えば、淡い光となって虚空へと消えていく。そしてスクリーンが表示され──
『【スキル:ダッシュ】を取得しました』
この作業をあと三回やった後、ユイはステータス画面を確認する。
ユイ Lv.6
【HP 30/30】
【MP 30/30】
【STR/36】
【INT/1】
【VIT/1】
【AGI/1】
【DEX/1】
【LUC/1】
称号:【スライムイレイザー】
スキル:【ダブルアタック】【トリプルアタック】【ダッシュ】
【極稀な奇跡】【ハイジャンプ】【パワーコネクト】
武器
右腕 【素手】
左腕 【素手】
防具
頭 【ボロボロの兜】
体 【ヨレヨレの服】
足 【ダボダボのズボン】
靴 【ズタズタの靴】
装飾品 【無し】
装飾品 【無し】
【極稀な奇跡】
約0.1%の確率で致死性のダメージを与える。【Luc】の値が50以上で取得出来る。
【ハイジャンプ】
5mの垂直跳びが可能になる。
【パワーコネクト】
自身の【STR】を仲間と共有する。【DEX】の値が50以上で取得出来る。
「本当はもう少し移動系のスキルが欲しかったんだけどにゃあ〜」
「別にいいよ。それに結局エースのお金を…」
二人は【露店】を物色しながらエースオススメの店に行き、移動系である【ダッシュ】を買った。その後更にユイにはこれとかいいと思うよ! と言って素早く先程廻った【露店】の中から、格安で売られていた書物をプレゼントしたエース。格安と言ってもユイからすれば高級品である。本当ならばユイが払わねばならないところだが、エースは「今後スキル取得とか手伝って貰うんだから先行投資って事さね」と少ないお金を差し出したのを断られてしまった。
「この後防具を見に行く予定なんだし、その資金に取っておきたまえ」
「…うん、ありがと。じゃあ頑張ってエースに肩を並べるぐらいにならなきゃだね!」
「おうともさ!」
そうして二人は【防具屋】に向かう最中、先程のスキルについて軽く質問をする。
「でさ、さっきエースがくれたスキルって結局どういう効果なの?」
「ん? ああ、そういや言って無かったね。んじゃよく聞きたまえよユイ君。特にチミは覚えが悪ひゃうっ」
「悪かったですね先生」
「ひゃっ、やめっ」
無言で脇腹をツンツンすると身体をくねらせ悶えるエース。早々に白旗を振るとユイは会話を戻す。
「もう慣れたけどね」
「慣れたならつつかないで欲しかったぜ」
「で?」
「ああ、うん。まず【ハイジャンプ】ってのは単純にジャンプしまくってたら取れるスキルだね。簡単だけど結構しんどいから公式すらも購入推奨されているやつだね」
「でも【譲渡】したらスキル消えちゃうんでしょ?」
「そりゃあ…ああ、売る側がまた一から取らなきゃいけないかって事なら問題無いよ。書物にした後なら【複製】ってスキルがあればコピー出来るからね。まああれもコスパよくないんだけど」
「何か色々出来るんだね」
「うむ。あるブロガーは言った。『OOOではスキルさえ有れば何でも出来る』と」
これは事実である。スキルさえ有れば超レアアイテムまで【複製】出来たりするのである。そのコストから目を背ければだが。
「何か色々やる事多くて迷っちゃいそうだね」
「まあ単純にスキル集めだけでも楽しいしね。で【パワーコネクト】と【極稀な奇跡】、取得条件が書いてある通りでステータスに依存するタイプだね。【パワーコネクト】は使うと掛けた相手の【STR】が自分と同じになるってスキルだね。これは強化にも防御にも使えて、例えばユイが私に使えば私が超パワーアップする訳だけど、逆に私がユイに使うとユイは弱体化するって訳なのさ」
「おー、そういう使い方するんだ!」
「スキルは色々幅広いからね。もう一つの【極稀な奇跡】は【Luc】依存で、多く振っているほど確率も上がるってスキルだね。まあユイは【Luc】1だから使える代物じゃないんだけど。ボスとかにも効果無いし。まっ、捨て値で売られていたから思わず買っちまったぜ」
二人で【露店】を見ている時にも同じ事を言っていたエースだが、捨て値であっても大体一つのスキルに対して1000palほどであり、初期の手持ち3000pal、【素手】の場合は3500palなのでとてもじゃないが手を出すのはためらってしまう額だ。スライムを倒した時にドロップしたアイテムを売る事も考えたが、道具は無限に持てるらしく合成やクエストなどでも使うので残した方がいいよ〜、と結局は売らずにいた。
スキルがこれだけ高いのだから、防具はどれほど…と心配になってくるユイ。しかしエースは気にせずに【防具屋】へと案内する。
町に入る大きな橋からすぐの場所に【露店】、中央には【教会】、そしてその奥に進んだところにあるのが【防具屋】だ。【教会】を色々な角度から堪能しながらも目的地に到着した二人は、年季の入った木製の建物の中へと入っていった。