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とりあえず殴ればいいと言われたので  作者: 杜邪悠久
第四章 悪質ギルドと戦闘準備
33/87

とりあえず平常運転と勝算

前話に大幅な修正が入っています。

それと今日から定期更新から不定期更新に変わります。年末年始は特に用事が多いので。

「なるほどのう。”ギルド荒らし”が来ていたとはな」


 エースから連絡を受けた伯爵さんは、直ぐにギルドへと戻ってきた。ただ部屋に居た私達の後ろ、【修練所】の方から現れた時はめちゃくちゃびっくりしたけど。





 ──数分前


「おい、エース。ちゃんと教えてやっとらんか!」

「あ、ごめんごめん。あまりのシリアスにそう言えば忘れてたわ」


 後ろから来た伯爵さんにびっくりしていると、エースは舌をペロッと出し片手を後頭部に当てる。


「ギルドには幾つか機能があって、それは【EP】やお金を注ぎ込む事で得られるんだけど。その中の一つ、【ギルドポータル】を使ったのさ」

「【ギルドポータル】とは、まあ要はギルドにワープ出来るという機能です。ユイさんがマスターなので、転移先はギルド内であれば何処にでも設定出来ますが、初期位置は【修練所】奥の裏庭ですね」


 そう言えば色々見て回った時、裏庭に巨大なオブジェが飾ってあった。緑色の巨大な結晶で、正直邪魔だなって思うぐらいド真ん中にあったのでよく覚えている。エースは「最初はこんなもの無いんだけどね」とか言ってたけど、【ギルドポータル】が使える証みたいなものなのか、なるなる。

 でもいちいち裏庭から来るのも面倒なので、私は【ギルド】のページから【ギルドポータル】の位置を酒場に設定する。ちなみに最初「酒場っぽい場所」と言ってたが、マップを見ると名前が本当に「酒場」だった。むしろギルドのマップが出た方に驚きだけど。





 閑話休題。

 伯爵さんと別れた後の事や青薔薇が標的(ギルド)を物色させられに行っていた事などを洗いざらい聞いた後、伯爵さんと青薔薇さんは何かを話しているようだった。


 そして、事情を聞いた伯爵さんはエースに訊ねる。


「話は概ね理解した。しかしエースよ、何故勝負を仕掛けた? 別にする必要の無い勝負じゃろ?」


 そう言われたエースは、また不機嫌な顔になりながら言う。


「昔”悪食”って居たでしょ?」

「ああ。よくイベントで”自爆姫”と戦っとったアイツか」


 この”悪食”やらは、ランカーや有名人が呼ばれる時の通り名みたいなものらしい。伯爵さんが来るまでにエースが青薔薇さんの事を”俺達の紳士”と呼んだ事から聞いた事だった。

 青薔薇的にはこの通り名が嫌いらしく、むしろエロい事もしたくないらしい。極論、一人で居たいとの事。エースも自分の通り名には納得してないらしい。”害悪”と聞いて思わず吹き出してしまったけれど。


「その”悪食”とはよく冒険に行ってたんだけどさ。急に連絡が取れなくなった事があってさ。それであちこち行ってようやく出会って話を聞いたら『ギルドが潰された』って言われてね」

「なるほどのう。あの”悪食”が」

「あの子も強いのは強いんだけど集団戦が苦手じゃない? 向こうの提示した内容でも本人的には行ける! って思って合意しちゃったらしいんだけど──結果は惨敗。掛け金に自分の装備全部掛けてたらしくってね」

「ああ、引退したのはそのせいか」

「うん。結局元ギルメン以外、私にしか言わずにゲームを去っちゃってね」


 そう言うエースはとても寂しい顔をしている。だが次の瞬間にはクワッと目を見開き、後ろに炎が見えるほどのテンションで腕を突き上げる。


「だからアッシは皆の為に、そして愛しき嫁とのイチャイチャを守る為に戦うのさ!」

「いい話じゃったのに……」

「いい話だったのに……」


 私と伯爵さんの意見がハモる。青薔薇さんは虚ろな目をしている。


「まあ冗談をさておき」

「冗談というか願望じゃろ」

「運営も動かないって言うんなら、私達がここで思い切り叩きのめしてやろうじゃないかって話だよ」

「勝算はあるんじゃろうな?」


 疑問を口にする伯爵さんに、高らかに答えるエース。


「無い!」

「はぁ?」

「当たって砕けよ!」

「はぁ〜」


 伯爵さんがそれはそれは深い溜息を吐く。その間、尻尾をぶんぶんと振り回し、隣に居た青薔薇さんにバシバシ当たっている。伯爵さん気付いて!


「つまり、ノープランって事かの」

「いや、とりあえず向こうの助っ人はギルド1でこっちは3だから何とかなるでしょ」

「全く。相変わらず過ぎてもう面倒くさいわ。負けたら【デュエル】の掛け金は絶対【譲渡】せねばならんのじゃぞ?」

「大丈夫。だからまずは伯爵の作ったギルドに声掛けして欲しいなーと」


 それを聞いて耳をピンと立たせる伯爵さん。エースはキラキラとした眼差しを向けている。


「はぁ〜。それが狙いか」

「頼んます!」

「やれやれ。折角隠居した身でこんな早く力を借りねばならん事になるとは」

「ふふふ、流石伯爵。ユイの十六番目ぐらいに愛しているぜー!」


「なんて微妙な順番なんじゃ」と小声で聞こえるが全く気にしないエース。笑うエースに伯爵さんは思い出したように言う。


「そう言えばエースよ」

「ん?」

「ユイさんは【レベル解放】しとるのか?」

「あ、ホントだ! 多分上限10のままかも」

「対戦は三日後じゃろ? ならパワーレベリングで20まで上げるとしよう。後のイベントにも影響するじゃろうし」

「でも、パーティーを組むとそれも出来ないんですよね?」


 二人は互いの顔を見てニヤリと笑い合う。そういう姿は本当にそっくりに見える。


「パーティーを組まなければいいのですよ」

「そっ。そしてユイには黒竜(ブラックドラゴン)への挑戦権を進呈するぜ!」



 エースの不穏な言葉に、私はこの先の不安が拭えない。 


多分今年最後の投稿になりそうなので、皆様よいお年を。


エース「お年玉プリーズ!」

ユイ「まだ明けてないからね?」

伯爵「マタタビ食べたい」

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