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とりあえず殴ればいいと言われたので  作者: 杜邪悠久
第一章 初心者
7/87

とりあえずステータスを振ったけど…

「全く。チミはお堅いですなぁ。あ、そう言えばお堅いで思い出したけど、そろそろステータスどう振るか決めないと敵が固くて倒せなくなるよ」

「そうなの?」

「うん。レベルが上がって来ると次のレベルに上がる為の必要な経験値が増えてくからね。スライムだけで上げるにも限界があるし」


 これもホントは今更過ぎるんだけどユイは知らないよねー、と小声で言っているエースだが、本人の声量が大きい為ほとんど小声になって無い。まあ昔からなので別にこれこそ今更なんだけどね。

 そういう基礎知識を一通り話してもらった後、話はエースはどんなステータスに振っているのか、そんな話になる。


「なるほろなるほろ。お姉さんのステータスが見たいと言う訳だね。仕方ない。親友権限でスキル以外を特別に見せてあげよう!」


 なんでもOOOではスキル重視ゲーなのでスキルを把握されるのはフレンドまで! みたいな風潮があるらしい。なんかゲームなのに色々しがらみがあるんだなぁ。

 そしてエースは慣れた手付きでスクリーンを開く。設定から他人が見れる項目を変えられるそうで、素早くスキル以外に変更し私の頭を掴み、その豊満な()乳へと押し当てながら見せてきた。


「ほれ、これがええんやろ?」


 もう少し女の子っぽく振る舞えば可愛いんだけどなぁ。まあ一華だし無理か。そんな事を思いつつスクリーンへと目をやる。



 エース Lv.50

【HP 327/30(+500)】

【MP 485/775】

【STR/1】

【INT/150】

【VIT/1(+100)】

【AGI/1(+60)】

【DEX/107】

【LUC/1】



 レベル50が現状の最大らしいが、レベルを上げる事自体はさほど難しい訳じゃない為、他のプレイヤーでも普通にカンストは存在している。だがユイには親友がまるで頂点に居るような凄い人に見えた。中身は少し残念だけど。


「初期SP10でレベルアップ毎にSP5、ステータスはVITがHPに、INTがMPに作用ね。で、HPとMPはステータス1振る毎に5上がっていくから、単純に素を上げたかったらそれに振るのもありだよ」

「なるほど。じゃあエースは生産とかする感じなの?」

「まあ大まかに言えばねー。だって自分で色々なものを生み出せるんだよ!? 超ワクワクするじゃん!」

「ははっ、エースらしいね」


 昔からそうだ。自分がやりたいと思った事は迷わずやる、そんな性格だった。彼女は幼いから今はこうできっと未来では立派に女の子しているんだろうと淡い夢を見た事もあったが、結果としてはこの通りである。今も目を輝かせて胸をぷよんぷよんと揺らす親友を見て、本当に楽しいんだろうなとホッコリする自分もきっと毒されているんだな。


「何お婆ちゃんみたいな顔しているの?」

「誰がお婆ちゃんか!」


 軽くチョップをかました後、いつもの漫才を挟み、そして本題のステ振りに。


「うーん。HPかぁ」

「VIT上げれば痛みとかも軽減出来るよ」

「でもゲームでしょ?」

「ん? んーまあ」


 どうやら前半にスライムに体当たりされた事を基準に考えているユイ。あの経験を覚えてしまっている為、痛みもあの程度と考えており、また今回の狩りまくりの最中に本人は無意識に敵の攻撃を避けていたりした為、余計に擦り込まれている様子。

 だがプレイスタイルは千差万別。皆違って皆いい、がモットーのエースにとっては、効率や人気よりも何をしたいかと言う意思を尊重したい訳で。要は本人のやりたいようにさせてあげたい、けどちょっとはアドバイスする、という感じである。


 そしてユイは思った。

 殴れば倒せるのであれば【HP】や【魔法】など使わなくても大丈夫だよね、と。思い立ったが吉日、ユイはステータス画面の【STR】に全ての【SP】を注ぎ込んでいく。だが流石にそれは! とエースは手を伸ばし止めようとしたが一歩届かず。


「ああー! やっちゃったかー」


 そう言って頭を抱えるエースを見て、自分は何かやらかしたのだと悟る。


「え? 何か駄目だった?」

「いや、確かに極振りは強いっちゃ強いんだけど。でもなぁ…」


 返答に困り考えるエース。そんなに悩むほどの失態を犯してしまったのかと不安になり、次第に泣きそうな顔になってく私を見て、エースはおもむろにギュッと抱きしめてきた。


「大丈夫。そうだよ、殴れば勝てるんだから何も問題無いよ」

「でも…でも……」

「確かに機動力や打たれ弱さはあるけど、そこはOOOのいいところ、大体はスキルで補えるからね。アッシの知ってる範囲で使えそうなスキルを集めて回ろう」


 そう言うとエースは、私を初めて外の世界へと連れ出してくれたあの日のような笑顔で、私の手を取り駆け出す。

 いきなり引っ張られ体勢を崩すも、エースはすかさず抱きとめ決め顔で言い放つ。


「大丈夫。ユイはボクが守る!」

「もー、それ泣きそうな時に言うの、ずるいよ」


 すっかりいつもの調子へと引き戻されたユイは、エースの手を握り直し、同じ歩幅で駆け出した。

 二人は森を抜けるとスキルを求めて次の町へと向かう。

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