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とりあえず殴ればいいと言われたので  作者: 杜邪悠久
第三章 ギルドと解明
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とりあえずギルドの名前は

 ギルドマスターになった私の最初の仕事は、ギルドの名前を考える事だった。

 スクリーンが表示され、ギルドマスターを選択した後、『ギルド名を入力して下さい』と出る。ギルド名かあ。


「私とあなたの愛の巣」

「やめい」

「じゃあ伯爵ならなんて付けるの?」

「それを元ギルマスの私に言うのですか」

「やっぱり敬語の方が伯爵っぽいね。何か素はオッサン臭い」

「分かってて言ってるじゃろ!」


 後ろでまた言い合う二人は無視して。うーん……あ!

 思いつきでそのまま入力を完了すると、エースと伯爵さんに見せに行く。


「エース、伯爵さん決まったよ!」

「お? どれどれ」

「ギルド【唯一無二】」

「ね? いいでしょ」


 キラキラと笑うユイの笑顔に、突っ込もうとした言葉を飲み込む二人。そしてユイから少し離れ、コソコソと会話しだす。


「何か……中二病のような」

「言わないで。そういやネーミングセンスもあんまり良くなかったような」

「大丈夫なのか? お前さんになられるのは、と思って薦めたが」

「いや、うん大丈夫!」


 そして戻ってきた二人。ユイは気に入らなかったのかと若干しょんぼりしている。


「ちなみにユイ、何でこの名前にしたの?」

「だって、私とエースの名前を合わせると唯一でしょ? だからここが私達の【唯一無二】な場所になればいいなと思って……。でもごめん、気に入らなかっ、わわっ」

「うおー! なんて可愛いんだ我が嫁はー!」

「お、大袈裟だよぉ」


 なんだかんだで照れつつも満更でもないユイ。エースと抱きしめ合いイチャイチャしている横で伯爵は思う。


「私は何を見せられているのでしょう」





「よし、次は中に入っていくよー!」


 エースはそういうとギルドの中へ入っていく。


「テンション高いなあ」

「エースは【ギルド】を作るのは初めてですからね」

「そうなんですか?」

「ええ。人の作った【ギルド】に入る事はあっても、自分で作るのはこれが初めてでしょう。なのでいい【ギルド】にお願いしますよ、マスター」

「えへへ、出来るかな」

「出来ますとも」


 エースとは違い、ゆるい会話を楽しむ二人。中から「早く早く」の声に急かされて扉を開ける。


「おー!」

「ほう、流石最高ランクですね」


 中に入ると、まず大きな酒場のような空間が広がっており、そこから二階や各部屋に繋がっている。


「まあインテリアとかはまた追々だから、とりあえず部屋を見て回ろー!」

「おおー!」



 そうして部屋を全て回る事三十分。


「広っ」

「思ってたより広かった……」


 私達は最初の酒場の部屋で超へばっていた。外観詐欺じゃないかってぐらい部屋一つ一つが大きいのだ。


「外観は飾りみたいなものですからね。しかし施設が充実しているのも最高ランクたる──」

「そう言えば伯爵、何で滝のとこもそうだったけど、お風呂場とかビクビクしてたの?」

「お前さん、知ってて言っとるじゃろ! ワシの【猫化ビースト・オブ・キャット】は使っとる間、水を避けるようになるんじゃと言うたじゃろ!」

「にゃはは」

「そう言えば、伯爵さんのそれユニークなんですよね?」

「ぜぇぜぇ。ええ、そうです。ああそうだ。いい機会ですし、【修練所】に行って色々試してみましょう」

「あー、さっきの」


 そして幾つかの部屋を抜けた先にある、中庭のような場所。エースや伯爵さんのお陰で施設の事も色々教えてもらいつつ、ここ【修練所】までやってきた。

 この【修練所】は言わば練習場のようなもので、ここではHPMPが高速回復し死ぬ事が無く、スキルを使っても建物が壊れたりはしないらしい。


「ではまずは私のユニークから見せるのが礼儀でしょう」


 そう言って伯爵さんは私の隣にやって来てスクリーンを見せてくれた。



猫化ビースト・オブ・キャット

 にゃにゃにゃー! 


 正直何も分からない。いや、自分のユニークの説明文を見て、そう言えばエースがユニークは文章から読み取れないとか何とか言ってたのを思い出す。


「ふふふ、ユニークの特徴ですが、普通のスキルと違うところが幾つか有ります。一つは【アクティブ】、【パッシブ】に関わらずON/OFFが出来ます。二つ目はスキルはそれだけにしか効果を及ばさないのに対し、ユニークは色々なものに効果が適応されるところです」


 私は伯爵さんの言葉をフリーメモカードに記入していっている。エースからメモに直接指で長押しする事で、チャットのように文字が打てる事を教えてもらっていた。私がメモを取っているのを分かっているのか、伯爵さんもゆっくりと丁寧に話してくれる。


「例えば初心者が覚えやすい【ダブルアタック】というスキルが有ります」

「あ、私使えます」

「ほう。そのスキルはどういう効果か分かりますか?」

「二回連続で攻撃するスキルですよね?」

「ええ、正解です。ではこれをエースや私がやるとどうなると思いますか?」

「何か違うの?」

「まあ、実際に食らってもらうと分かるでしょう。エース、やりますよ」

「えー、ユイに打つんでしょ? 痛みで苦しむユイなんて……ちょっと見たい」


 思わず【ツッコミ】を入れる私。このスキル早く打てて使いやすいな。


「にゃはは。照れ屋さんめー」

「照れてない」

「ゴホンゴホホン」


 伯爵さんからの催促を受けて、そそくさと位置に着く私達。話し合いの結果、まずはエースの【ダブルアタック】を受ける事になった。


「よーし、行くよー」

「痛くしないでね」

「そもそも痛みは無いから」


 そう言って連撃を決めるエース。ダメージはすぐ回復する上、痛みも無いので大丈夫だなと思って動こうとする。しかし──


「あ、れ?」


 身体が思う様に動かない。まさかこれって……


「ふふふ。アッシの攻撃を受けたものは、全てロックする!」

「状態異常も数秒経てば治るから安心して下さい」


 そう言われて数秒。


「本当だ。動けなかったらどうしようかと」

「にゃはは。そんな訳無いじゃーん」

「有り得るから怖いと……。まあ今受けた通り、ユニークは二つ以上の能力又は色々なものに影響をもたらすものの事を言う、とだけ覚えて貰えれば」

「なるなる。伯爵さんの攻撃はちなみにどんな感じなんですか?」

「私、ですか。私のは名称そのものが変化してしまうのですが、まあ。では失礼して、【猫パンチ】」


 ポフッ。そんな音が聞こえるんじゃないかっていうほど柔らかい攻撃に、これダメージ入るのかな? とエースに聞こうとした時に気付く。


「あ、あれ?」

「どうしました?」

「何か、あれ? エースの方を向けない! ずっと伯爵さんに目線が」

「それが私の【猫化ビースト・オブ・キャット】状態の攻撃です。私の攻撃に当たった者は、強制的に【魅力】状態に掛かります。【魅力】とはある対象に対し、ターゲットをずっと掛けられてしまうという」

「伯爵、伯爵」

「なんじゃい」

「もう少しわかりやすく言わないと。ヘイトとかまだ分かんないから」

「あー、えー。つまり、私に視線が固定されるようなものだと思って下さい」

「何となく理解しまっした!」


 急に【魅力】が解除されて微妙な発音になる私。そっか、ユニークってそんな効果があったんだ。私が感心していると、伯爵さんは真面目な顔で話を続ける。


「さて、ではユイさん」

「はい」

「あなたのユニーク、まだ効果がよく分かってないですよね?」

「えっと、確かエースの話では装備破壊? って言ってた気が」

「私もそう思います。けれど検証は大事なのです」

「はあ」

「なので今一度、あなたのユニークについて徹底的に分析したいと思うのです!」

「あ、え、はい」


 何か謎の威圧感が……。エースもそうだけど、何か同じような雰囲気が。



【修練所】で篭もりあらゆる事を試した。途中、エースは買い出しに出掛け、伯爵さんと二人で色々とやってみた結果、恐ろしい事実に伯爵さんが全力で唸る姿がそこにはあった。

エ「内装はまだ無いそうです!」

ユ「何で今言ったの」

エ「様式美」

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